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恋人以上×妹未満。  作者: しすたー遠藤
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7話   『寝室、夫婦、プロレス。検索』

「蓮。エア・コンディショナーつけてもいいかしら?」


「……あぁ構わない」


「あら? エア・コンディショナーのリモートコントローラーどこかしら?」


「……机の上にあんだろ」


「あっ確かにあるわ、エア・コンディショナーのリモートコントローラーが。エア・コンディショナーの温度設定は――」


 ……うるせー、超うるせー。ていうか(ちょう)うるせー。

 もうお前、エア・コンディショナー言いたいだけだろ。


 入学式から数日経ったとある昼休み、俺と哀は生徒会室にいる。四限の授業終了間もないにも関わらず、俺たち兄妹は二人並んで座っていた。


「哀、ぼっちなのか?」


「それは蓮でしょ」


 普通に友達のいる栗花落さんは自分の教室で過ごしている。つまり、友達がいるなら昼休みに生徒会室に来る必要などない、そんなこと自分が一番よく分かっている。

 秋葉……


「俺には一人友達みたいなのがいる」


「一人しかいないなら四捨五入でぼっちよ」


「一の位、切り捨てんな」


「十の位はどこかしら? 一の位しか見当たらないのだけれど」


 キョロキョロ見渡してもそんなもん見当たんねーよ。いじめか? これはいじめなのか?

 そもそも哀もぼっちじゃねーのかとも思ったが、ぼっち系の話はブーメランのように自分に刺さる展開しか見えないのでやめておこう。


 とりあえず、お互い持参したお弁当を食べることにする。母さんが作ってくれたお弁当だ。


「同じ弁当、お揃いね」


「当たり前だ。兄妹で中身違ったらおかしいだろ……ってなんかお前の方が綺麗じゃね?」


「私はいつも美人よ」


「弁当の話だ。母さん、ミスった方を俺の弁当に入れやがったな」


 俺の弁当は哀の弁当に比べ、全体的に失敗作感が強かった。卵焼きが少し焦げている気がするが、まぁ食べれなくはないか。


 もぐもぐ。

 モグモグ。


「おいしいわね、黄色い卵焼き」


「嫌みか」


「おいしいわね、白い米」


「それに関しては俺のも白いわ!」


 ……弁当を食べ終え、一休みする。

 昼休みは長い。一時間も必要がない。弁当を食べ終えたら何をするというのだろうか? そんなんだったら休憩時間を短縮して早く帰してくれ、昔はそんなことも考えたものだ。


 もし普通のぼっちなら時間を持て余す。寝てもいないのに机に突っ伏するのだろう。読書が趣味でもないのに本を読んだりするのだろう。音楽が鳴ってもいないのにイヤホンをつけるのだろう。

 でも俺は、生徒会室を統べる生徒会長だ。苦悩など感じたりしないのだ。フハハハ。悪いな、全国のぼっち諸君。


 こうして、生徒会室にて昼休みと休み時間を快適に過ごしている。秋葉が毎日学校に来れば教室でも過ごしやすいのだが、アイツはそれほど学校に来やしない。まだ数日だが、入学式以来顔を見ていない。

