美術館見学
美術館の2階で展示されてる画家の絵は虫や生物、植物などの自然をテーマとしたことで幻想的だった。たとえば「出会い」という題名の絵はダンゴムシを描いているにも関わらず、ロマンティックで幻想的な印象を受けた。他の絵も繊細で精巧でそれでいて優しい作品が多かった。そんな絵をじっくりと見ていると春野先輩が声をかけて来た。
「すごく素敵な絵だよね。」
「春野先輩...。美術館に入ってから初めて話したような気がします。1階はゆっくり見て回ったんですか?」
「最初の方で下田先生と美術部の今後の方針について、話し合ってたんだ。」
「そうなんですか。」
「この絵を描いた人、絵に命を捧げて、おじいさんになってからやっと認められたんだって。妻子ある身で...。木の上に小屋みたいなの作って住んでたらしいけど、家族の人、苦労しただろうなぁ。やっぱり芸術を志す人はそれくらいストイックでなきゃいけないのかな。」
「画家になりたいんですか?」
「まだよくわからない。だけど芸術系の大学に進もうと思ってるよ。」
「受験生ですもんね。」
「それに画家にならないにしても、美術系の大学に進んで、教職とって美術強になるって手もあるしね。」
「なるほど。」
春野先輩の目は真剣だった。
3階は世界的にも有名な絵本の原画や下書き、またその絵本を作るときのエピソードなどをテーマとしていた。子供にわかりやすいように原色で子供でも書けるような簡単なデザインにしたことで世界的に流行ったらしい。またそうやって子供にもかけるマスコットキャラクターを子供に提供することが作者の狙いだったそうだ。
ふと隣に目を向けると未来橋がいた。
「この絵本、睦都実も昔、よく読んだよ。懐かしい。」
そう言って、未来橋は目を細めた。
4階は様々な油絵の展示をしていた。油絵といっても様々な作品があった。穏やかな風景画。迫力のある絵。色っぽい人物画。中にはグロテスクなものもあった。俺はその中でも画家の家の近所を絵本のように可愛らしく表現したという絵が気に入った。どこかで見たことある風景だと思ったら、なんとその画家は近所に住んでるらしかった。近くに乙葉がいたのでなんとなく、声をかけて見た。
「いろんな絵があるな。乙葉はどれが好き?」
「これかな。」
乙葉が指をさした絵は色っぽい猫の絵だった。