デッドスレイブ
青島秀樹18歳。もちろん独身。目つきが悪いことを除けば、やたら顔立ちが整った美青年である。彼は今、苛立ちを隠そうともせず、貧乏揺すりをしながらどこか一点を睨んでいる。
その視線の先には何があるのだろうか。少し見てみよう。………。
15:22
と数字が白く点滅されていた。その光はとても神秘的で怪しく、まるで霧に包まれたような雰囲気をまとっていた。青島はそんな数字をまるで親の仇を見るように睨んでいる。
そして時間の経過に比例しながらその端正な顔を苛立ちで歪ませ、貧乏揺すりの上下運動の速さが増していく。青島が睨んでいる数字は、見ればすぐわかるように時間表示である。時間表示を見て苛立っているということは、彼の苛立ちの原因が容易に推測できよう。
「クッソガッ! あのじじい…14時とか言っておきながら、いつまでたってもこねぇじゃねえかっ! ………。後8分だけ待ってやる。来なかったら奈美で鬱憤を晴らしてやる。じじいの可愛い孫娘がヒィヒィ言っている姿をビデオカメラで撮ってやる」
などと鬼畜な事が口から紡ぎだされていた
青島は待つことが苦手である。そしてきわめて短気である。人を平気で待たせるのに、自分が来る前に人が来ていなければ烈火のごとく怒る。前に付き合っていた彼女も、五分遅れただけでその顔に張り手をかまし、そのまま自分のバイクにまたがって帰ってしまったという。そういう事もあってか、彼はまわりから顔はいいけど付き合いたくない男ランキングナンバー1、というレッテルを貼られるようになった。本人はそのレッテルを張られた事には別段気にも留めなかった。
15:26
彼は何を待っているのか。それはもちろん人である。その人物はサブ老とまわりから呼ばれる存在であり本名は不明、年齢も不詳。外見から推測できることは初老に突入している事と、男であるという事。それ以外のサブ老に関する事はほとんど不明である。青島が仕事の依頼を受ける場合、五割はそのサブ老から仕事の仲介をして貰っている。サブ老が握っている情報量の多さはここ、セントラルシティ随一であり、データーバンクとも言われている。
15:28
「まじで奈美に酷いことしてやる。そしてもうあのじじいから仕事もらわねぇ…」
苛立ちが頂点に達したのか声が逆に冷ややかになる。そして上着のポケットからいつも吸っているファザーズ・アスという銘柄の煙草を取り出す。通称FAと呼ばれるその煙草は
多くの男性から愛されており、特にここセントラルシティではFA吸わなきゃ漢じゃねぇといわれる程に愛されている煙草である。青島はFAと赤い文字でかかれた黒い箱から煙草を一本抜き火をつけようとした。
カチッ…カチッ…カチッ…。
「ちっ…火が切れたか…。くそっ」
15:30
カチッ…シュボッ…。
横から不意に現れた火で煙草の先端から白い煙が上がる。青島はコンマ一秒後に視線を右に移す。その瞬間顔に煙が突然かかった。
「うおっ!」
驚いた青島は慌てて後ろにバックステップをし、自分の腰に下げていた剣に手をかける。
「隙だらけだな糞餓鬼…」
呆れと落胆を含んだ声でそれは言った。白いあごひげと白い髪、威厳という言葉が具現化したようなその顔つきとオーラ。青島は思った。自分が知っているなかでこういう人間は一人しかいない。…サブ老。
「じじぃ…テメェ…」
青島は殺気をその目に込めながらサブ老を睨みつけた。サブ老はにやりとしながら、天に指差した。指したその先にはちょうど青島が先ほど睨んでいた数字があった。そこには15:30と表示されている。そして気づく。15:22の時に自分がしゃべった言葉とそれから推測できることを。
「ふふっ…気づいたか。独り言が多いんだな…糞餓鬼」
「てめえっ! 近くで気配を消して潜んでやがったのかっ!」
サブ老は青島の反応を見て、思わず楽しそうな笑みを浮かべる。サブ老は青島を怒らせるのが好きなようだ。
サブ老の笑みは青島から見たら小馬鹿にされているような気分なのだろう。
「何をわらっt」
「依頼を持ってきてやったぞ糞餓鬼」
青島の言葉を遮り、サブ老はまるで退屈していた、拗ねていた子供に玩具を与えるような声色でそう言って、一枚の紙を投げた。
「てっ…」
ヒュルリヒュルリと紙はうまい具合に青島のところに辿り着いた。青島はそれを手に取り何かをいいたそうにサブ老を見たが、いわずに黙って紙に書かれた字に目を通す。その紙の内容は英語で書かれているようだった。
デッド…スレイブ…。
大文字アルファベッドでそうかかれていた。