6話 テンプレその3 お風呂場ハプニング
青海川家は現在僕の突然のTSにより三姉妹である。
長女の伊奈はそれなりに綺麗な顔立ちの長身な人で、メイクの専門学校?みたいな場所に通っている。現在彼氏なし男運悪いというちょっと報われない女性。
妹の香澄は色々ませてる中学2年生。顔はいってしまえばクラスで3番目とかに可愛い子みたいなレベルだ。いや言い方に他意も悪意もない。事実そうだけれどメイクとかコミュ力とかのスキルに青春を全振りしたい結果ある程度モテる女子になったという女の子の鑑である。こればっかしは可愛くなるために努力して報われてる妹のことを尊敬せざるを得ない。
そして次女がこの僕来夢である。オトコ?いやいや独身主義なので要らないよ。なんだったら可愛い子引っ掛けて百合百合した人生送りたいというのがこの頃考えてる野望ね。母さんブチギレるだろうけど………。
TSモノの母親ってなんか都合のいいポジションだよね。作者が持っていきたい展開に強制的に主人公を運んでいってくれるというなんとも作者アシストの効いた絶妙なスパイス。別に百合TSいいと思うけどねぇ。
『だからこの状況は避けたかったのに…』
一応の流れを説明しよう。時系列的にはプロローグの後。つまり第2回目の買い物から帰ってきてからのことである。2回目の買い物は実は1回目の三日後、即ち退院して3日目の話だ。なんでも明らかに服が少ないとのことで、追加でインテリアやらも買ってこようという魂胆だったらしい。お陰で僕の部屋はさらなるビフォーアフターを遂げた。
さて部屋に戻ってワークを開く。春課題が意外と多く、早めに始めないと終わらないレベルなのだ。入学前の学生になにを求めているのだ高校教師…
ぽろんと突然スマホが鳴り出す。何事かと確認のためKINEをひらく。
→芳樹
【夕飯食いに言っていい?】
うわっバッドタイミング!これは絶対その手の話が飛び出てくる!!!やだな……
ふとため息をついて机に坐り直す。夕日が窓の外で真っ赤に染まって煌々と輝いていた。黄昏ていても時は進む。
…
………
……………………
『来夢〜〜〜芳樹君来てるわよ〜〜』
わあ母さんの嬉しそうな声ー。はやくも未来の息子とか呼び出しそうで怖いです。母さんには男女の友情という概念が存在しないのだろうか?いやそれは世間一般にも言えるだろう。男女が2人で歩いていたらそれはもうカレカノみたいな恋愛脳を押し付けるのは本当に勘弁願いたいものね。
芳樹も芳樹だ。うちの母親の性質を知っているだろうに。なんなのさ嫌がらせなの?ふむいいことを思いついた。そっちがその気なら…
『おおーい来夢!部屋から出てこいよ!!もう直ぐカレーできるんだぜ?』
『ん〜ちょっと待ってすぐ行く〜〜』
『おいおい何してんだよ?開けるぞー』
『いや待ってちょっと!それはだめぇ!!』
ガチャっ
着替えシーンがあると思った?残念ないんだなぁそれが。まぁ僕の小細工はこれじゃないんだけど。なんでこのジャンルの男は人の部屋に勝手に入れんのかね?いや親友だからいいけどさ。
『まさかこの部屋お前の趣味じゃないよな?』
『察っして……大体わかるでしょ??』
『なんかいい匂いする………ファブリーズ?』
『違うよバカ』
アロマだよアロマ!なんかお姉ちゃんが部屋に置くからほっといたら割とこの匂いが好きになって今では無いと落ち着かないのです。男子にとってはこの部屋は理性が効かなくなるから危ない気が……はっ!まさかこれを狙って!?!?あのバカ姉は!!
『ほらでてった出てった!!女の子の部屋に勝手に入るなんて男として最低だよ!』
『え、あ、わ、悪ぃ!!そうだよな、女の子だよな…』
『は?冗談だよ??何まじになってるのさ』
『え?おまっお前!!やっぱ中身はそのままの来夢だな……』
『お?さては芳樹今まで色んな女の子引っ掛けて来た割には部屋に入るのは初めてか??』
僕はその辺にあったハートの形のピンクのクッションを抱きしめて桃色のベッドに座り込む。最近はあの恐怖レッスンのせいかあぐらではなく通称女の子座りという座り方をよくしている。あれ意外と楽なんだよね……。
ベッドの上にはたくさんのぬいぐるみ。まぁこれは男だったころからあったものも含まれている。この姿になってから親父がよく買ってくるのだ。特にチキ○ラーメンのひよこやムー○ン
ぼの○のなどに追加してマイメ○なども買ってくるから部屋はぬいぐるみでいっぱいだ。親父が一人客として店でマイメ○のぬいぐるみ買ってる図とか想像したく無い(笑)
『なんかこうして見るとほんとに女の子のだな…………やっぱ、か、可愛、い』
『おやその反応は図星かな??いやそれはないか。すでに童○すてた芳樹がそれだと矛盾が生じる………』
『お前人に色々失礼なことを……』
『今更ぼくたちの仲でしょ?何言ってるの?』
そういうと僕は棚から漫画を取り出して芳樹に放り投げる。この漫画棚は当初女子部屋には相応しくないとのことで大魔王マイマザーが焼却処分しようとしたのだが必死の抵抗でエロマンガ以外は残すとの下知が降ったのだった。
『それ面白いから読んでみなよ。恋愛漫画だけどギャグがシュールで最高なんだよねー』
『お、おう。そーなのか!ありがとな』
『来夢ー芳樹くーん!!くんずほぐれつも程々にしてご飯よー』
『し、してませんよ!!!』
あのバカ母は何言ってるんだよ…。まぁいい食事の場ではそういうことを言えないよう対策は取ってある。
ピンポーン!
