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恋人以上×妹未満。  作者: しすたー遠藤
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25話   『扉の向こうの彼女』

「網走のヤツ、顔色悪かったぞ。でもどっちかというと、お前の顔色の方が悪くなるか?」


「なんでお前がここにいる……」


「生徒が学校来ちゃいけないのかよ」


「生徒であるならば、授業中なら教室に行け」


「その言葉そっくりそのまま返してやるよ」


「でも今日英語はないぞ?」


「それくらい知ってるわ。天羽を称えてやろうかと思ってな」


「えっ? 俺を叩いてやろうか? これ以上? 怪我人なのに?」


「叩かねぇわ!」


 網走がこの場を後にした数秒後、まだ授業中にもかかわらず生徒会室の扉が再度開かれた。網走が戻ってきたのかと思ったが、生徒会室の扉を開けたのは……秋葉だった。


 たまたま今来たのか……なワケあるか。タイミング良すぎるわ。何か言おうとすると邪魔が入るお約束くらいタイミング良いわ。

 英語の授業は所詮登校の目安だろうから今日学校に来ること自体は別に不思議でもなんでもないのだが、ここは生徒会室だぞ? 秋葉が生徒会室に来ることなどめったにどころか、ほぼない。しかも今、もれなく絶賛授業中だし。

 それについさっきというかほとんど今、網走と一段落したところなのにこのタイミングで扉ガラガラガラ……100%スタンバってたじゃねーか。


「遅刻してきたなら、さっさと教室行けよ。俺は散らかった生徒会室を片付けてから、帰る」


「授業出ねぇのか?」


「出れるか。今俺が教室行ったら色々な意味でパニックになるわ」


「まぁその怪我だもんな。それと……この記事か?」


「……なんでお前がそれを持ってんだよ?」


「見せてもらったが、結構いい出来栄えだな」


 秋葉が手にしているのは、今日掲示板に貼り付けたはずのあの記事だ。俺と栗花落さんが恋人だった、というあのスクープ記事だ。

 新聞部には一枚しか発行させていないはずだが……?


「おい、なんでお前が持っている!?」


「掲示板からむしり取っただけだけど?」


「なんのために?」


「まぁそんなことより、とりあえず治療してやるよ。養護教諭のお姉さんから道具借りてきてやった」


 秋葉は生徒会室に救急箱片手に現れていた。

 たまたま、ほんのたまたま偶然、秋葉が救急箱を所持している部隊に所属しているか何かだと無理やり否定できなくもなかったが、保健室から拝借してきたとの発言により扉の外でスタンバっていた可能性は100%から100%になった。俺は120%とか認めない。だったら130%の方が高いもん、キリがないもん……んなことはどうでもいい。

 それより……


「俺だって養護教諭のお姉さんに手当てしてもらいたいが、今は秋葉でいいや。頼んだ、衛生兵」


「誰が衛生兵だ! 問題そこかよ!? オレのこと気にならねぇのかよ!?」


「何? 気にしてほしいの? 正直俺、思ったより……痛てー。マジで泣きそう」


「あーちょっと待っとけ。こういうときどうすればいいんだ?」


「俺に聞くな。親にはぶたれたことないのに」


「普通は親にも、な。それだと、親以外にはぶたれているみたいじゃねぇか」


「俺にも色々あったんだよ……」


 机や椅子は散乱してしまっているので俺たちは床に座り、救急箱が開かれる。

 傷の消毒をしたあと絆創膏を貼り、包帯は……いらねぇか。じゃあとりあえず湿布薬ペーン! という秋葉の雑な手当てが目に余るが、とりあえず治療行為が行われた。

 五分ほどの試行錯誤の末……今の姿、左頬に湿布薬がペタッと貼られている状態が完成したのである。傷など全てを湿布薬で覆ってさえしまえば、見た目では転んで負傷したと言っても通用するだろう。あとは……自分の回復力に期待しよう。 


