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33話 体育におけるTSテンプレとドッジボール前編

………とうとう来てしまった。一番、とまではいかないだろうが、学校生活においてTS娘が恐れる数多くのイベントのうち、最も日常的なイベント。逆に何故自然教室以前に無かったのか不思議なくらいではあるが、その辺はひまりヶ丘高校独自のカリキュラムによるものなので割愛させていただこう。



そう、体育である



『は、はははは、お母さん、アンタはなんで僕の時間割を知っているんだ……』

朝登校してカバンを開けると、そこには赤色のジャージ、学校指定の体操着である。

『来夢??どうかしたんですの?』

アリアが心配そうにこちらを見つめる。今日も金色の髪が美しい彼女には、さぞかし赤のジャージも似合うだろう。僕も男子に混じって遠くから鑑賞したかったものである……


『ぼ、僕……体育欠席する……』

『な!?お、お腹でも痛いんですの?』

『3年間見学人生を歩むんだ…』

『なんか東夜みたいなことを言い始めましたわ!?』


普通なら

「女の子たちと一緒に着替えできるなんてラッキー、合法的ィ!」

とでも思うのだろうか?これぞTSの醍醐味ッ!って感覚で楽しめたらどんなに良かっただろう。やっぱフィクションの主役たちはメンタル強すぎるよぅ。まぁそりゃ見たいことは見たい。そこは正直になろうじゃないか来夢。だがいいのか?僕は男なのだよ?一応中身は男の子なんだよ?ということから来る罪悪感が憂鬱さを増大させている。


そう、青海川来夢はヘタレである。状況を豪胆に構えて楽しむことなど出来っこないピュアハートの持ち主なのだ。表面上は余裕を取り繕う僕でも、ヘタれる時はトコトンヘタれる。



憂鬱だ。寝よう。

……


…………


…………………

『来夢っ!次体育ですわよ?起きてくださいまし!』

『むははははッ!深淵に眠りし乙女よっ!今その力を解き放てぇぇぇ!!』

……汽笛うるさい

『……ふぁぁぁ、どうせ汽笛も寝てるくせに。ん?あれ?一限は??』

あたりを見渡す。どうやら鐘がなった直後のようだった。現代文の授業だったはずだが。

『終わりましたわ。爆&睡でしたわよ?まぁクラスの大半がですけど…』

『ぬかった!一限は催眠術師の授業だった!こ、心の準備が…』

国語教師、渾名は催眠術師だ。月曜の一限にあのお爺ちゃんの授業はキツすぎる

『さ、行きますわよッ!引きずってでも連れて行きますわ!真知ッ!来夢のそっち持ってくださいましッ!』

『了解よっ!』

『い〜〜〜や〜〜〜だ〜〜〜』

ただをこねるように抵抗するも、正直ほぼ諦めている。クラスの男子たちが奇異の目でこちらを見ているのももうどうでも良い。落ち着け来夢、お前は女子風呂にも入ったじゃないか。


「……青海川って体育苦手なのかな?」

「ワカンねぇけど……なんか可愛いわ…」

「アイツ、自転車通学だから、チャリから降りる時ちょっとパンツみえるんだぜ?知ってたか?」

「んだと!?てめぇ!!青海川さんのぱ、ぱ、パンツ、みたのか!?みたんだな!?」

「殺せッ!コイツを殺せェェェ!」

「や、やめっ、、ギャァァァ!」


なんか教室で揉め事が起こっているが全く耳に入ってこない。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだぁあ!

……


…………


…………………

更衣室か、、正直始めて来た。何故なら男子は基本教室で着替えるからだ。そんな中でナヨナヨしてるだのなんだの馬鹿にされた記憶がある。

2組の体育は1組と合同だ。しかし更衣室自体が狭いため、2つに分割して割り振られている。旧男子更衣室が1組、2組はそのまま女子更衣室だ。


………パッとやってパッと出よう。なんならパッと光って咲こう。下からも横からも下着姿を覗かぬよう。

プチプチと制服のボタンを外していく。最初の買い物で派手な下着を選ばされたが、それ以降なんとか普通な下着の獲得に成功した僕。おそらく標準的にみんなが着用しているであろうブラジャーである。な、なるべく他の人と目を合わせぬよう……

『来夢〜〜〜!!着替えるのはやーい!』

『い、苺!?ひゃっ!!な、なに!?なんで胸触ってるの!?』

『だって来夢が隅っこに固まって着替えてるんだもんっ!触らせろ〜〜!!』

『ひゃぁぁぁ!!ちょっとっ!!どこ触って……んんッ!!』

苺が絡みついて、容赦なく胸を揉みほぐしてくる。今下着がずれてて、生で触られてとても変な気分だ。……っていい加減これはヤバイ…


『おやぁ?来夢、顔真っ赤だよ〜??』

とうとう苺が僕の耳を噛み始める。こ、これはキマシッ!って第三者目線から興奮してただろうが、今の僕はされる側である。なんとかして苺の方を向こうとするも、向こうには華の女子高生たちのお着替えシーン。下手に振り向けない。だが、止めねばならない。それでも勇気を振り絞って........



