1年と会話してみる
「もう直ぐ美術館見学があるからね。」
と下田先生が言った。
「えっそんなのあるんですか。」
俺は木炭で油絵の下書きをしながら言った。許可を貰って、道具をこちらで用意し、床に新聞紙を引き、キャンパスを立て、俺は油絵を描くようになっていた。この美術部に入部してから、一週間。俺にはイラストより油絵の方があっているようだった。
「ええ。近くの美術館の展示会を見るの。」
「へえ。」
と俺は言った。すると春野先輩が横から説明してくれた。春野先輩は今日も優しく麗しい。
「1年生と日向くんは初めてだよね。持ち物は財布だけで大丈夫だし、私服でいいから現地解散だし、問題さえ起こさなければそのまま遊びに行ってもいいから。T市だし。」
T市というのは俺らの住む市だ。そこの駅の近くの美術館に行くらしい。この学校は田舎だが、その美術館の周りはそれなりに都会で周りにはそれなりに店があったので、最近中学を卒業したばかりの1年生2人が喜ぶ。
そういえば、この2人とはあまり話したことない。俺は声をかけて見ることにした。
「2人はどうして美術部に入ったの?」
林が答える。
「あ、俺はもともと、バスケ部だったんすけど、女バスの奴らレズるんすよー。」
「れ、レズる?」
「いや、それは言い過ぎですけど、女子同士でベタベタするっていうか。しかもただ、ベタベタするならいいんすけど、裏で陰口言いまくり。練習の時も仲良いやつにしかパス出さない。やってられないっすよー。」
林が嘆くの里田が物憂げな表情で聞いていた。
「里田?大丈夫?」
俺が声をかけると里田が微笑む。
「大丈夫です。私はバレー部だったんですけど喘息持ちで。」
里田が短めに説明した。
「そっか。」
そのほかには聞くこともないので俺は油絵に集中した。りんごや果物の静物画だ。