「ありがと」


「痛むか?」


「そりゃあな……あっコンタクトずれてる」


「天羽コンタクトなんかしてたっけ?」


「右目だけにカラコンを」


「厨二か!」


 そりゃあ痛い。湿布薬の下がズキズキ痛む。ドラマなどで殴られたあと絆創膏だけ貼っているみたいなスタイリッシュなイメージだが、実際のところそんな軽症では済まない。傷より腫れの方が心配なくらいだ。


「今までよく我慢できていたな?」


「アドレーナリンが出てたからな」


「アドレナリン、な。そんな鬼は~外みたいなリズムで言うな」


「……で秋葉、俺はお前のことを聞けばいいのか? 教師に最も嫌われている優等生の名を欲しいがままにしている秋葉原行のことを」


「いや、そんなの欲しくねぇから」


「え~、ラノベ主人公みたいで超カッコいいじゃん」


「オレはお前の異名の方が羨ましいよ……」


「えっ? 俺にもあんの?」


「今はそういう話はどうでもいいだろ……」


 それほど学校に来ず授業をあまり受けていないにもかかわらず、学年トップをキープし続け成績で教師たちを黙らせてもいれば嫌われるのも当然である。

 その無気力さが……それに加え、難聴や鈍感も自在に操ることができるラノベ主人公みたいな秋葉をカッコいいと思い憧れてしまう俺であった。


「天羽はオレのことよくラノベ主人公みたいだと言うが、オレからしたらよっぽど天羽の方が主人公らしかったよ」


「お前どっから聞いてたんだよ……。あんな正義もへったくれもない主人公どこにいんだよ」


「満身創痍で勝利する、これが主人公だろ?」


「俺は満身創痍じゃねー。ただ一撃いかれただけだわ。それで、本当に秋葉何しに?」


「天羽を探しに来たんだよ。どうせお前、教室にいなかったらここだろ?」


「まぁな。でもなんで、俺を探す必要があんだよ?」


「そら、この記事見て探さないやついるか?」


「なるほどね……で、俺が網走と事が終わるまで生徒会室の扉の外でスタンバっていたと?」


「簡単に言うと、そういうことになるな」


「な~んだ、それだけ……」


 ……なのか? じゃあ何故、秋葉は俺の仕掛けた記事を回収する必要がある……?

 あ~痛い。さすがに痛みで頭が回らない。満身創痍ではないが、顔の左半球ひんやりズキズキだわ。


「それにしても、ずいぶんアバンギャルドな解決法だったな。あれが主人公の自己犠牲ってやつか?」


「あんなのアバンギャルドでも自己犠牲でもねーよ。それに俺は主人公にはなれない……」


 主人公の自己犠牲ってのは、もっとカッコいいものだ。そして、もっと完璧なものだ。それができるのは勇者、ヒーロー、英雄などだ。見返りを何も求めず、無欲で誰をも助ける。

 無欲……? 俺が?

 勇者もヒーローも最近こなしたが、俺のは偽物ばかりだ。


 俺のしたことは自己犠牲と呼べる代物ではない。そんなことは自分が一番よく分かっている。

 こうして自分の身を犠牲に怪我は背負ったものの、自己犠牲して助けているなどと言えるはずがない。俺はただただこの方法、手段が結果楽だから選択したのだ。

 暴力を振るわれる。これだけで勝手に校則が社会がルールが、自動的に守ってくれる。それどころか勝手に相手がやってしまったと、自責の念に駆られ自らの非を認めてくれる。認めざるを得なく、持っていくことができる。

 暴力はそれほど罪なのだ。咎なのだ。だからこの手の対決では結果、俺は負けない。

 俺が相手に手を出すことは絶対にないからだ。そう……誓ったからだ。

 今喧嘩で負けようが、トータル最後に俺が勝っていれば結果勝ちなのだ。価値は勝ちにあるからだ。それでも……


 ――自己犠牲は自分の身を犠牲にすることではなく、自分のみを犠牲にすることでなくてはならない。


 俺は自分だけでなく、栗花落さんの心を犠牲にした。

 栗花落さんの真意はまだ見えない。

 網走の告白を栗花落さんは保留した。それは何故か? そんなこと誰にも、栗花落さんにしか分からない。

 理由は俺にだって想像はできている。でも確信ではない。確定でもない。

 普通に考えればそうなんだろうとは思えど、栗花落さんなのだ。普通の人とは違う、真っ白に近い栗花落さんなのだ。黒の俺に白の栗花落さんの心が完全に理解できるはずがない……。


