ヒーロー再び
「……マーリン。ゴールドって何ですか?」
「ゴールドとはお金じゃ。アーサーはたんまり持っているぞ〜。使うのか?」
ーーお金か! 奇跡、お金で万事解決を使えたらその方がいいかな……。精神力消費すると不味いかな。まだ患者いるし……。
「何処にあるのですか?」
「おぬしの服の裏じゃ」
プレートアーマーを外し服を叩いて確かめると固い感触があった。
ーー……道理で重かったんだ。
「ほれ、脱げ」
マーリンが背伸びをしながら服をめくってきた。私は羞恥心でその手を払う。
「や、やめて下さい」
マーリンは「おぬしの身体じゃないからいいじゃろ」と指ををくねくねといやらしく動かしにやにや笑う。
ーーひえぇぇ!?
よいではないか〜よいではないか〜 あ〜れ〜 という状況になった。
ランスロットとトリストラムは居心地が悪くて顔を背けた。
剥かれて部屋の隅で上半身裸の勇者はしくしく泣いた。
ーー酷い。あんまりよ。もうお嫁に行けない。
男性と付き合った事ない初心な凛花は勇者の裸を見ないように目を手で覆った。
「おぬしそんなんではこの先やってけないぞ。トイレはどうするつもりじゃ」
「そ、それはっ!?」
ーー考えたくもない!
私は頭を抱えて唸った。マーリンはアーサーの服の端をビリッと破り中から金貨をじゃらーと床に落とす。
ーースリ防止に服の裏地との間にお金を入れてたんだ。防具の代わりにもなりそう。……合理的だわ。このアーサーは案外頼もしい人なのでは?
「アーサーめ。どんだけ隠し持ってたんだ」
ランスロットが眉間に皺を寄せた。
金貨がでるわでるわ。100枚はありそう。最後の1枚がギラギラ光を放ちながら床に落ちた。
ボトッ
『いってぇぇ!』
高い男の声が聞こえた。
?
ーー気のせいかしら。金貨が喋りましたか?
マーリンが黒いブーツでギラギラ光る金貨を踏みつけ、ぶにっと音がした。
「おお! こんなところにいたかアーサー!」
『マーリンてめえ!! その足を退けやがれ!!』
「金貨に魂の色が同化して気付かなかったぞ〜。おぬしのことだから消えぬと思ったわ〜。信じておったぞ〜」
ぶにぶに
『嘘つけ!! 忘れてただろ!! その足をどけろー!!』
ーーアーサーですって!? 金の亡者で神様にお仕置きされたアーサー!?
足を退けたマーリンはギラギラ光る金貨を手に取ると私に渡した。
「ほれ」
ぷにって柔らかい……?
『何で俺がいるんだよ!? お前は誰だ!?』
「ひえぇぇ! ごめんなさいぃぃぃ!」
思わず金貨を壁に投げた。
ぶちぃ どーん
何故かスライムが潰れたような音が聞こえた。
『……いい度胸じゃねーか。おいマーリン。俺を元の身体に戻せ!』
「無理じゃ。それは神の力じゃ。儂にはどうもできん」
『あークッソ。あのやろおおおお!! 』
ランスロットとトリストラムは?と首を傾げた。
「何と話してるんだ?」
ーーえ? アーサーの声が聞こえてない?
「あー悪かった。この金貨にアーサーがへばりついてるのだ。笑えるな」とケラケラ笑うマーリン。
「あっ生きてたんだ」とランスロット。
「ちっ」とトリストラム。
ーーあっ病人いたのに放置してました。いけないいけない。
私はとりあえず、ギラギラ光る金貨以外の金貨を集めて聖剣の奇跡お金で万事解決を起こした。
20ゴールド消費します。
20枚の金貨がギラギラとした光りに変化し、横たわる女性を包んだ。苦悶の表情が和らぎ、安らかな眠りになった。手を見ると出血斑が消えた。
ーーす、すごい。これがお金の力! ん? 聖剣の力ですね!
『俺の金があああぁぁ!? てめえ、この露出狂!! なんて事しやがる!?』
「あっ」
自分の姿を見下ろし、勇者の程よく筋肉が付いた身体を見てしまった。真っ赤な顔を隠して「いやあああ」と叫んだ。
『俺が叫びたいわあああ!! お前さては女だな!! あのくず神めええ!! 絶対わざとだろ!?」
神様は性別を気にしてなかっただけである。
その後、女性の夫が外から戻ってきて半裸の勇者を目撃し、村人たちの間でアーサーは変態だと噂された。