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恋人以上×妹未満。  作者: しすたー遠藤
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18話   『ラブコメで男友達がモテるのが普通。だって人格者だもん』

「おい天羽。何しれっとどころか壮大に話すり替えてんだ」


「なんのこと? 鈍感な俺には全く分からない」


「恵ちゃんの彼氏できちゃった疑惑詳しく聞く話だ」


 チェッ……、バレたか。

 友達がいなくても不思議ではない不思議な証明は、本日二度目の話すり替えトリックだったのだったが、頭のよろしい秋葉は騙せなかったようだ。


 飲み物を片手に俺たちは、教室に戻る。

 再び、生徒会長と学年主席のおな~り~。


「美人は三日で飽きる。ならイケメンもまた、三日で飽きるだろ。そもそも、栗花落さんがオッケーしたかどうかはまだ決まってねーよ」


「でもさ……恵ちゃん、なんかいつもよりテンション高くなかったか?」


「……お前の気のせいだ」


 そういうとこは敏感なのな……。

 栗花落さんは普段から明るい性格だ。よく共に行動することの多い俺なら、先ほどの栗花落さんに多少の違和感を汲み取ることも可能だが、あまり接点のないヤツには普通分からないだろうに。

 ……人のことをちゃんと見ているということか。じゃあコイツはなんでぼっちなんだよ……。そんなヤツなら、俺と違って友達を作ることなど容易いだろうに、と思ってしまう。


「そういえば、網走のヤツなんで今の時期に告白なんだろうな?」


「俺が知るか」


「もっと文化祭とかイベント時の方が雰囲気良さそうなのにな。近いところだと五月に遠足あるし」


 まぁ、そう言われてみれば確かにそうかもしれない。何故このタイミングなのか? 

 同じクラスのヤツならこの新学期始まって二週間というタイミングでもおかしくはない。少し話すようになって好意を持った、コレなら自然だ。

 でも、網走とやらは隣のクラスだ。もともと同じクラスで離れ離れになってしまったなら、このタイミングでもありか……。


「栗花落さんと網走は、二年のとき同じクラスだったとかあるか?」


「いや、違うクラスだったぞ。一年のときも違うな」


「てか、なんでお前はそこまで詳しいんだよ?」


「逆になんでお前は知らないんだよ……。うちの学園では、二人とも結構有名人だぞ」


 容姿が優れている、それだけでこの高校という狭い世界では有名人となる。

 人は第一印象で九割決まるとはよく言ったものだ。その第一印象でさえ、三秒で決まってしまう。世知辛い世の中だね~。

 しかし、それを覆すのがラノベ主人公という存在だ。ここにいる秋葉がそうだ。


「そういえばお前、彼女と別れたのか? アオイちゃんだったか?」


「あぁ、別れたよ」


「……それで、栗花落さんを狙ってると?」


「いや、そういうわけではないぜ。やっぱり、学園のアイドルには純潔でいてもらいたいじゃん」


「お前、良いやつだな」


 高校三年生の四月にして、二人目の彼女アオイちゃんと別れたようだ。俺は直接会ったことはないが、近くの高校の子だったらしい。

 世間と比べてペースが早いのか遅いのかは俺には分からないが、モテるってことに変わりはないだろう。

 そら、ラノベ主人公の特性を所持する秋葉に女の子が寄ってこないはずはないか。


「天羽は今まで彼女、何人いたことあったっけ?」


「そんなの数えてねーよ」


「さすがだな……って、いつの間にか話逸れていってないか?」


 チェッ……これは話すり替えてもすり替えてもループになりそうだな。テキトーに了承しておくか。


 それより、自分が惨めすぎる……。「そんなの数えてねーよ」、この言葉に嘘いつわりはない。

 何故なら、数えられないからだ。数えようとしても、指を一度もおりたたまないからだ。

 よって数えたことすら、必要性もないという意味で「そんなの数えてねーよ」、この言葉に嘘いつわりはない。


「分かった。友達の頼みなら受けてやるよ。栗花落さんにそれとなく聞いとくよ」


「さすが天羽。よろしく頼む。恵ちゃんを網走の毒牙にかけられるワケにはいかねぇからな」


「他人思いだね~」


「そういうワケでもねぇよ。あの網走だぞ?」


「はいはい、学園二のイケメン君ね」


「そうじゃなくてよ、あんな女たらしに取られてたまるかって話」


 女たらし……? 学園二のイケメン君が……?


「……網走ってヤツは、そんなウワサでもあるのか?」


「モテるだろうからそれなりには、な。多少悪いウワサもなくはないかもな」


「そうか……」


 そう語る秋葉の表情は、恐ろしく真剣な顔つきだった。

 単なる興味本位で聞いてほしいと、のたまわっているのかと思っていたが……。

 俺が自分より栗花落さんとの距離感が近いと判断して、何度も頼んで……いや、調査をお願いしていたってことか……


「どうした天羽、顔が怖いぞ? やっぱりお前も何気にショックだったのか?」


「俺が……?」


 自分の頬に手を当てる。

 ショック? 俺が……? 何故? 男として人間として、秋葉との差に愕然としたか? いや、違う。全く違う。だって俺は自分に期待などしていない。

 

 ……じゃあ、これか。この感情か。


 ――栗花落さん。


 ただの生徒会役員の間柄であったとしても……。


 半年前に出会っただけの間柄であったとしても……。


 友達を瞬殺で断られた間柄であったとしても……。


 心配だ。傷ついてほしくない。泣いてほしくない。笑っていてほしい。幸せになってほしい。

 これは娘を思う父親の心情に似ているのかもしれない。

 網走というヤツが良いやつであってほしい……。そう、願ってしまう。

秋葉原行あきば はらゆき

天羽蓮あもう れん


「はい、クレジットよ」


「俺、降格してますけど?」


「当然じゃない? サブタイトル、目に焼き付けなさい」


「焼き付けるどころか、ラノベ業界からの攻撃で炎上してしまうわ!」


「炎上商法ね。政治家の――」


「――それはさすがにやめろ。台詞全部、効果音になっちゃうから」


「そうね、ごめんなさい。五十五名様、評価。二十六件、感想。一件、レビュー。七百二十名様、ブックマーク。共々、本当にありがとうございます」


「何気にその感謝の台詞、哀が言うの初めてだな」


「今の台詞全部効果音に、というフリだったのだけど」

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