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Vivid Memory  作者: 華曲
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満開の桜の木の下で

 昨日、桜の満開宣言が出された。例年よりかは少し遅めであったらしいのに、自分ちの桜はまだ咲いていない。でも今日は暖かい。公園にでも行けば咲いているかと、と思って家を出た。


 予想は微妙に当たっていた。よく見たら咲いているかな、と分かる程度で注意していないと見つけられないくらいだった。まぁ開花宣言だからそんなもんだ、帰ろうかな、と思った時だった。桜色の風が目の前を横切っていった。思わず花びらが飛んできた方へと駆け出した。


 割と後先考えずに行動していつも後悔するのだけど、今回もそうだった。案の定迷子になってしまった。少し歩く速度を緩めて角を曲がると、そこに公園があって桜の木が立っていた。早咲きなのか、もう満開で、そして公園の桜ではなく、桜のための公園という空気が満ちていた。


そんな公園の一角に、小さな子どものいたずらだろうか、花びらを寄せ集めて作ったクッションがあって――――――


――――――何かが動いていた。正直かなり驚いてしまったのだけど、勇気を出して花びらの中に手を差し入れ、ソレを花びらごと抱き上げてみた。


 腕の中にはうさぎがいた。桜よりも真っ白な垂れ耳うさぎだった。

 可哀想に、この子は捨てられたのだろうか。そんな僕の疑問なんてお構い無しに、ぴょんっと軽やかに僕の腕から跳び降りてお気に入りなのかさっきの花びらの山に潜り込んでいった。


 可愛い。連れて帰りたい。そう思ったけど流石に家族に相談してからだよな、と思い直し、せめて食べる物でもあげようと鞄の中を探った。出てきたのは飴とかクッキーとかうさぎにはあげないほうがよさそうなものばかりであった。


 とりあえず今日は帰ろう。そしてまた明日ここに来ればいい。


 死ぬなよ、とうさぎに言い残してその公園を後にした。幸運にも見覚えのある大通りに出ることができたので家には難なく帰り着くことができた。


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