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恋人以上×妹未満。  作者: しすたー遠藤
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4話   『難聴、鈍感。あと一つなぁ~んだ?』

 そうこうしているうちに入学式も無事に終わり、生徒たちは各々新しくなるクラスへと足を運ぶ。


 我が皇来学園はA組からH組まで計8クラスが三学年ある、一クラス40人ほど全校生徒で1000人ほどの一般規模の学校である。

 男子生徒が一人だったり、生徒会に絶対的権限が与えられていたりはしない、普通の学校である。


「よお! 幼馴染。バッチリ決まってたぜ、生徒会長挨拶」


 片手を挙げ近づいてきたコイツは、二年のとき同じクラスだった秋葉あきばだ。どうやら三年も同じクラスのようだ。

 俺が栗花落さん以外に唯一話せる友達というかぼっち仲間である。類は友を呼ぶが、ぼっちはぼっちしか呼ばないということだ。


「秋葉、お前と出会ったのはつい去年のことだ」


「高校で出会ったからといって幼馴染を呼称してはいけないルールはないぜ」


「それは幼馴染を拡大解釈しすぎだろ……」


 それだと友達全員幼馴染になっちまうじゃねーか……あっ、友達なんかいねーわ。


「そんなことよりさ、見た? 新入生代表の子。めっちゃ綺麗じゃなかった? 妙に大人っぽくて、髪なんてお尻ぐらいまであってさ。それにあの、人を蔑んだような凍り付いた目が良いよな」


 ……後半、褒め言葉か?

 髪が腰までならまだロングヘアの許容範囲だが、尻まではさすがに現実離れしているだろ。貯金してるのかなんなのか、最近美容院に全然行かず自分で軽く整えるだけなのは、女の子としていかがなものだろうか。


「しかもしかも、聞いて驚くなよ? オレのこと見てた気がするんだよな」


 秋葉、お前こそ聞いて驚くなよ。それ、俺の妹。俺たちそんなに似てないわけじゃないんだけどな……。


「……そうだな。うちのクラス見てたかもな」


 まぁガン見だったからね、あのバカは。


「そうだろ? やっぱそうだろ? もしかするとオレ、告白されるかもしれねぇな」


「……そうだな。俺の妹、だけどな」


「えっ? 今なんか言った?」


 ――ちょっとここにラノベ主人公がいるんですけど。大切なことになると、耳が遠くなる難聴者がいるんですけど。

 わざわざもう一度言ってあげるほど俺はお人好しではない。でも、ラノベヒロインの気持ちを代弁したくなる。


「耳鼻科行け」


「いきなりどうした?」


 くだらない会話をしながら俺たちは、新しいクラス三年B組へと移動した。






「一緒のクラスになれたねっ!」


 教室に入った瞬間、声をかけられた。そういえば朝そんな会話もしたね、と俺の返答より先に隣にいた秋葉が栗花落さんに話しかけていた。


「恵ちゃん! オレも同じクラスです!」


「……秋葉くんも同じクラスだったんだね」


「はい! どうぞオレのことは名前で呼んでいいですよ」


 すごい勢いで栗花落さんに迫っている。いつも笑顔の栗花落さんの表情も、さすがに引きつっているように見える。

 自分のこと名前で呼んでもいいよ、って言うイカレたヤツってリアルにもいるんだな。


「よろしくね、秋葉くん」


「こちらこそよろしくです!」


 そして思いっきり拒否られていることに秋葉は気づかず、と。


「秋葉って栗花落さんのこと知ってたっけ?」


「あの恵ちゃんだぞ! 知らないわけがないでしょうが、バカタレ! しゃべるのは初めてだが」


 しかも初対面だったのかよ……。

 あの恵ちゃんってどの恵ちゃんだよ、とも言ってやりたいが、本人の前で名前を呼ぶことは照れる。


「じゃあなんで栗花落さんは秋葉の名前を?」


「わたしは一応生徒会の人間だから……」


 生徒会役員だからと初対面の人の顔と名前が一致している栗花落さんもすごいが、初対面の人を名前で呼ぶコイツの方がもっとすごい。正直すごすぎて引く。


「ペラペラペーラペラペーラ」


「……」


「そろそろ席に着こうぜ」


 困り顔の栗花落さんに浴びせる秋葉のべしゃりが鳴りやまないので、さすがにそろそろ止めておく。話のベクトルがアクセラレータ化している。


「なんだよ、話盛り上がっていたところなのに……」


「安心しろ。盛り上がってなどいない」


「そっ、そんなことねぇし。ねぇ、恵ちゃん?」


「……うん」


「ほ~ら? 天羽の目は節穴か?」


 ――ちょっとここにラノベ主人公がいるんですけど。難聴に続き次は鈍感か。

 結局力ずくで秋葉を引き連れ、席に向かう。


「……ありがとね」


 去り際に秋葉に聞こえないよう耳元でお礼を言ってくれた。栗花落さん、さすが気遣いが細やかだな。


 着席してからも、秋葉の話は終わらない。

 あきば、あもう、と俺たちは出席番号が連続しているため、新年度当初は席が前後なのだ。窓際の前から二番目が俺、その前つまり窓際一番前が秋葉である。


「栗花落さんはだな、あの少しパーマがかったショートボブもさることながら、とにかくカワイイ。優しくてまじめでピュアで、まさに学園のアイドル。今日からは三年の栗花落、二年の須王、一年の天羽……天羽? あれ?」


「気のせいだ」


「あっ、気のせいか。それでだな――――」


 この話は、新しい担任の先生が来るまで続いた……

天羽蓮あもう れん

天羽哀あもう あい

栗花落つゆりめぐみ


「クレジット作っといてあげたわよ」


「ありがと……おい、秋葉忘れてんぞ」


「あっ、忘れていたわ。私としたことが」


「気をつけろよ……って、よくよく考えたら今回お前出てねーだろ!」

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