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異世界に左遷された彼らは公安部の特殊捜査官だったようです。   作者: 彩都 玲音
第一章 王女奪還作戦
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第二話 黒い校長室 後編


「お前たちは、去年の暮れに起きた “カミオカンデ爆発事故” を知っているか?」

 御影が手を組みながら聞いてくる。



カミオカンデ爆発事故。。。

作戦途中だったために、あまり詳しくは知らないけれど、名前なら聞いたことがある。

たしか、古くなった機材を運び出す際に、誤って大爆発をおこしたという、、、


死者は出ていないが、行方不明者が多数いて、個人的には神隠しっていう印象を受けた。



一応、四人は顔を見合わせたが、誰も詳しそうな人はいない。



「事故の概要だけなら知っています。 

 しかし、それが任務とどう関係があるのですか?」

真面目な舞姫が話の続きを促す。




「うむ。 実は、あの事故は秘密裏に行われていた超光速実験の失敗によって起きた。


 いや、失敗という言葉は正しくないな。」



 ここで、彼は一旦言葉を切って、カバンの中から資料を取り出す。



 

 「本来ならば、光速に届くはずがない陽子の集団が、なぜか光の速さを超えてしまったらしい。


  原因については、未だに調査中とのことだ。


 

  そして、その超光速陽子が中性子と衝突した瞬間、カミオカンデは大爆発を起こし、時空が歪んだ。」



 ん? 時空が歪む? 


 ああ、あれだ。ワープだワープ。


 そいで、イスカンダルだか22世紀だかにつながったんだ。

 



「その結果、信じられないことだが、

 われらが住む日本は岐阜県を経由して異世界の国、ベルファスト王国とつながってしまった。」


御影は、若干楽しそうに話しかける。



 やっぱりな~、そうだろうな~。 

 口ぶりからしてそれっぽかったし。



「それで、君たちには調査のため、ベルファスト王国に行ってもらいたい。」


 はあ、やっぱり。 そうくるよね。

 なんで僕たちに…と思う気持ちはあるが、心当たりがある。

 

 でも一応聞いてみる。

「なぜ、僕たちにその任務が課せられたのですか?」



「いやあ実はなあ、前々から人が足りないから誰か派遣してくれって言われていたのだよ。」


ん? 何か思っていたのと違う。



「でも、優秀な生徒をそんな危ない異世界に送るわけにもいかないだろ。」

御影は、ペラペラと話し続ける。


意図が読めないが、どうやら派遣の依頼があったのは “学校に” らしい。

 

