32話 自然教室10 講義とバーベキューとサブヒロイン
『頸城先生って社会科でしたよね?話が、あるんですが…』
夕食の後、お風呂については今回はパス、ということで、東夜と2人で社会科の頸城先生のもとを訪れた。件の白場家である。
頸城先生は老年の白髪の先生だが、一部でイケオジとして評判である。実際かっこいいと思ってるということは内緒にしてくださいな
その要件というのはこれ。先ほどの騒動で、東夜が持って帰って来た白場の遺産。その公開に関する相談である。
「これは、、驚いたな。文化財としてこれほど保存状態の良いものが発見されるなんて。これは、青海川くんがかい?」
『え、あ、はい、、えと、そういうことに、なりますね…』
嘘ですごめんなさい東夜の発見です…
『遭難したあたりの谷底に祠があったらしいんです。俺は見てないですけど、白場合戦の戦死者の慰霊碑じゃないかって、、』
ハハッ見てないとか白々しい嘘をよくもまぁ
「なるほどねぇ。確かにこれは……本物なら資料集あたりの記述が変わるレベルの物だね。この辺の歴史は習っているかね??」
『いや、流石に大まかな歴史しか中学では習わないので』
『ぼ、僕もです』
「そうか。白場家はね、東国将軍家の使者を殺し、奥州の入り口、下野の太守に攻撃を仕掛けたことから、「朝敵」の烙印を押されているんだよ。ひまりヶ丘高校のあたりの地域には城跡が残っていてね、そこは白場の城だったんだ。白場家最後の当主:白場赤総はそこで家臣と共に最期を遂げた。この地はそれ以来東国将軍家の直轄領として治められてきたんだ」
『………でも、その下野への攻撃や、使者の撫で斬りが東国将軍家の仕組んだ罠だった…』
「そうだ。この書状が正しいのならば、白場は幾度となく東国将軍家への従属を示すような文を送っていることになる。そしてこちらの書状では、白場に潜り込んだ刺客が、使者を殺したということが記されておる。その刺客の名と、状況証拠も全て」
その後は取り止めのない話、というかまぁ白場家の歴史に関する話をした。東国将軍家の情報操作で、白場に関する資料はあまり残っていないため、東夜によると頸城先生の話は貴重らしい。僕は馬鹿なのでよくわからなかったが。
それと気になるのは、東夜が「白場アカギ」という人物について熱心に尋ねたことだ。何か思い入れでもあるのだろうか??そんな人物は、現存する資料には存在しないとのことであったが…
『ありがとうございました。何か進展があったら、その時はよろしくお願いします。市のお偉方とかその辺の話色々と』
「ああ、レポートに関しても色々協力しよう。いやはや、まさか君がこんなに熱心な生徒だとは思わなかったよ。これからも期待しているぞ出雲崎』
東夜と頸城先生の話が終わり、東夜に促されて僕も部屋を出る。終始眠くて何度かカクンッとなってしまった。うぅ…
……
………
……………
『青海川、お前寝すぎ…』
『うっさい。どうせ僕は馬鹿ですよぅ』
『……成績自体はよかったろ…興味ねぇとすぐ寝るのな』
『学年順位48位が果たしていいのかどうか…。そういう東夜も21位でしょ?なんかムカつく』
『従姉妹が馬鹿みたいに頭良いからいつも比べられるんだよ。負けないようにって頑張ったんだけどな……どうやったって俺の頭は文系脳なのに…』
『へ〜、僕も文系脳だから、お揃いだね!2年生も同じクラスなれるかな〜』
なんて、近い距離間で笑いかけてくるもんだから、俺としては顔を背けることしかできない。
『来夢〜〜〜!!!東夜〜〜!!』
『あ、アリアだ。アリア〜!!』
『随分長話でしたわね。一体なんの話をなさっていたんですの?』
『………まぁ、取り止めのない世間話的な、感じだな。って、、月潟はふ、風呂上がり、か?』
『そうですけど……東夜?何で顔を赤くしてるんですの?』
『き、気のせいだろ。多分。ほら、青海川、待ちに待った女子会だぞ行ってこい』
『待ってないよ!?僕これからお部屋の風呂だよ!?』
『……さよけ。んじゃぁ……また明日な』
俺は、やはりいつものような無愛想な表情しかできなかったけど、かろうじて手を振ることはできた。笑顔って難しい…
『うん、おやすみっ!!』
それと対照的に、やはり太陽のような笑顔を見せる青海川は、とても輝いて見える。さて、出雲崎東夜はクールに去るぜ(笑)
……
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……………………………
『ふぅ…』
部屋のお風呂はディ○ニーじゃあるまいし、そんなに大きなものではない。汗ばんだ下着を脱ぎ捨て、肌を晒す。鏡の前には胸を押さえた茶髪の美少女。なんとなくだが、また大きくなった気がするような……うん、気のせいだ、気のせいに違いない。
『はふぅぅ〜〜♪ひもひぃ〜』
呂律が回らなかった。ひもひいってなんだ。
……結局なんだったんだろぅな、あの祠も、無数の手も、真っ赤な森も。東夜は何か見たのかな?