 栗花落さんの名誉を犠牲にした。

 栗花落さんは言わずと知れた人気者だ。そんな御方が悪評高い俺と付き合っているなどと学園に広まることは、侮辱以外の何物でもない。

 自分の知らない、事実でもないウワサが勝手に出回っているなど不愉快極まりないことだろう。芸能人はそれで苦しめられている方も多いことだろう。

 俺はその芸能ゴシップ記者、マスゴミのような卑劣で下劣な行為を選択したのだ。


 こんな俺が……自己犠牲を語れない。ヒーローにはなれない。勇者にはなれない。英雄にはなれない。


 ……主人公にはなれやしない。


「いや……天羽はヒロインを助ける主人公だったよ。誰がなんて言おうと、オレからしたら立派に主人公をやったよ」


「なんだよ秋葉、今日は妙に優しいな……気色悪い」


 俺のために救急箱借りてきてくれたり、手当てしてくれたり、優しい言葉かけてくれたり、何か目的でもあるのか……?

 秋葉の行動が不可解すぎる……。


「おい! せっかく称えてやったのに、なんだよその不満そうな顔は!?」


「当たり前だ。俺が本当に主人公ならば普通、この手当てはヒロインがやってくれるわ。どこのBL(ボーイズラブ)だよ」


「今はそれくらい我慢しろ」


 男が男の手当てしているシーンなんて誰得だよ。

 我慢するから手当よこせ、って言いたくなるわ。


「……それで接してみて、あの網走はどうだった?」


「そんなには悪いやつでも……とは言えないが、男子高校生なんて皆あんなもんだろ」


「皆あんなもんではないし、一応お前もその男子高校生な。……でもまさか、あれから二日で網走撃退まで至るとは。さすがだな、感心するぜ」


「いやいやどーも……じゃねーよ。ずっと思っていたんだが、なんで聞かねーんだよ?」


「……何を?」


「何をじゃねーよ。お前が知りたかったことは、栗花落さんの告白の返事じゃなかったのか? 俺に何回も頼んでただろ?」


「あ~それね。保留だろ?」


「……は?」


 今一度考えても……は?

 これは当事者以外、俺しか知らないはずの情報だぞ……? 俺が昨日、必死で掴み取った情報だぞ……? 何故秋葉が知っている……?


「恵ちゃんにそう答えたらと助言したの、オレだから。それに一昨日天羽は聞かなかったみたいだけど、オレは恵ちゃんが告白の返事するとこまで聞いてたから」


「……意味分かんない。さすがに意味分かんない……」


 何を言っている? コイツは何を言っている……?

 意味を汲み取る思考が追いつかない。


「じゃあ……お前が俺に何回も頼んでいたアレはなんだったんだ……? しつこく頼んでただろ……?」


「そんなの天羽を網走に接触させるために決まってんだろ。でも結局、網走の方から天羽に接触したみたいだけど」


「そうだ。栗花落さんの保留の原因が俺にあると網走は思ったから俺を呼び出し……って、秋葉お前……」


 俺が驚いているのとは裏腹に、秋葉は淡々と話をする。秋葉の口ぶりだったらまるで、全てを知っているかのようではないか。

 いつから……? どこから……?


