願い事
魔女モルガンの見張りは私達4人が交代しながら行うことになった。理由は人手不足及びモルガンは私達ぐらいしか敵わないからだ。それに私が組み込まれるのがおかしい気がするが、この際気にしないどこう。私は一度モルガン倒したからね! (?)
ロンドンの街の兵たちの宿舎がある。そこの地下牢にモルガンを閉じ込めた。もうすぐ私の番だから、牢の前に来てみたらマーリン vs モルガンの口喧嘩が凄まじかった。
「ヒゲジジイが幼女に扮装ってキモいわ!!」
「キチガイ女よりかマシじゃわ!!」
「だから、湖の姫に嫌われるんだわ!!」
「貴様は魔王にこき使われて可哀想じゃな!!」
「違います!! 私が好きに働いてるんです!!」
「クソビッチが!!」
ーーやめさせよう。これ以上は聞いてられない。
「マーリン。交代します」
マーリンとモルガンの口喧嘩がぴたりと止んだ。
「……何処から聞いておった?」
「ヒゲジジイの辺りからです」
「ふむ。そうか。気をつけるのじゃ。モルガンはこちらの神経を逆なでするスペシャリストじゃ」
絶賛口喧嘩中だった人に注意されたよ。
マーリンはモルガンに舌ベロを出してあっかんべしたよ。モルガンもそれに対抗してべーをするな! この2人いくつだよ!?
マーリンは去って行き、私はモルガンと2人きりになった。私は牢の前にある丸椅子に座った。
「ねえ。その身体を乗っ取った感想を聞きたいのですがよろしくて?」
ーーなるほど、確かに人の嫌がる部分をわざわざピックアップしてきますね。
いらいら
凛花は目を瞑って無視する事に決めた。
「貴女も災難でしたねー。まさか勇者の身体に入るだなんて、1つ今の貴女の状況を打破する方法があるのだけど、興味ありませんか?」
ぴくっ
ーー落ち着け。モルガンの言うことを鵜呑みにしてはいけない。
「ふーん。いいんですか? このままではアーサー様は不憫ですねーっ」
「っ!? なら、どうしろと!?」
思わず目を開けた私に魔女は金の瞳を輝かせた。にやりと弧を描く唇。
「貴女をその状況にしたのは一体誰ですか?」
「……それはっ」
「言えないのですか?」
「……神様です」
「ああ。やっぱり! じゃなきゃ無理ですよねー。魂を移すだなんて神業もいいところ」
ニヤニヤ笑う魔女。
「魔王様ならその状況を変えることが出来ます」
「……嘘ですね。無理です」
「まあ! 何故嘘だと言い切れるのですか?」
「こんな事神様にしか無理です」
「魔王様は元はその神様に仕えていた天使。しかもそのトップです。可能だと思いませんか?」
「はい!? 元天使!? ええ!?」
初耳である。
「貴女の魂を別の器に入れ、その身体をアーサー様に返しましょう」
凛花は歯を食いしばった。厄介だ。人の心の隙をこれでもかと突いてくる。アーサーに身体を返したい。それは凛花がどうしても叶えたい願いだった。
* * * *
アーサーは建物の修繕をするトリストラムの肩に乗っていた。むきむきな筋肉すげーなと感心してたアーサーはふと自分の魂が引っ張られる感覚に陥った。
『ぬおおぉぉぉ!?』
すぽーーーん
トリストラムが肩から滑り落ちる金貨を厳つい顔をしながら手で受け止めた。
「アーサー?」




