表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

ゴーレム

 



 ロンドンの街にてそれは現れた。真夜中で誰もが眠っている時だ。満天の星空の中にいる1人の女性。箒に跨り宙に浮かぶ姿はまさに魔女。黒い豊かな長い髪は闇夜に溶け込む。伏せていた瞼を開くと金に輝く瞳。


「魔王さまに捧げるショーを始めましょう」


 街のそばの平原から土が盛り上がり巨大な手が現れた。土で出来たそれは地面に手をつくと踏ん張り頭を地面の上へと突き出す。


 ドゴゴゴゴゴ


 足を地面から引き抜く。全身を地面から出したその土で出来た何かは人の型をしていた。その大きさは5メートル程。

 額に[אמת]と土に絵を描く様に凹んでいる。


 ドスンドスン


 土の巨人は街へと歩みを進める。


「ウオオオオォォォ!!!!」


 その巨人の叫びは街の建物に反響し僅かに揺らした。ロンドンの街の人々はその叫び声に目を覚ます。街の周辺には平原と川しかない。巨大な影が良く見えた。その正体を知ったところで、抗う術など残念ながら普通の人にはない。ただ神に祈るか勇者の助けを待つしかない。弱者な人間の種族はただひたすら耐えるしかないのだ。金の瞳の魔女はその光景を見て優越感に浸るのであった。



 * * * *



 日没前。凛花は叩き起こされた。腕とか足が筋肉痛だったが、そんなことを気にしてられない事態が起きた。ロンドンの街が魔王の手下に襲われた。急ぎロンドンに向かう様に要請された。


 カメロットからロンドンまで馬で西に向かって二刻かかった。二刻は時間に直すと4時間だ。馬には一人で乗れないのでトリストラムと一緒に乗っけてもらった。マーリンはランスロットに乗っけてもらう。


 ーーランスロットと相乗りは勘弁です。


 ロンドンの街は空から一度見た事がある。見覚えのある白い壁に黄緑色の屋根に色彩豊かな丸いステンドグラスがはめ込まれた大聖堂があった。周りの住宅の建物は半壊してる。


 ーーこれは酷すぎます。まるで爆弾を落とされたみたいです。


 黒煙が所々に上がり焦げ臭かった。街を囲む木製の柵の一部は無残にも破壊されていた。平原には不自然に出来た3メートル程の穴が空いている。そして驚くことにその穴から大きな1メートル弱の足跡が柵が破壊されてる場所まで続いていた。


「あの大きな足跡は何ですか?」


「巨人かの〜?」


 マーリンもよくわからないようだ。


 壊れた柵の手前で馬を止めてトリストラムがすとっと地面に降りた。前に乗っていた私の手を引いてもらい地面に降りた。4時間ぶりの地面の落ち着く感触に少し感動した。草を踏みしめる。相変わらず焦げ臭い。眉をひそめながら街の中に入ろうとしてトリストラムの太い腕に阻まれた。


「お前にはまだ無理だ。ここにいろ」


 武芸のお師匠の言葉に胸がジーンと染みる。


 ーー初心者だから心配してくれてるのですね。戦いで私が役に立つとは思えないし任せます。


「はい! 私は怪我人の治療に行きたいと思います!」


 厳しい男はゆっくりと頷いた。




 ランスロットと共に無事な建物の通りを歩いていた。人は1人も見当たらず閑散としている。


「皆さんは避難したようですね」


「……」


「リンカさん。私のことを避けてませんか?」


 ぎくっ と身体が強ばった。横に並ぶ銀髪の男を見ると真剣な眼差しでまっすぐ私を見ていた。


「そ、そんなことはありません。私は人見知りなので……」


「……そうですか。トリストラムは良くて私はダメなのですか」


 ーー優しそうに見えるのはランスロットですよね。でも、人は見かけじゃ分かりません。ええ本当に。


「……グウィネヴィア姫とはどのような人なのですか?」


「何故ここでグウィネヴィア姫が……ああ。そういう事ですか」


 ーーあっ。気付いちゃいましたか。察しが良くて助かります。


「それを何処で聴いたのですか?」


 悪びれもせずにあっけからんとした姿を見て私は何とも複雑な気持ちになった。


 ーー反省度ゼロですか。


「お城勤めの方からです。ランスロット様はグウィネヴィア姫の事が好きなのですか?」


 どきどきと動悸がした。私のこのアーサーの姿を見ても気にしないのだろうか?


「ええ。好きですよ。私の方が先に好きになったんです。アーサーに悪いとは思ってません」


「……そうですか」


 所詮は外野な私はそう言うしかなかった。胃痛がする。


 ガラッ


 建物が崩れる音がした。


 ドーン ドーン


「ウオオオオォォォ!!」


 私とランスロットの間を凄い速さで人らしき物が通過し建物にぶつかった。


 ガハッ


 血を吐くトリストラムがそこにいた。


「トリストラムさん!? 大丈夫ですか!?」


 私は聖剣の能力を使いゴールドを使って傷を癒した。ギラギラと光り傷が塞がっていく。


「有り難い」


 周りの二階建ての建物と同じ大きさの土で出来た人形が私達を見下ろしていた。ランスロットの指輪が白く光る。


「あれは、魔法で出来てます。もしや、ゴーレムか?」


「モルガンの仕業に違いない」


 マーリンが火の魔法を使いゴーレムを燃やすが、効果がなくゴーレムはこっちに向かってゆっくり歩いてくる。今度は異空間を地面に開けてゴーレムの片足を異空間に入れて転ばした。


 スドーーンッッ!!


 うつ伏せに倒れたゴーレムの額には[אמת]と彫られていた。


 マーリンが私に叫んだ。


「אの文字を聖剣で斬るのじゃ!!」


「え? ど、どれですか?」


 ランスロットがこれですと指差して、ようやくわかった私は聖剣でその文字を貫いた。すると、ゴーレムの形が崩れただの土になった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