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恋人以上×妹未満。  作者: しすたー遠藤
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13話   『謝罪は口に出さないと意味を成さない』

 本日何度目か分からない栗花落さんの訝しげな視線をサラリといなし、話を進める。


「まぁとにかく、俺と栗花落さんだけだろうが色々やりようはある」


「……天羽くん、やっぱりなんかおかしくない?」


 サラリといなさせてよ、もう……。だが今回の場合、俺はまじめに働く生徒会長だ。言い分は当然だが、正論となる。


「新入生歓迎会まであと二日だよ? もう時間がない。じゃあ、いつやるの?」


「今で……」


「はい、よろしい。では話を進めまーす」


 腑に落ちないとはこの表情のことであろう、栗花落さんはそんな顔をしていた。普段の俺はここまで信用されていなかったとは……。

 そんな様子を見かねてか、哀はすばやくフォローを入れる。兄想いの出来た妹である。


「栗花落先輩、蓮は生徒会長です。やるべきことくらいはちゃんとやりますよ」


「う~ん、そうだったかな? まぁ、そうだったかも」


「それに、蓮がおかしいのはいつものことでしょう?」


「そっ、そうだよね。天羽くんおかしいもんね。たまにやる気があることもそれほどおかしくはないよね、うん」


「そうですよ。蓮は今回、戦隊モノの衣装が着たくて着たくてしょうがないみたいです。そういう変態モノが好きだった、と先ほど言ったでしょう」


「そういえば言ってたね~。天羽くんはそういう変態モノが好きだったんだもんね」


「そうですよ。だから今回その変態モノを着ようと、積極的に働こうとしているのです」


「なるほどね~」


 哀のフォローにより納得した栗花落さんの表情は、晴れ晴れとしたものだった。


「……蓮。丸く収まったから話進めていいわよ?」


「あぁ、ありがと。それでだな……ってなるか!」 


 後半、しれっと戦隊モノから変態モノにシフトしてんじゃねーか! もう栗花落さんの中で俺は、いつもおかしいヤツ扱いになったのだろうか? 成り下がったのだろうか?

 それと、兄想いの出来た妹はキャンセルで。


「蓮。どうしたのかしら? 今、やるんでしょ? 皇来ハイスクールの新入生歓迎会の準備」


「なんでそこだけ英語なんだよ。明らかに不自然すぎるだろ」


「天羽く~ん、話進めてもいい?」


「……どうぞ」


 俺の記憶では、栗花落さんが話止めてたはずだけどね……。


「それでどうするの? 色々やりようある、って言ってたけど?」


「先生からのお達しだから、このよく分からん戦隊モノの衣装を使うとして……。これってどうせマスクさえつけたら中に誰が入ってるかなんて分かんないのだから、テキトーにそこらへんから人数合わせに連れてこればいいだろ?」


「蓮は何を言っているのかしら? ヒーローに中の人なんていないわよ」


 お前が何を言っている? しかもそれ、着ぐるみの話だから。

 良くも悪くも戦隊ヒーローには人間が入っている。イケメンからおじさん、基本おじさんが入っている。むしろ休憩室には、おじさんしかいない。ピンクから出てくる人までもがおじさんしかいない。よって、おじさんしかいない。

 だから、そんな哀は無視して構わない。


「この方法でパフォーマンスとしては、なんとか見れるものになるだろう」


「じゃあ残りの五人、蓮は誰を連れてくるっていうのかしら?」


「そんなの友達に決まって……」


「トリ〇ゴ使うかしら?」


「使わねーし、使えねーよ」


 ホテル()探すときは、とても使えます。


「……栗花落さん、後は任せた」


「そうだよね。天羽くん、友達いないもんね」


 あっれ~? やっぱまだ少し怒ってたのかな? 仕返しなのかな? そうなのかな? そうだよね。ごめんなさい。


「でも、そこまでする必要もないんじゃない? 部活紹介のパフォーマンスって基本インパクトさえあればいいんだから、戦隊モノの衣装さえあれば天羽くんと私の二人でも大丈夫じゃない?」


「そう言われてみれば……そうかもね」


 確かに部活紹介を見て、部活を選ぶヤツなどそうそういない。普通、自分が入る部活ってのは入学したときにはほぼ決めているもんだ。

 新入生歓迎会においての新入生は出された勧誘を見ているのではなく、パフォーマンスを見ているのだ。

 だから俺も安心して、勧誘という名のパフォーマンスができる。

 生徒会室の人口密度は上げさせはしない。


「じゃあ、俺と栗花落さんの二人でパパっとこなす方向で」


「そうだね。わたしもそれで大丈夫だと思うよ」


「私、別に新入生歓迎会など見たくはないのだけれど……」


 哀の声のトーンがわずかに落ちたところを見ると、なんやかんや言いながらも本当に協力してくれようとしていたのだろう。

 ……ありがと、哀。兄想いの出来た妹である。


「それじゃ、軽く内容でも詰めておくか。俺はレッド着るとして、栗花落さんはイエローでいいよね?」


「えっ、なんで?」


「なんでって……黄色好きだよね?」


「えっ、なんで知ってるの!?」


 声が少し踊っている。ヘアピンのときにも感じたが、どうやら栗花落さんは自分のことに気づいてもらえると嬉しい、典型的な女の子タイプのようだ。

 なんで、と聞かれると……それはパンツを見たからです。パンツとヘアピンという点と点を線にしたからです。


「そっ、そんなことくらいは知ってるよ。栗花落さんとは、昨日今日の関係ではないし……」


「そうだよね。確か去年にも黄色好きって、話したことあったもんね」


 ごめんなさい。黄色が好きだと今日知りました。ごめんなさい。


「そっか、そっか~」


「蓮は栗花落先輩のパンツの色を言っただけだと思います」


「そんなワケねーだろ。俺は色々考えたんだよ、色だけに……」


「――んっ、んっ!」


 左からわざとらしい咳払いが聞こえる。

 ……正直なところ、ヘアピンの色をしっかり覚えていたことは評価してほしいな。

 まったく、余計な予測はするもんじゃない。人の好きな色を覚えておくと使えるときが訪れるかもしれない? ……訪れたのは災厄だ。最悪だ。


「あ~も~う~く~ん」


「――ごめんなさい」

「この作品もみるみるうちにランキングから消えていったわね。打ちきりかしら。アノ作品は今……」


「泣きそうになること言うな」


「えっ? 泪のム――」


「――それはもういい」


「打ち切り、いつやるの?」


「今で……手を前にカメラ目線()しない」


「そっちは4()カメよ。……意味深ね」

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