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異世界に左遷された彼らは公安部の特殊捜査官だったようです。   作者: 彩都 玲音
第一章 王女奪還作戦
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第三話 とある作戦会議とやさしい夕食会


「それでは、これより 異世界探査任務 作戦名 “モーベル” の会議を始めたいと思います。」

ジャンケンで司会をすることになった義一が話し始める。


いやいやいや、作戦名モーベルってなんだよ。。。

流動的に何をすりゃいいんだ、、、


どうやら、おっさん管理官は何も指示を出す気がないらしい。。


しかも、機動隊の英語名と被っててなんかちょっとやだ。




ちなみに、、、盗聴防止器は全力作動中である。



「え~、まずチームリーダーは、いつもどおり神ちゃんでええ?」

一番最初に責任の所在をはっきりさせる。


「その方がやりやすいと思うから、OK!」

普通に考えたら、着実に行動する性格の舞姫が適任なんだけど、

実際にやってみたら他の三人が遊びすぎてチームがまとまらなかった。



「では持ち物と集合時間のことやねんけど、、、、、、」


この調子で決めないといけないことを一つずつ片付けていく。


半分事務作業みたいなもんだから、割とスムーズに進んだ気がする。




時刻は、五時半をちょっと回った頃。


「ねーねー、お腹減らない?」

蛍がお腹を抑えながら話しかけてくる。


校長との対面によって頭がそちらに持ってかれていたが、晩飯を作り始めるにはちょうどいい時間帯だ。



「みんないるし、鍋かお好み焼きでもするか。」

部屋の主である僕が、一応候補を出す。


なぜなら、炊飯器がないため出来る料理が限られてくるからだ。



「私、お好みがいいー!」

蛍がお好み焼きに一票を投じ、他の二人からも異論はない。



こうして第一回作戦会議は終了。

みんなでホットプレートを囲むこととなりました。





そして、時刻は九時。


宴が終わると義一と舞姫は明日提出の課題をするために先に帰り、

蛍が後片付けを手伝ってくれることとなった。



「浩志とこうやって二人きりになるの、なんか久しぶりだね~。」

蛍がお皿を拭きながら笑って話しかけてきてくれる。



っと。 もうちょっとで皿を流しに落としそうになった。


いくら幼なじみとはいえ、肩が触れながらその言葉は卑怯でしょ、、、

入学時に遊びに行くからってこの部屋に置いてあった赤いエプロンが、新妻っぽさを演出していて、よく似合ってる。


新婚生活ってこんな感じなのかなあ。


無事に結婚できる保証なんてないから、今のうちに堪能しておこう。



しかしそんな妄想とは反対に、当の蛍は視線が下がっていく。。。


「私ね、最初の頃は死ぬんじゃないかってドキドキしてた。」

トーンが若干低くなる。



どうやら、公安に入ってすぐの頃を思い出しているようだ。



「でもね、浩志が ”どうせ生きるんだったら、誰もがビックリするくらい楽しんで生きて、笑って死んでいこうぜ”って言ってくれた時、


 生きる希望を、持てた気がしたんだ。」




いつも笑顔で、どこか母親らしい愛情を振りまいてくれる彼女は、初期の訓練成績があまり良くなかった。


多分、誰よりも仲間思いで根が優しい蛍は、四人のうち一人でも欠けることが怖かったんだと思う。





笑って死んでいくことに希望を覚える。。。



矛盾する考えのようだけど、毎日が恐怖の連続だった彼女からすれば、笑うとか楽しむとかいう発想がなかったのだろう。


ちょっとクサいセリフのように感じるけれど、その時出した結論は8年経った今でも変わっていない。





“死を恐れないこと”


“何が起きても楽しむこと”



この二つは四人の中で唯一の約束だ。



どんなに苦しいこと、辛いことがあったって、この二つだけは守り通すと誓った。


砂漠のサバイバルだろうが、100キロ行軍だろうが、この覚悟の前には障壁にさえならない。



そしてそれ以来、僕らはどんな訓練だろうと、任務だろうと遂行してきた。



生半可な覚悟で戦う奴らには負ける訳が無い。



そうやって僕らはここまでたどり着いた。 


今となっては、部隊のエース4人組だ。




「だから、、だからね、、、」

そこで一旦言葉を切る。



「浩志が、たまに甘えたくなったら、私を頼ってくれていいんだよ。」

天使のような、優しくとろけそうな声で、彼女はささやく。



背中に感じる温もりからは、この世のものとは思えないほどの愛があふれている。



 蛍も大人になったってことだな。


 嬉しいような寂しいような、、、



幼い頃の彼女の面影がフラッシュバックされる。



 でもやっぱり喜ばしいことなんだろう。



僕は、体の前で結ばれた蛍の手を握る。



「うん。そうするよ。」

蛍の目をみて、笑顔で、ちゃんと伝える。


「でも、お前もな。」

そう言って、僕は蛍の頭をそっと撫でる。


一瞬だけ懐かしい顔になる。


彼女の表情は、、、やっぱり嬉しそうだ。



「じゃあ、私もそろそろ帰るね。 ごちそうさま!」


エプロンをたたみながら、カバンを持って玄関へ向かう。



「おう、お粗末さま!」

僕はいつも通り、笑顔で送り出す。


 

いつでも頼っていいんだよ!



そういう思いを込めて。




午後九時半

こうして、長かった夕食会もお開きとなりました。



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