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恋人以上×妹未満。  作者: しすたー遠藤
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12話   『セイトカイジャー』

 ガラガラガラ。


「おかえり栗花落さん。お疲れ様。いつもありがと。大丈夫? 肩凝った?」


「何しれっと、さっきの出来事なかったことにしようとしてるの?」


「そっ、そんなことないよ。なっ、何言ってるの? 俺はただ純粋に肩を揉んであげようと」


「天羽くんが揉んだのは、わたしのだけど、ね」


 むっとした顔で、胸の部分を強調して発音される。……まだ少しプンプンなのかな?

 ラッキースケベ。別名、迷惑防止条例違反。制服の上からおっぱ……胸を触り、おまけにパンツを拝見。

 責任取ってもらうんだからねっ! なんて、実際ラッキースケベが起こった現場では、一切そんな台詞出てきやしない。

 栗花落さんが本当にツンデレにカテゴライズされるのならば……って、栗花落さんはそんな女じゃない。


 俺はどんな態度で挑もうか悩み、結局何事もなかったかのようにしれっと作戦を選択したが、どうやら失敗のようだ……でもないらしい。

 おそらく怒り慣れていないのだろう。ただただ頬を膨らませていたが、徐々にしぼんでいき、そしてゆるんでいく様は単純に……可愛いよ。

 栗花落さんの頬で、俺の頬は完全回復だ。

 それにどれだけ怒りを取り繕おうが、もう怒ってはいないことは明白である。だってまた、俺の隣のいつもお決まりの椅子に腰をかけるのだから……。


「よいしょ……ふぅ~」


「で、そのダンボールは何なの?」


「えーっとこれはね……」


 栗花落さんは両手でダンボールを抱え、生徒会室に戻ってきた。机に置かれたそのダンボールの側面には、文化祭用と大きく書かれている。中身は……


「……何これ?」


「蓮、そんなことも知らないの? これは戦隊モノの衣装よ」


「そんなことは俺も知っている。なんでこんなもんがここに持ち込まれたか、を聞いている」


「皇先生が『生徒会役員で新入生歓迎会の部活紹介に出て、パフォーマンスでもやりなさい』だってさ」


「……あの人、全く何考えてんだ」


「『生徒会も部活みたいなものだろ? 部活紹介にちゃっかりまざって、しっかり勧誘しなさい』って言ってたよ」


 栗花落さんによる皇先生のモノマネが全く似ていなかった件パート2についてはここで言及はしないが、まさか……これを使えと?

 それにちゃっかりかしっかり、どっちだよ。


「……一応聞くけど、先生はこれを俺にどうしろと?」


「皇先生曰く、『トリは抑えておいた』だって」


「いやいや、抑えるポイントそこじゃねーから」


「『この戦隊モノのスーツは他の部活が使うという情報を耳にしたからワタシが先に抑えておいた』とも言ってたよ」


「抑えるポイントそこでもねーから」


 栗花落さんによる皇先生のモノマネが全く似ていなかった件パート3についてはここで言及はしないが……てか、一生言及するつもりはない。

 部活紹介のトリを抑えてるってことは、しっかりの方か。ちゃっかりしてるな、あの人。


「これが先生に連れていかれた理由?」


「うん、そうだよ」


「でもなんで栗花落さんだったの? 荷物運ぶのなら俺でよかったろうに」


「さぁ? 天羽くんに説明したら駄々こねるからじゃない?」


「……妥当だな」


 栗花落さんが席を離れていたのは、このためである。

 平手打ちから皇先生に連れていかれるまでの五分間、俺はありとあらゆる方法を駆使し丸め込もうとしたが、やはりどんな方法よりも間を空ける、つまり時間に勝る解決策はないということだ。

 一度空気を入れかえてくれた皇先生には感謝している。ナイスタイミングの訪問、グッジョブ先生。

 今回はその恩に報いるとしますかね。何故戦隊モノなのかは意味不明だが。生徒会役員が増えれば、絶対自分の仕事が減ると思っているな……。


「じゃあ……やりますか」


「えっ、なんで?」


「……あの~栗花落さん。俺今やるって言ったんですけど?」


「うん。だから、なんで?」


 栗花落さんが不思議そうな顔をして、こちらを見てくる。

 その台詞の続きは、なんで天羽くんみたいなのが積極的に働くの? なんで? にしか思えないんですけど。もう俺にはそう聞こえているんですけど。幻聴なのかな? 難聴なのかな?