「……おい答えろ、秋葉。まず、網走に悪いウワサがあるってのは本当か?」


「あ~それは嘘だな。網走アイツは計算高い男だよ。本性はあまり知れ渡っていないから、ちょっと

女好き程度なもんだよ。修羅場は見たことないな。多分、この学園で一番モテているのはアイツかもな」


「じゃあ、網走の栗花落さんへの告白が……のことも、か?」


「あぁ、知ってるよ。網走のヤツが恵ちゃんに何回も何回もしつこく告白してたことだろ?」


 ……んなバカな……。


「お前……。それを知っていたのならば、秋葉がなんとかすればよかっただろう? 何故俺に頼んだ? いや……」


「そういうことだよ」


「そうか。そういうことか。秋葉は頼んではないのか……。俺が勝手にやったのか……」


 俯き気味だった顔を上げると、秋葉が憎たらしい笑みを浮かべている。

 そう、これが友達、ね……。


「どうせ天羽、オレが友達って言えばやるだろ? 天羽は自分で、自分の意思で助けた。ただそれだけのことだ。それにオレじゃ網走には勝てねぇしな。ヒロインだって助けてくれれば誰でもいいってわけでもないだろ? 主人公の適材適所ってやつだよ。恵ちゃんを天羽が助けることに意味がある」


「……俺は上手く使われたってことか?」


「そうなるな。でも、裏で暗躍するのが男友達の仕事だろ?」


 俺が主人公ってそういう意味合いかよ……。確かに組織の命令で主人公を監視している密偵でしたとか、そんな感じの男友達が暗躍するラノベ多いけども。


 網走が栗花落さんに何回も何回も告白していた情報は、俺が網走から昨日直接聞き出すことができたものではない。俺の想像で推測だった。

 告白の保留の理由など数あれど、俺の知っているあの栗花落さんが告白を保留する理由など多くは思いつかない。

 先ほど網走自身に鎌をかけてみたら動揺の色が見えたので、この説は間違いではないのだとは思うが……


 何故網走はこの情報だけ俺に開示しなかったのか。それは男のプライド、誇示なのだろう。

 何回も何回も告白しても落とすことができず、やっとのことで保留という応えを貰えた自分を俺に知られるのが許せなかった。そりゃあ俺相手に今まで付き合った彼女の数など、モテアピールをして誇示してくるくらいの男だからな。

 だから、こんな俺に短時間で心を許してべらべらと色々と話した。栗花落さんの告白の保留にこぎつけたことで喜んで浮かれている相手だからこそ、あんなにも昨日の策が上手くハマったというワケだ。


 でも、そうだとしても……


「栗花落さんの真意は……」


「真意も何も、それが普通だろ? 誰だって……恵ちゃんだって他人を迷惑だと思うときも、助けてもらいたいと思うときもあるさ」


「そう……なのか?」


「そうだよ」


 今までに彼女が二人もいた人は女心をよく分かってらっしゃいますね……と、そんなの数えたことねーよなんてカッコつけた手前、俺が口にするわけにもいかない。

 さすが秋葉、ラノベ主人公……あれ? おかしくないか? ラノベ主人公って女心をよく分かっている存在でよかったっけ?


「秋葉って本当にラノベ主人公か?」


「それに関して、オレ自分でなんも言ってねぇよ。いつも天羽が勝手に言ってんだろ」


 確かに違和感はあった。

 コイツ栗花落さんに対して、ラノベ主人公ではなく男友達みたいな感じになっている。初対面のときから恵ちゃんと名前で呼んだり、一方的に話し続けたり、暗躍したり……。


 そもそも今考えれば、体育館裏で告白シーンを目撃したときにたまたま秋葉と遭遇したところから仕組まれていたのか……。

 栗花落さんが網走に頻繁に告白されることを知っており、なおかつ俺がたまに体育館裏を休憩に使用することまで把握していれば、いつか俺が栗花落さんの網走による告白シーンを目撃するに至るってワケか……。

 もしかしたら、栗花落さんに告白を受ける場所は体育館裏にするべきと助言があったのかもしれない。

 何が人の告白シーンを目撃する確率的に結構すごいこと、だ。数打ちゃ当たるって寸法か。未必の故意じゃねーか。


 それが成功したのを皮切りに、栗花落さんの告白の結果が気になるから調べてくれと何度も頼み、はぐらかされる場合も想定して友達と発言し予防線を張っておく。どうせ俺は、友達の頼みならって結局のとこ了承しちゃいますよ。