言ったそばから来たか……
『あら?誰かしら?はーーい!!』
ガチャっ
『すいませんおばさんお久しぶりです!!』
『あら絵梨ちゃん!久しぶりーどうしたの?』
『いえ、来夢に一緒に夕飯食べよ?って誘われたので来ちゃいました!』
『あ、ああ…ええ、なるほど……考えたわね…』
『お邪魔しまーす』
完璧な作戦だ。この絵梨ちゃんとは僕と芳樹の幼馴染である『村上 絵梨』のことである。ふわふわな黒髪を長めに伸ばした、おっぱいの大きい可愛い子である。ビジュアル的にはこちらがメインヒロインと言ったところか。溢れ出る生妻感。中学の時、芳樹の弁当は常に絵梨が作ってきていた。絵梨の卵焼きは絶品だ。
ちなみに、僕と絵梨と芳樹は昔からよく一緒に遊んでいた仲だったが、僕のTSに伴い絵梨の記憶では僕はもとから女の子であるということになっているらしい。
さてこの作戦のミソは絵梨が芳樹に好意を抱いているという点である。もう見え見えなくらい絵梨は芳樹にアタックしているのだが、流石はギャルゲーの主人公芳樹!!持ち前の鈍感さで全くもって気づいていない。もう死ねよ難聴系主人公と鈍感主人公はさ!!
無論これには母も気づいている。そのため食事の場では迂闊にその話題は出せない。乙女の事情には一応わきまえているのだアレでも。
『……くく、くくく完璧だ』
『なんか言ったか??てか絵梨が来てるんだが』
『あーうん、僕が呼んだの。久々にみんなで食べよう!!』
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はぁ美味しいなぁ!食事とはこうでなくては!楽しいのが食事なんだよ。決して『2人が付き合えばいいのに〜』『未来のお兄ちゃん!』に対し
『や、俺、そんなんじゃ(カァァァァ)』
『そ、そうだよ!僕男なのに……』
なーんて茶番めいた展開をするためのイベントなんかじゃない。とはいえ妹も母も姉も父も完全にペースを崩されたようでさっきからニュースを見ながら時々会話に参加するくらい。あとは絵梨と僕と芳樹の独壇場である。素晴らしきかなこの構図。
『来夢!明日スタ○いこーよ!新作出たんだってー』
『まじか!?俺も行く!』
『そんじゃあ久々に3人でいこーか』
『3人とも同じ高校に受かってよかったよねー。私今から制服なんて着ちゃってさー』
『へぇ!今度見せてくれよ!絵梨の制服姿』
『絶対可愛いよね、もっかい着てよー』
とまぁたわいも無い話をし続ける。こういう感覚も久々だ。こんな感じで関係が続いていけばいいと思う。でも、絵梨が芳樹と付き合い出したら1人残されてしまった僕とはだんだん遊ばなくなってしまうのだろうか?やだな……でも、仕方ないことなのかな。
『あれぇ??お姉ちゃんもしかして嫉妬??』
『ふぇえ!?いやいやいやこの流れで何故そうなる!?!?』
『え、来夢、何が?』
『いやいや。なんもしてないのに何に嫉妬?』
『……………ふーん。お姉ちゃんそれでいいんだ』
いるいるこういう奴。なんでもかんでも勘違いしてくっつけたがるお節介さんめ!こっちはいい感じの友情を築いているの。人の気持ち勝手に勘違いして踏み込んでこないでよ。
『ごちそーさま』
なんか食卓の雰囲気が微妙になったので真っ先に退出します。続けて絵梨もご馳走様の後お邪魔しましたと言って帰っていった。それを不満そうに眺める香澄は食器を下げると真っ先に僕の元に駆け寄ってくる。
『お姉ちゃんさぁ、絵梨さんに取られちゃうよ?』
『何が?』
『芳樹さんだよ!お姉ちゃんやっぱ好きなんでしょ?悲しげな表情で見てたし』
『あー、あれは違うって。別に僕は芳樹を異性としてみる気はさらさら無いし、絵梨の恋路を邪魔する気も毛頭無いから』
お風呂はいろ……。香澄を追い返すと、向かう先は風呂場。このだるだる普段着は正直楽で助かる。下着についてはあの買い物で買ったフリッフリの勝負下着みたいなやつは一切使っていない。選択の時に地味な下着が見つかると、なんで履かないのだ?と文句を言われるがあれはさすがにハードルが高いのだ。ちょっと男子中学生には刺激が強すぎですねはい。
だんだん下着の扱いには慣れて着た。手慣れた手つきでブラジャーのホックを外し、靴下を脱ぐ。最初は思うところもあったが、だんだんそれも慣れてきた。当初姉と風呂に入り洗い方レッスンをした話はまた後ほどしよう。あとはこのパンツを脱いで………
その時だった。史上最低のオヤクソクと呼ばれる現象が起こったのは……
ガラッ!!
『おーい来夢、俺帰るから………あ、あ、や、ごめ、全然そんなつもりじゃ…』
といいつつ胸を凝視するのやめろ…ほらなんていうか、こっちが恥ずかしくなってくるじゃん!!ねぇなんで黙っちゃうのそこで!!
『と、とりあえず、でてってくれない??』
柔らかい胸をタオルで隠しつつやっと紡いで発した言葉がこれまたテンプレ?みたいな感じの台詞だ。いやテンプレなら『いやぁぁあでてってよエッチ!!!』か。いや恥ずかしいものは恥ずかしいし、芳樹とかには見られたくなかったし。
『し、失礼しました!!!!』
天井を仰ぎ見る。嗚呼ラブコメの神様よ。
殺すよ?