「それで調べていたら、お前たちは出席日数がギリギリじゃないか。」

確かに、潜入任務やアメリカでの訓練などで、長期間学校を休むことはよくあった。


テストの成績は悪くないものの、生活態度で進級を拒まれても仕方がない。。。



って、誰のせいなんだよ。。。



「それで、お前たちに白羽の矢が立ったって訳だ。」

御影が愉快そうに話す。



本当に、こういう時だけ楽しそうに話すよなあ。


成績不振者に有無を言わさず島流し。。。

この人は本当に校長なんだか。。。


「分かりました。。。が、そろそろ本心を教えてもらえませんか?」

このまま続けてもしょうがないので、4人を代表して質問する。


表向きの口実なんてのは、知っていようが知っていまいがこれからの活動に支障はない。


「聞きたいか?」

 あいにく、御影もこちら側がわかっているような口ぶりだ。



「はい。 答え合わせという意味で。」

返答しだいでは聞かないという選択肢もあったが、そうする必要もなさそうだ。



「お前たちは、2月の密輸船撃沈作戦で危ない橋を渡っているよな。」

御影の口調は、若干強い。



そう、あれはまだ寒い2月半ば。

日本に軍事物資やら麻薬やらを運ぶ商船を撃沈する際、誤って公海上で行うミスを犯した。。



いや、僕たちは決して悪くない、、、悪くない。。。多分。。。



乗組員の消滅も作戦の一部だったから、予定通りに乗員を探していたんだけど、


まさか機関室に人質がいるなんて思わなくて、船ごと爆破するのをためらってしまった。


結局、船を隅々まで調べる必要が出てきて、最終的には太平洋たる太平洋で作戦を終えるハメになった。



まあ、それで関係ない人たちを救えたのならハッピーとなったんだけれども、


助け出した人質は実は敵の仲間で、日本に帰ったっきり姿をくらましている。。。



今回の異世界への左遷は、そいつらの復讐から僕らを遠ざけるという側面もあるのだろう。



ちなみに、ほかの三人も多少の程度の差はあれ、分かっているようだ。


蛍は、いつも笑顔という名のポーカーフェイスだから判別しづらいが。。。


まあ、楽しそうなのはいいことだ。 うん。



では、話に切り込んでいくとするか。




「分かりました。


 それで調査と言っても、具体的には何をしたらいいのですか?」


 一番肝心な質問。



「まず、お前たち四人は今年の4月1日から来年の3月31日まで休学とし、この一年は、内閣情報調査室 2等調査官として活動してもらう。


 普段ならありえないことだが、特例で認めてもらった。お前らも、政府の肩書きがある方がやりやすいだろう。」


 なるほど。

 ここ国立一ツ橋高校は、管轄が文部科学省ではなく総務省で、もともとは官僚を育成する学校だ。

 故に、正式には高校生ではなく、国家公務員に当たる。

 今回は、この仕組みを無理やり応用したわけだ。



 「表向きの仕事は、ベルファスト王国の内政顧問。


 なんでも、こちら側の進んだ制度や技術を取り入れていきたいらしくてな。」


 って、ことは向こうの方が文明は遅れているのか。


 想定を未来都市から中世ヨーロッパに改める。


 

「で、部隊として相手国の国内情勢や軍事、外交状況を確認してきてほしい。


 今のところ問題はないが、いつ対峙してもいいように情報を集めておきたい。」


 

 なるほどなるほど。それならば、僕らが派遣される理由が分かる。


 一般の外交官には潜入の技術はない。しかし、自衛隊の諜報局は場所によっては動きづらい。

 

 それで、僕たちに白羽の矢が立ったわけだ。



「でも、私たちに内政顧問なんて相手側が納得するでしょうか。」


舞姫が鋭い指摘をする。


確かにその通りだ。



「先方には、優秀な若手研究者だと伝えてあるそうだ。


 肩身が狭い思いをするかもしれんが、せいぜい頑張ってきてくれ。」


御影が楽しそうに笑う。


やっぱり、性格悪いだろこの人。



「じゃあ、そういうことだから、、、詳細はこの紙とUSBで確認してくれ。


 分からないことがあったら、また俺に連絡するように。  それではな!」



御影がそそくさと立ち上がり、ビジネスバッグをもってまた何処かへ出て行く。


何か次の予定があるのか。。。



と思いきや、警備員が入ってきて一通り見回して帰っていく。


なるほど、そういうことか。。


監視カメラの電源をマニュアルで切っていたんだった。





取り残された四人は、不思議な空気になる。



異世界へ左遷。。。これは喜ぶべきか悲しむべきか。


まあ、お金もらって一年間旅行できると思えば楽なものだろう。


長らく頂いてなかった休暇みたいなものだ。


でも、このメンバーが集まってそれだけで終わる訳が無い。




「これからどうするの~?」

蛍が周りに確認する。


「なんやよう分からへんけど、楽しみましょうや。」

義一が笑う。


「何を持っていったらいいのかしら。」

舞姫が考える。



ここはいつもの作戦会議が一番だな。



「とりあえず、僕の部屋で話しましょか。」

リーダーとして軽く提案。


完全寮生のこの学校では、一人一部屋を持つことが出来る。



「さんせ~い!」 「そないしましょ!」 「分かったわ!」

それぞれが個性を出しつつ返答。



まったく、最高だな。

このメンツなら、何が起きても楽しめる気がする。





こうして、地獄の訓練から這い上がってきた彼らは異世界、ベルファスト王国でも暴れることになるのです。










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