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恋人以上×妹未満。  作者: しすたー遠藤
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6話   『チンポジ、左向きにするか?右向きにするか?』

 ガラガラガラ! 勢いよく扉が開く。


「蓮!」


 来るだろうとはうすうす感じていたが、思ったよりお早いご登場で。俺のことを名前で呼ぶ者などそういない。

 ここで、昔離ればなれになってしまった幼馴染が生徒会長挨拶で俺を見つけ、そして会いに来る……なんてドラマチックなお話が見たければ、よそのライトノベルの子になりなさい。

 訪ねてきたのはもちろん、妹の哀である。


「ノックぐらい――」


 生徒会関係者以外はノックをしろ、と伝えようとしたが遮られる。


「……浮気かしら?」


「――彼女か!」


「妻よ」


 照れることもなく、当たり前であるかのように自然に言うな。

 栗花落さんとはただ、二人っきりの生徒会室で椅子を隣合わせて仲良く談笑していただけ……なんか怪しくないか?


 そんな俺たち兄妹の至って普通の日常会話を、栗花落さんは呆然とした表情で眺めている。

 哀に対して「栗花落さんは同じ生徒会役員だ」と誤解がないよう説明しておく。別に説明義務などない気もするが。


「突然失礼しました、栗花落先輩。兄がいつも御世話になっております。そして、兄をいつも御世話している妹の天羽哀です」


 哀は栗花落さんに向け、礼儀正しく頭を下げ挨拶をしている。

 一部ツッコミどころがある自己紹介だった気もするが、栗花落さんに俺たち兄妹のことを勘ぐられても困るのでやめておく。別にやましいことなどありはしないけど。


「で、何しに来たんだよ?」


「私、生徒会に入るわ」


「……あ、そう」


 予想通り、想定内の回答だ。

 高校生にもなれば妹は兄を避けるのが一般的だと聞くが、俺たち兄妹は普通より少し仲が良いのかもしれない。

 毎日同じ家、同じ部屋。そして今日から同じ学校、同じ生徒会室。


「……なぁ哀。お前はずっと俺と一緒でいいのか?」


「そばにいるね」


「テルマか!」


 このボケするために言葉遣い変わってんじゃねーか。

 哀はそう言うと、栗花落さんとは反対側の俺の右隣の席に腰かける。


「でもよかったじゃない、天羽くん。これで早速一人確保だね」


 まぁ、身内でも一人は一人だ。皇先生からの指令は達成した、ということである。

 哀ならいたとしても、俺にとっては人口密度が上がる感覚はない。毎日顔を合わしていれば、そんなもんである。これから生徒会室の光景は、自室とたいして変わらないことになりそうだ。


「哀はどの役職希望とかあるか?」


「そうね……受付でいいわ」


「そんなポジションねーよ」


「私、チンポジの話なんてしてないわよ?」


「俺もしてねーよ」


「じゃあ誰がしたのかしら?」


「お前だよ! ……あ」


 ……ここは生徒会室だった。自室ではない。今ここにいるのは俺、哀、そして。

 隣から突き刺さる栗花落さんの視線が痛い。

 妹とチンポジの話をする兄って人からどう見えているのだろう? ……考えるまでもない。


「……天羽くんって、変態さん?」


「――はい、もちろん」


「お前が答えんな」


 栗花落さんの質問に哀が即答する。

 ……お前は俺をどうしたいんだよ。

 栗花落さんの視線がより一層厳しいものになる。


「落ち着いて、栗花落さん。もしかして勘違いしているかもしれないが、チンポジとは……チンパンジーポジショニングの略だよ?」


「……なんなの、チンパンジーポジショニングって?」


 俺も知らん。正規のチンポジ以外、知らん。

 動物園で最適の場所にチンパンジーを配置すること。……これでいいか。


「それは、動物園で最適の場所にチンパンジーを配置することだよ」


「へぇ~、そうなんだ」


「私も知らなかったわ」


 なんで哀も一緒に納得してんだ。チンポジ最初に発言したの紛れもなくお前だから。


「世の中、略称って多いから知らないことも多々あるね~」


「そうだね……」


 栗花落さんがどこがで恥を欠かぬことを祈るばかりだ。特に動物園に行くときには、豆知識をひけらかさないようお気をつけて。


「リモコンとかもそうだよね」


 おもむろに栗花落さんは机に置いてあったエアコンのリモコンを手に取る。


「リモコンはリモートコントローラーだったかしら?」


「まぁそれくらいは誰でも知ってるわな。じゃあ、エアコンの略称知ってるか?」


「う~ん。……わたしはわかんない」


「私は当然知っているわ。エアートコントローラーでしょう?」


「それ、リモートコントローラーに引っ張られすぎだから……」


 ホントに新入生代表がコイツで大丈夫だろうか、と心配になってくる。


「……で、もともとなんの話してたっけ?」


「哀ちゃんの役職の話だよ」


「そうよ。蓮が話を逸らすからよ」


「ごめんごめん」


 ……話逸らしたの俺だったか? そんな俺のチンチンは左に逸れていた。


 俺と栗花落さんは今年で生徒会を卒業してしまうため、来年度の生徒会を任せるためにも、という意味で副会長でいいんじゃね? とテキトーに放った俺の発言はなあなあで採用され、哀は副会長に決まった。


 我が皇来学園の生徒会役員。生徒会長、天羽蓮。副会長、天羽哀。会計兼書記、栗花落恵。以上三名。

 栗花落さんは役職になど特に興味はないと、こころよく副会長を哀に譲っていた。

「エア・コンディショナー」


「いきなりどうしたの? 頭でもおかしくなったのかしら?」


「いや。気になる方もいるかなぁ、と思って」


「何を言っているの? いるわけないじゃない。感想0、レビュー0、評価0、ブックマーク11件の不人気作品の物語よ?」


「泣きそうになること言うな。もしかしたら明日にはバンバン感想、評価が寄せられる人気の物語になるかもしれないだろ?」


「いつからこの物語は異世界ものになったのかしら?」


「ヒドくね? ……泣くぞ。あっ、ブックマークしてくださった11名の方ありがとうございます。評価や感想もどんどんお待ちしておりますので、よろしければ」


「蓮は三つ指をつき、頭が地面につくスレスレまで深々とお辞儀をするのであった」


 ……かぎかっこ、見逃すべからず。(哀の策略です)

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