「蓮はヒーローとか、勇者とか、英雄に憧れていたんですよ、最近まで。いや、今もかしら?」


「今はねーよ……」


「そうなの? じゃあ天羽くんにはレッドあげるね。はい」


 ダンボールの中から取り出された、レッドのレンジャースーツを手渡される。見た感じ、ただのコスプレ衣装だ。全身タイツにマスク、手袋、ベルトと意外と本格的に揃っている。

 まぁ、戦隊モノといえばレッドだからな。てか、もともと文化祭でこんなもん使ったヤツ誰だよ。


「蓮だったら、レッドの一人舞台でもいいかもしれないわね」


「そんなぼっちのヒーロー、見たことねーよ。むしろそれだと、ヒーローのぼっちだから」


 観客のがんばって~、って声がやけに身に染みるヒーローになっちゃうから。憐みで敵もちょっと手加減しちゃうから。


「そういえば、どうせ後でまとめて洗うからフルに使ってくれて構わない、とも言ってた」


「フルに使うほどの人数、うちいないけどね」


 ダンボールを覗くと中には、敵役の衣装はなく七着のレンジャースーツが入っていた。

 俺が手に持っているレッド、それにブルー、イエロー、ピンク、朱色、紅色、ワインレッドの七色……赤率高くね? バカなんじゃね? どんだけ主人公希望者多かったんだよ。ここまでくると逆に、敵を混乱させるための作戦で同色系を用意した天才なんじゃね?


「じゃあ、私はブルーでいいわよ」


「――ちょい待て。なんで哀も参加しようとしてんだ。新入生歓迎会で新入生が新入生を歓迎してどうするよ」


「気づいているのかしら? 私がやらないとなると、蓮と栗花落先輩の二人で戦隊よ? それはもう変態よ?」


「変態ではねーよ。一応二人以上いれば立派な隊、だ。部隊だ」


「そんな部隊、誰がみたいのかしら?」


「……」


 ……それを言われたら、ぐうの音も出ない。確かに、舞台を持て余す部隊など誰が見たい?

 今思えばこれ、生徒会は学校の平和を守る的な意味合いのこじつけではないか? ……ありえるな。


「それで、天羽くんどうするの? 皇先生に別の案で、って伝えてこようか? それとも部活紹介出るのやめる?」


「いや、別に構わない。色々やりようはある」


「……天羽くん、やっぱりなんかおかしくない?」


「何が? ……ですかね?」


 栗花落さんが探りを入れるような目つきで見てくる。

 その視線のわけについては、自分でよく分かっているつもりだ。俺の普段の仕事意欲、態度を間近で見てきたのだから当然だ。先ほどの選択肢で後者を取るのが、いつもの俺である。


 今回はその恩に報いるとしますかね……これは一番の理由ではない。先生には悪いが、本気で勧誘に力を入れる気もない。

 俺は今日一日で騎乗バキューン事件に、ラッキースケベ事件を起こしている。栗花落さんにしてみれば、もうコレただの連続痴漢事件だろ……。

 そんな俺が今仕事を投げ出せると思うか? できるわきゃない。

 ――ぼっちのヒーローにも、ヒーローのぼっちにもなりたくないしね。

 ピンポンパンポン。


「放送委員からの連絡です。読後感を大切にされたい方は、後書きは読まなくても大丈夫だそうです。繰り返します。読後感を大切にされたい方は後書きは読まなくても大丈夫だそうです」


 ピンポンパンポン。


「放送うるさくないかしら?」


「校内放送に当たるな、大事な業務連絡だ。放送委員は使えるから仲良くしておいた方がいいぞ」


「……そういえば最近私のおかげで、読者様が増えたのではないかしら?」


「お前のせいで減った読者様も絶対いるけどな。……でも俺たち、頑張って登校した甲斐あったな」


「投稿の間違いでしょ?」


「上手いこと言ったつもりか。そして、ドヤ顔すんな」


「レビューで私、褒められているわよ?」


「ぶっ飛んでる、は褒め言葉じゃねーよ。あっ、本当に初レビュー感謝いたします。評価、ブックマーク、感想してくださった方々も本当にありがとうございます」


「カメラ目線のところ悪いのだけれど、そっちは4カメよ」

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