『ひゃ、ひゃめ……。ほんとに、、らめ…だから………やめて……』



苺をやっとのことで直視した時には、もう自分で分かるくらい涙目になっていた。呂律も回らない。うう、僕のクール(笑)イメージがぁぁ…


すると、苺は一瞬固まった。そして、ユデダコのように顔を真っ赤にして、、

『あ、ご、ごごごご、ごめんっ!!』

いきなり手を離す。なんなのだろう。こちらはまだ胸の動悸がおさまらない。

『ちょ、な、な、な、』

よく見ると、近くですでに体操着に着替えたアリアがわなわなと震えていた。

『あ、アリア??』


『な、なんですの今の反応!?か、可愛すぎです!こんちくしょうですわッ!!』

『うわぁぁあ、アリアまで抱きついてこないでッ!!っていうか、僕にちゃんと着替えをさせてぇぇぇ!!』

『ほら、苺なんか余りの来夢の可愛さに、イケナイコトしてる気分になって顔真っ赤ですわよ!?』

『気分じゃないよっ!イケナイコトことだよこれ!!』

アリアを引き剥がしつつ、なんとか体操着に着替えることに成功する。授業まで残り2分だった。

『い、行くよアリア!!てか苺もぼーっとしてないで!時間!マジでヤバイから』

『あ、う、うん、そだね…』



「な、なんか、、来夢ちゃんヤバくなかった??なんか女のアタシでも今ドキドキが止まらないんだけど……」

「それな…。百合に目覚めちゃったらどうしよ。いつもクールな子がイケナイコトされてる時の赤面顔……そそる…」

「おーい、戻っこーい!まぁ、アタシもちょっとヤバかったけど」

「うちのクラスの男子たちに聞かせたら泣いて喜びそうなシチュだったわね…」

……


…………


…………………

『来夢、大丈夫?』

真知こと「ママ」が心配そうに寄り添ってくる。落ち着く〜。でも女の子に触れられるのはまだ慣れない…。

『ごめんね来夢。なんか、興奮してた。変なことしちゃって…ほんとごめん』

『苺………もうやめてね…。限度と節度を持ったキマシにして……』


はじめの体育は所謂「体育講義」というやつだ。ちょっと体操してから、すぐ先生のお話が始まった。

『1組の子、可愛い子多いわよね。相川くんもいるし…』

真知は最近よく芳樹の話をする。で、汽笛にぷよぷよのお腹をつねられながら、

『色恋に現を抜かしておる場合かマチルダ元帥!』

とかなんとか言われている。あれ?称号変わってね??とか思いつつ、ボケーっと話を聞く。




「それじゃぁ自由時間にします。あと30分しかないけど、女子は1体 (第1体育館)男子は2体で自由に運動してください」

『ねぇねぇ来夢!』

ボケーっとしていると絵梨が近寄ってきた。よく見ると芳樹ハーレム勢も一緒である。

『ドッジボール、しない?1組と2組で対抗試合!』

『ん、いいけど、っていうかみんなに聞かないとね。お〜い!』


……


……



………で、なんでこうなった?

『うおおおおお!!来夢ファイトぉぉぉ!!』

「敦うるせぇ!てかポニテ可愛すぎね!?うなじがエロイんだけど」

『く、黒崎さん!頑張れぇぇ!』

「お、達矢頑張るねぇ。俺らは黒崎さんとの仲、応援するからなっ!」

『なんか、、凄いことになってるね、東夜』

『………俺ら2体行かなくていいのかよ』

「青海川と月潟の運動姿が見れるんだぞ!?なんで2体に行かにゃならんのだっ!」

「下着透けないかな〜」

「ぺろぺろしたい」

「おっしゃ豚箱いくぞお前」




『………アイツらも2体でドッジやれよ』

『来夢………なんで受けちゃったんですの』

『いや、誰もこうなるなんて予想してなかったでしょ』

1組2組の男子たちが今、1体の1コートを取り囲んで熱い声援を送っている。あまりのガチっぷりに2組女子だけでなく、1組の絵梨たちもドン引きである。

『…あ、あのさ、来夢。やめる?』

『や、ここまできたらやらないと寧ろ暴動が起こる』

『じゃぁ、やろっか…』

絵梨の顔が引きつっている。とは言え、芳樹も見ているのだ。絵梨だって満更でもないのだろう。でも普通こういうのって男子がプレイして女子が応援するもんだよね??おかしくない?僕はいいけど、誰が男子の前で怪力を晒したいなんて思うの?


「ぷ、プレイボール!!」


こうして熱いクラス対抗ドッジボールが始まった。あとそれは野球や……

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