なんて考えながら、髪をかきあげる。水滴がポタポタと垂れて、とても色っぽい表情が鏡に映る。一瞬ドキッとしてしまうが、自分なので特に何も思わなくなる。きっといつか完全に慣れてしまうだろう。
『今度、お礼しなきゃな…』
今日は東夜に助けられっぱなしだった。いつか、僕も東夜を助けられたらいいなって本気でで思う。なんか、不思議な気持ちだ。胸を抑えようと腕を動かしたが、擦りむいた指が少し痛かった……
………
……………
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『かぁぁぁ!!もうおしまいだべ!?自然教室ぅぅぅ!!まぁアバンチュールはなかったけどっ?俺ら男子の仲はめっちゃ深まったもんなっ!!』
本日も越路 敦は最高にうるさい。なんなのかな、こいつ前前前世はサンシャ○ンかなんかだったの?……いや、生きとるがな…
『ふむ、3日目もラジオ体操に始まり、講義講義………3日目要らんのではないか?』
川西達矢が余計なことを口走りました…。うちのクラスの男子陣は色々ダメなところが多すぎるのん。
『まぁ、この三日間でひまりヶ丘の校風をみっちり叩き込まれたからねぇ…まさか校歌練習と応援歌練習、挙句に国歌斉唱までやるとは思わなかったよね…』
『なんだったんだ3日目の午前……』
小国翠花、出雲崎東夜も、声を揃えて不満を述べる。まぁ彼らの言い分もわかる。何故なら昨日の夜、9時からのキャンプファイアーが雨で中止されたからだ。突然の大雨に教師陣の対応がぐだったためその時間はほぼ何もせずに終了した。小学生、中学生なら代わりにキャンドルサービスなどというものをやるらしいが、生憎高校生はそんなサービスない。というか、事前準備がなかった段階で無理である。
『まぁまぁ、このあとは待ちに待ったバーベキューだし…』
『ていうかそれしかないですわよね今日の行事。なんで午後も講義入ってるんですの?これ以上一体何を学べと??』
『落ち着いてアリア、、確かに午前中の講義は酷かったけど』
〜この地域の虫たちの生態系について〜
これは女子だけでなく男子からも相当不評であった。バーベキュー前にあんな気持ち悪いもの見せつけられたら食欲も湧くまい。講義内容自体は真っ当なもので、興味をそそられる人も多かったのではないかと思うが、何もご飯前にしなくてもよくない?
2日目同様、僕と黒崎真知、五泉汽笛、小国翠花が中心となってクラス分の肉や野菜をを焼いていく。うん、肉は安いがまぁ悪くない。なんて思っていたら、吉田苺の「あ〜ん」攻撃。
『はい、来夢、あーーん!』
『う、あ、あーん』パクッ
ムグムグ、ふむ、悪くない。特に可愛い子のあーんは最高である。苺のニコニコした表情もまた良い。昨日は心配かけちゃったからね……
『ねっ、写真撮ろうよ!!』
『ん?自撮り棒かなそれ?初めてみた』
『ハイッチーズゥっと!キャーー可愛いい!』
わー、目がでかい。なんだこのアプリ……
そうそう、なんでこんなにフルネームで出しているかというと、最近みんな出てなかったからそろそろ忘れてるかな〜って思ったからだ。何が、とは言わない。
「女子で写真撮るよー」
「ほら、クラス集まれー」
「ちょ、これ「ツッター」のトプ画にしよっ!」
「じゃあ俺も「KINE」のホーム画面にするわー」
と、バーベキュー中に写真撮影大会が始まる。あの、肉焼くほうの気持ちも考えてね……
『ラーイムッ!』
『わっ!びっくりした〜。絵梨か。あ、芳樹も』
『俺たちで写真撮ろう!オバさんにも見せたいしな』
『りょ』
パシャっとシャッター音が鳴る。それぞれの思い出を形作っていくよう、写真が撮られていく。勿論新聞部のメンバーでも。東夜はやはり無愛想な表情をしていたが。
楽しかった。とても楽しかった。全力ではしゃいでいた。だけど、この時完全に忘れていたのだ。
自分がある種ギャルゲーじみたこの世界にいることに。そしてその対象は自分なのだということを。
何が起こっているのか。なんの力が働いているのか。そんなことそもそも考えてなどいなかった。世の中はどうしようもなくて、自分ではどうすることもできなくて、その一瞬を、自分で選択できない時が存在するなんて、、きっと知らなかったのだろう。あの子も、僕も。
さあ、覚悟はいいかいサブヒロイン??物語の続きをしよう。選択肢の外なんて存在しない。お前はもうこの呪いの渦に飲み込まれているのだから。カラカラッ。
まだおわんないです。ていうかこっからです。が、更新は多分3月まで不定期です。それ以降はめっちゃやります。