 別に不良というわけではなく、もともと去年出会ったときから卒業最低限さえ学校に行けばいいじゃん! タイプだった。ぼっちなら当然行き着く思考回路だ。

 学校側も注意しようとはしているようだが、なんたってアイツの成績は学年一位だ。しかもそれをずっとキープしているので教師たちは何も言えないようである。

 無気力で、難聴、鈍感。そして一つの能力に優れているとか……ラノベ主人公みたいなやつである。

 よって俺は、生徒会室欲しさに生徒会長の座に……。秋葉ぼっちぼっちを助けはしない。


「まだ時間あるわね……」


 哀は壁にかかった時計を見てそうつぶやく。まだ昼休みは半分も過ぎていない。弁当を食べるのに使う所要時間なんて、ゆっくり咀嚼したとしても所詮15分が限度ってとこだ。


「ちょっと揉んでくれるかしら? 最近凝っていて」


「でも揉んで大きくなる、ってウソらしいよ」


「……肩を、よ」


 胸に手を伸ばしていた俺の手は払いのけられる。別に本当に勘違いしていたわけではない。そんな鈍感なヤツいるワケ……いたわ。


「胸が小さすぎて俺に相談してきたのかと思って」


「べっ、別に……小さくはないわ」


 珍しく動揺したように見える。いつもクールな雰囲気を纏ってはいるが、妹も胸のサイズを気にする年頃になったのか……と考えさせられる。

 普段の言動からあまり女の子という感じはしないが、哀も最近までは中学生だったのだからこういう乙女的な反応の方が年相応であろう。


「バリアフリー」


「誰が全く段差がなくて安全なのよ……。これは……そう、スレンダーよ」


「スレンダーねぇ~」


 隣に座る哀の全身像を確認する。

 確かに俺とあまり変わらない高身長に、小学生のころ俺が着ていた洋服を部屋着に出来るほどのウエスト、スラっと長い脚。良くいえばスレンダーな体型である。……それにしてもおさがりにもおさがりすぎるだろ、母さん。縦のサイズは合っていないので、哀は結構な頻度で家ではへそ出しだ。これほど色気のないへそ出しルックのヤツはそういないだろう。


「あまり私をエロい目で見ないでもらえるかしら?」


「見てねーよ。むしろ見飽きたわ」


「えっ? 私のあんなところやそんなところまで見飽きたって?」


「そこまでは言ってねー」


 先ほどの胸のサイズを気にする可愛らしい女の子はどこにいった?

 ……コイツ限りなくモテないだろうな。内面もそうだが、クール、大人っぽいってのは一見よさげに思うかもしれないが、実際のところ不愛想、笑顔がないということだ。

 洒落っ気もなく、散髪も自分でし服も買わない。こんな女子高生は大丈夫なのか? 兄として少し心配になってくる。

 ……一生独身でもお兄ちゃんは別に憐れんだりしないからな。


「哀。肩揉んであげるよ……」


「なんでちょっと憐みの表情なのかしら?」


 肩をマッサージしてあげた。ついでに椅子を繋ぎ合わせベット風にし、寝転がらせて腰のマッサージもしてあげる。


「気持ちいいか?」


「ええ、すごく気持ちいいわ。そのいやらしい手つきがすごく気持ちいいわ」


「誤解を招く言い回しをするな」


「あら、またがっているくせに?」


「この体勢がやりやすいんだよ。じっとしてろ」


 俺は哀の太もも辺りにまたがり、腰のマッサージを行う。

 家では哀だけではなく、母さんにもよくやってあげている指圧マッサージである。一応足や手のマッサージなどのバリエーションも存在するが、もっぱら腰が多い。


「私を押さえつけて何をするつもり?」


「マッサージをするつもり、それしかねーよ。ここ強めに押すぞ?」


「哀は欲情に狂った淫らな声をあげる……」


「自分自身で何言ってんだ」


 ……コイツずっとまともなこと言ってなくないか?


「そういえば蓮。感想と評価きたみたいよ。よかったじゃない」


「なんの話だ?」


「この作品のことよ?」


「作品とか言うな。それにあとがきでする話、本編ですんな。今回後書きなしになるじゃねーか」


「フフ、文章評価2ptでストーリー評価3ptよ。内容がいかに酷い物語ってことね。人生とは自分が主人公の物語なのだったら、蓮の人生はクソ……酷いってことになるのかしら?」


「言い直しても、もうクソって言い切っちゃってるからね? 人生とは――に関しては俺の台詞じゃねー!」


「――あっもう、抱きつかないでよ」


「揉んでやろうか、そのペッタンコな胸」


「イヤー、オソワレルー」


「棒読みじゃねーか!」


 わちゃわちゃ、ゴソゴソ。キャッキャッ、ウフフ。

 ウフフは嘘だ。別に寝室での夫婦プロレスごっこではない。

 だが……


 コンコンコン、三度ノックする音が聞こえる。

 扉の方に視線を移したが、扉は開いている……


「お二人さん、そろそろ入ってもいいかな?」


 栗花落さんが扉に背を預け、立っていた。

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