美術館見学当日
美術館見学当日。俺は余裕を持たせすぎた結果、15分ほど早く美術館前についていた。
しかし、その前に春野先輩が先についていた。春野先輩は水色の七分袖のワンピースを着ていて、白い帽子をかぶっていた。俺は私服姿も麗しい...なんて思ってしまった。
「おはようございます。先輩早いですね。」
「日向くんこそ。美術部はもう慣れた?油絵がすごく上手でびっくりしちゃったよ。」
「いえ、そんな。」
「もう少しで、秋の文化祭に向けて、写真立てを作ったり切り絵や点描画をするからね。」
「秋の文化祭...。やっぱり美術部は展示とかですか?」
「例年通りなら、基本そうだよ。」
こんな会話でも俺の胸は高鳴る。なんだか、デートしてるような気分だ。
しかし、そんな状況はそう長くは続かない。やがて下田先生がやって来た。下田先生もいつもより少しラフな格好をしていた。
次にやって来たのは乙葉。ピンクのポロシャツに長袖のズボンだった。似合っていたし、乙葉のそれなりに豊満なボディを強調していたが、若者らしい格好とは言えず、こいつオシャレとか興味ねぇんだろうなあと俺は思った。もっとも俺だって半袖の白いティーシャツに黒いパーカーに青いジーンズ(しかも全身○ニクロ)という格好だったから人のことをどうこういえものではないが。
「よっ。」
乙葉は春野先輩や下田先生に簡単に挨拶したあと、俺にも挨拶をして来た。
「おお、乙葉。」
その時、言ノ葉がやって来た。
「おはようございます!」
言ノ葉は七分袖の黒いワンピース。軽くフリルのついたシンプルなデザインのそのワンピースは童顔の言ノ葉によく似合っていたが、どういうわけか言ノ葉の手首には一筋の傷が付いていた。
「あーあ。またやっちゃったか...。」
それを見て乙葉が呟く。
「また...?」
俺が聞き返すと乙葉が説明した。
乙葉が説明する。
「あの子、定期的にリストカットするんだよ。」
「リスカ...。」
「最近は治って来たように感じてたんだけど...何か、嫌なことでもあったんかな。」
リストカットというその言葉に俺はショックを受けた。リストカットとは自分を傷つける行為である。身近な人でそんなことする人がいるなんて。
「お、おはようございます...。」
次にやって来たのは未来橋だった。未来橋は白い長袖のブラウスに黒いスカートを入っていた。清楚なその服は未来橋によく似合っていた。
最後にやって来たのは1年の林と里田の2人。
「すみません。遅れたっす!」
「ごめんなさい。私が遅れちゃって。」
どうやらこの2人は一緒にやって来たらしい。2人は本当に仲がいいのだろう。
林は青いジージャンに黒のシャツに灰色のボトムス。全身男物で揃えているのにその体型が案外女の子らしいことが分かった。ってゆーかきもいな俺。
里田はゆったりとしたティーシャツにショートぱんつ。生足がなまめかしかった。
「遅れたって言っても1分程度じゃない。大丈夫だよ。」
下田先生が笑いながら、そんな2人に言う。
「それじゃあ、入りましょうか。」
先生がそう言って、美術館見学が始まった。