一目惚れ?
俺、日向旭は転校生だ。
この高校に転校して、つつがなく1日を終えた。今は放課後だ。
後ろの席の青木が声をかけてくれる。
「そういえば、この時期に転勤なんて珍しいよな。日向は部活動するのか?2年の6月なんだから、決めなきゃいけないよ。多分先生になんか言われる。」
「ああ、前の学校で油絵やってたから。美術部にしようと思ってる。」
「あー。でもうちの美術部そんな、本格的じゃないよ。イラスト部って感じ?人数も少ないし、女子しかいない。」
「げっ!?まじか...。女子だけって気まずいな。」
「マジマジ。でも人数は少ないから、案外歓迎はされるかもな。部活見学行ってみたら?」
「ああ。」
「まあ、もし、アウェイな空間だったら、俺所属の卓球部に来てもいいわけだし。歓迎するよ!まあ、美術部の女子かわいいから、それはそれでいいと思うけど。」
さり気なく、自分の部活を押しつつ、馬術部のいいところをPRしてくれる。青木は良いやつらしかった。
することもないので俺は早速美術部の見学に行くことにした。
「失礼しまーす。」
やや、緊張しながら、部室を開けると顧問らしい人はおらず、6人の女子がいるだけだ。思った以上に人が少ない。しかし、みんな可愛いな。
「あの、何か?」
その中の一人が聞いてきた。
その人は多分その中でも1番可憐だった。
伏せがちな目にシルクのような肌。鼻筋が通通っていて、唇は小さくて桜色。ふわふわした髪の毛を下の方で二つに結んだその人はこの高校の制服である紺のセーラー服という普通の格好だったにも関わらずなぜか聖母マリアを彷彿とさせる。
「あ、俺、転校生の日向です。部活見学に来たんですけど。」
「2年に転校生が来たっていうのは聞いてるよ。私は3年の春野良子。部長です。基本ゆるい部活だから、是非見学していってね。今日は絵を自由に書いてるの。人数が少ないから、入ってくれるとすごく嬉しいな。」
彼女にそういって優しく微笑まれた時、俺は入部することを既に決めていた。
しかしそうは言っても部活見学をしないわけにはいかなかった。そもそも今のままじゃこの部長につられて入ったのがバレバレのような気がして恥ずかしい。
「じゃあ何かしたいことってある?」
春野先輩に聞かれて、
「実は前の美術部では油絵を専門としてまして。」
「あ、油絵の道具は置いてないんだよね。」
「もし、自分で用意したら書かせてもらえますか?」
「多分大丈夫だと思うけど、今度顧問の先生に聞いておくね。今日はじゃあ、みんなと一緒にイラストでも描いてもらおうかな。」
俺はうなづき、固まってる女子たちの後ろに座った。春野先輩以外の女子たちは転校生である俺が気になるのか、ヒソヒソし始める。ナニコレ気まずい。
日向旭 平凡な転校生。油絵が得意。
青木 日向の後ろの席。基本良いやつ。
春野良子 3年の先輩で部長。風景画や虫、動物など自然のものを描くのが得意。真面目だけど少し不思議な人。