 仕上げに、網走には悪いウワサがあるとぼっちの俺には確認困難な嘘をつく。あとは俺が勝手に思考を巡らせ、行動するって流れですか……。


 最初のきっかけとなる告白シーンの目撃を秋葉自身が誘導したわけではなく、あくまで必然に近づけられたものだとしても俺自らの意思で行動して目撃してしまうことにより、なんの疑念も湧くことがない。


『騙しのプロではなく、信頼させるプロなのだ。まず本当のことを言って信じさせ、それから騙す』


 ホント……詐欺師の言葉だよ。

 網走が黒だとか、俺が黒だとか……一番の黒(幕)は秋葉お前じゃねーか。

 全く気づけないのは俺がぼっちなのにも問題があるが、唯一の情報源が黒幕とか無理ゲー過ぎんだろ。

 騙し騙され、俺は中間管理職か。


 残る疑問は、二つある。

 結局のとこ、学年一のイケメンって誰なんだ? というのも気になるが、それよりも。

 何故告白を受けたあと栗花落さんの機嫌があれほど良かったのか? これのせいで……かき乱すだけかき乱していきやがったな、状況も、俺の心も。

 あのとき教室にて、俺が後ろから栗花落さんに呼ばれ視線を変えたとき、秋葉は俺越しにアイコンタクトで何かを伝えたのか……?

 違うな。俺に今回の出来事が伝わったこと自体が……なのか? 助けてくれる存在を求めていた、秋葉の言うそれが答えなのかもしれない。 


 あの網走……。あの、だ。

 秋葉にとっては、栗花落さんにストーカーじみた行為をしているあの網走だったってことか。


 ぼっち、あなどることなかれ。

 秋葉、お前は何者なんだ? お前は栗花落さんのなんなんだ……?

 

 ……と聞くのは愚問か。多分……恋だろう。

 俺を利用してでも、栗花落さんを助けたかった。

 アイドルの言葉の意味は偶像だとしても、ファンが本気で恋してはいけないなんて言うほど俺はヒドイヤツではない。

 それに他人のプライベートに土足でガツガツと踏み込むことは友達であったとしても、やってはいけないことである。


「友達って言葉を口に出すってことは友達じゃないんだろうな」


「いきなりどうしたんだよ? オレへの皮肉か?」


「お前にじゃねーよ。秋葉は信用はしていないが、信頼はしているって話だ」


 友達とはそういうものだから。恋人にすら劣る、そういうものだから。


「そういや記事の回収は助かったぞ、秋葉」


「さすがに気づいたか。オレに感謝しろよ。網走がこれを確認した後すぐに回収してウワサが広まり過ぎないようにしたんだからな。三年はもうアウトだが、下級生にまではそれほど広まっていないと思うぜ。あと、教師にも」


 拡散率を比較的抑えるため記事の発行も一枚だけにしておいたのだが、秋葉はそれを見抜いてくれていたということだ。

 人のウワサも七十五日。そこまで待つ気など毛頭なかった。

 学校のウワサなど支配すれば問題ない。

 今のものを鎮静化するのに新たなそれ以上の爆弾を投下する予定だったが。その必要性が薄くなったのならば、俺の被害は最小限になって非常に助かる。


 秋葉の力も借りながら、倒れていた机や椅子を元通りに戻し、生徒会室の状態を復元させた。

 栗花落さんのいつも座る椅子と俺のいつも座る椅子が隣り合っている、いつもの日常。


「じゃあオレそろそろ行くわ」


「やけに変なタイミングに行くのな。まだ授業中だろ。休み時間中に教室入れよ、迷惑になるから」


「はいはい、わーってるよ。じゃあ、ごゆっくり~」






 秋葉がこの場を後にした数秒後、まだ授業中にもかかわらず生徒会室の扉が三度開かれる。

 扉を開けたのは、秋葉ではなかった……


 ……何? 皆スタンバらないと気が済まないの?

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