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恋人以上×妹未満。  作者: しすたー遠藤
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##話  『プレゼントは』

「目を閉じて……」


「えっ? ……あぁ」


 言われるがままに瞼を閉じた。

 何故これほど怪しい誘導に素直に従うのかというと、本日4月29日は俺の18歳の誕生日。多分プレゼントでもくれるのだろう。でも、何故目を閉じる必要が?


「キスとかするなよ」


「それはしろ、という意味かしら?」


「押すなよ=押せの法則じゃねーよ」


「そうね。押すなよを三回で押せ、だものね」


「熱湯を用意した覚えはない」


「今日の夕食はおでんよ」


 今夕食のメニューを伝える意図はなんだ?


「……で、なんで俺はアイマスクをつけられている?」


 目を閉じた状態で待っていた俺の視界はさらに奪われる。


「別に目を閉じるのもアイマスクつけるのも変わらないでしょう?」


「変わらないなら、なおさらつける必要あるか? 誕生日プレゼントのサプライズレベルでアイマスク着用なんて聞いたことねーよ」


「もしかしたら、私が裸になっているかもしれないじゃない?」


「まぁ、それなら仕方ないな……って、んなワケあるか。プレゼントは私ってか? どこのAVだよ」


「そうよ……今の聞き捨てならないのだけれど?」


「ん? 何が?」


「私に隠れてAVを見ているのかしら?」


「……そんなもの 見たこともない ホントだよ」


「なぜ俳句? ……怪しいわ、ベットの下かしら?」


「うちにベットはないだろ。布団で寝てるんだから」


「そうね。じゃあ布団の下かしら?」


「……それ毎朝布団畳んだ時点で丸見えじゃね? 女性の裸体が丸見えのDVDじゃなくて、女性の裸体が丸見えのDVDが丸見えだから」


「そうね。じゃあ畳の下かしら?」


「……何この会話、隠している場所がブラジルになるまで続くの?」


「そうね。じゃあブラジルかしら?」


 ……バカなのか? あぁ、バカなのか。

 話が前に進まねー。アイマスクから話がここまで脱線するとは思わなかったが、装着を受け入れることでなんとか話が進めさせた。


 アイマスクを着用する。目の前が真っ暗になる。

 起きているのにアイマスクって結構不安だな……。よく考えたら、うちにアイマスクなんてあったか?


「じゃあ左手をこちらに出してもらえるかしら?」


「はい」


「手の平じゃなくて手の甲を上にした方がやりやすいわ」


「はいはい」


 これ以上話が横道に逸れるのも面倒なので、言われるがままに手の甲を上に左手を差し出す。

 いったいプレゼントに何をくれるつもりなのだろうか? いや、やりやすいってことは手のマッサージってとこか。俺へのプレゼントに一銭もかけないつもりか、コイツは?

 本当にマッサージだったら、俺も誕生日のお返しはマッサージにしてやる。今日び小学生でもプレゼントにしない肩たたき券にしてやる。


「……まだか?」


「ちょっと待ちなさい。狙いを絞っているから」


 なんだよ、狙いを絞るって? 指のツボでも――


「――痛っ!」


 いきなり指に激痛が走る。でも痛みが生じるということは効いているってことだ、マッサージならば。でもこの痛みは、指圧からくる痛みではないのは感覚で判断できる。


「――痛い、痛い、痛い、痛い!」


 ――ホントに痛い。マジで痛い。リアルに痛い。

 視界が閉ざしてからの激痛。もしかして誕生日プレゼントは拷問ですか?


「――ちょっ、待て、待て、待て。どーどーどー」


 もちろん馬ではないので止まりはしない。

 左手をバタつかせて抵抗しにかかるが、手首を押さえられ、ほとんど動かせない。


「――何が目的だ!」


 何? 俺は恨まれているのか? あっ……昨日、冷蔵庫にあったプリンを夕食代わりに根こそぎ(五個ほど)食べたのがマズかったのか? 食べ物の恨みは怖いとは聞くが、今の時代ここまでされるほど深刻な社会問題だったとは。


「悪い、プリンのことは謝るから!」


「……プリン? まさか全部食べたのかしら? ぷっつーん。今日の夕食だったのに」


「おでん、どこいったんだよ!」


「おでんの中にプッツンプリンよ」


「そんな斬新な献立があってたまるか!」


 ゴリゴリ。ゴリゴリ。

 会話をしていても、よく分からない拷問は絶賛継続中である。

 ゴリゴリ。ゴリゴリ。何かが身体の中に入ってくる。熱い。熱い。痛い……

 

「もう……あまり動かないでもらえるかしら?」


「そう言われても、痛てぇ! あっ」


 痛みでお留守になっていたが、俺は何故律義に視界を閉ざしたままにしている? とりあえずアイマスクなどつけている場合ではない。

 空いていた右手でアイマスクに手をかける。


「――あっ、まだ入ってないから待って!」


 久しぶりに聞いた張り上げられた声を無視し、頭の方にアイマスクをずらした。

 真っ暗だった視界に光が差し込む。


「――眩しっ」


 ……でも徐々に目も明るさに慣れていきハッキリ見える、この光景が。

 俺の目に映ったのは、あまりにも衝撃的な事実だった。


「……なっ、何やってんだぁぁぁ、哀!!」

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