17話 『皇来学園の真実』
「秋葉、飲み物買いにいかね?」
「おい、名前で呼ぶ話はどこいった?」
五限の英語も終了し、休み時間である。
この10分の休み時間も、友達がいれば苦ではない。わざわざ10分のために生徒会室に赴く必要もない。秋葉が毎日学校に来ればの話だけどね。
生徒会長と学年主席が廊下を並んで歩く。
ぼっち+ぼっち=友達。
友達とは、お互いに心を許し合って対等に交わっている人。共に遊んだりしゃべったりする親しい人。
俺は友達が少ない、そんなタイトルのライトノベルをさっきまで読んでいた件について。
「それで天羽。しれっと話すり替えたようだけど、恵ちゃんの彼氏できちゃった疑惑詳しく聞いといてくれよ?」
チェッ……。友達話でごまかしたつもりだったが、忘れていなかったか。そんな難易度の高いミッションこなせるか!
俺と栗花落さんは、その友達ではないのだ。以前断られたのだ。
「今の流れ的には、友情の大切さを学ぶとこだろ?」
「そんなのはどうでもいいだろ」
「……お前はホント、主人公になれるよ」
「それは褒め言葉なのか?」
「あぁ、当然だ。俺は……」
……憧れている。俺だって主人公になってみたい、そう思ってしまうのは普通の感情であろう。
秋葉原行。コイツほどラノベ主人公みたいなやつはそうそういない。
高くも低くもない平均的な身長で、これといった特徴のない容姿。学校をサボる無気力さ、難聴、鈍感。そして、学年主席の本当の頭脳派。言うことがやけにカッコよかったりもする。
それに友達が少ない、かつ男友達を軽んじるとこまで完備。と言いながらも、いいやつだ。単純に性格が良いのだろう。
そら、ラノベヒロインもラノベ主人公に惚れるわけだ。外見は磨けても、内面は簡単には磨けやしないのだから。
「まぁそれより秋葉、友達増やそうとか思わないのか?」
「友達は増やそうとするもんじゃねぇだろ」
「そっか……」
サラリと言ってのけるところを見ると、本気で言っている証拠だ。
やはりコイツ、カッコいいな。
「そんなこと聞くってことは、天羽やっぱり友達いないだろ?」
「いっ、いるわ。めちゃめちゃいるわ。毎日家に帰るころには、しゃべりすぎて喉カラカラだわ」
「ソレ、数十分前にも聞いたぞ」
「俺も数十分前に言った」
「友達いないこと認めろよ」
「……分かった。では俺が今から友達がいなくても不思議ではない、不思議な証明をしてやろう」
「いや、いらねぇ」
「そこは聞けよ。友達だろ?」
「もう、わーったわーった。聞いてやるよ」
目的地の自動販売機到着までまだ少し歩き進めなければならないので、暇つぶし程度に聞いてくれるようだ。
「コホン、じゃあ始めるぞ」
「ご勝手に……」
「我が私立皇来学園。全校生徒1000人ほどの一般規模の学校。男子生徒が一人だったり、生徒会に絶対的権限が与えられていたりはしない、普通の学校である……とはいえ、普通かどうかなどは人の主観によって変わる。人それぞれだ」
「天羽、何故突然語り口調?」
「まぁ聞け。俺が秋葉以外の男子生徒と話すとこを見たことあるか?」
「……ないかもな」
「そうだ。それにここで網走とやらの登場だ。ソイツの異名はなんだった?」
「学園二のイケメン」
「その通り。こんな珍妙な異名が普通存在すると思うか? いや、ない。つまり……」
「つまり、なんだよ?」
「つまり……この学園に男子生徒は俺とお前、網走とやらの三人しかいない……」
「はぁ……」
「我が私立皇来学園。全校生徒1000人ほどの一般規模の学校。男子生徒が一人だったり、生徒会に絶対的権限が与えられていたりはしない、普通の学校である……とはいえ、普通かどうかなどは人の主観によって変わる。人それぞれだ」
つまり……これが真実。
「女子生徒と話さない男子生徒など別に珍しくはないだろう? ぼっちなのは起こりえた必然なのである。以上」
……。
……。
……。
……。
「天羽、何買う? オレ、ココアにするわ」
「――おい、無視すんな」
「はいはい、それで友達がいないのね。わーったわーった」
「……俺はいつも通り、水でいい」
休み時間なので自動販売機前には、多少生徒たちが並んでいた。
もちろん、男子生徒女子生徒入り乱れて。
……俺だって、頭脳派ぶってラノベ主人公ぶりたいときもある。
ここは現実世界だ。物語じゃないのだから、そんな学校あるワケがない。
我が私立皇来学園。全校生徒1000人ほどの一般規模の学校。男子生徒が一人だったり、生徒会に絶対的権限が与えられていたりはしない、普通の学校である。
『天羽蓮』
『天羽哀』
『秋葉原行』
「久しぶりにクレジット作っといてあげたわよ」
「ありがと。前回のときと同じく、今回もお前は出てないけどな」
「私出てたわよ」
「?」
「『男子生徒女子生徒入り乱れて』ってとこの乱交シーンに」
「そんなシーンはねーよ。自販機前で何やってんだ、って話になるわ」
「普通の学校だものね?」
「あぁそうだ。むしろ今回の話はそれだけだ、閑話みたいなものだ」
「それが後々、重要話に……なったらいいわね」
「願望かよ。五十三名様、評価。二十四件、感想。一件、レビュー、そしてブックマーク本当にありがとうございます。モチベーションにさせていただいております」
「蓮、こんなところで下ネタはやめなさい。おかずにしている話なんて」
「……お前それ、モチベーションじゃなくてマスターベーションだから!」