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28話 自然教室6 ポーカーフェイス

『………さて、場所を教えてもらおうか?見附』

ゴールに向かう正規ルートの途中、山の中腹あたりで、ようやくその4人組に追いついた。今自分がどんな表情をしているかは客観的に見ないとわからないが、きっと無表情なんじゃないかと思う。それはきっと感情が死んでるとかではなくて、単純に感情が鈍いのだ。そしてそういうのは、交渉ごとに向いているといえよう。俺きっとポーカーとか強いんじゃないだろうか?友達いないからポーカーやったことないけど……

「は?あんた誰?つかなんの話?」

おっと、名前すら覚えられてない……。流石にちょっとショック…

「ほ、ほら、同じクラスの出雲崎くんだよ」

「あー、影薄すぎてわかんなかったわ〜。で?なんのよう?あ、あたしたち、急いでんだけど」

『ああ、俺も急いでるからなんの問題もない。要件はすぐ終わる。理由はどうでもいいから、、場所を吐け』

見附柚子の顔が強張るのがわかる。だがそれも一瞬のことで、次の瞬間にはその表情は勝ち誇ったような高慢ちきな態度として現れた。

「は?クソ陰キャがなに言ってんの?あたしが何か?」

『……場所を吐け、青海川はどこだ?』


沈黙。俺は質問を変えない。彼女たちによる行動の結果が青海川の行方不明の原因だと確信しているからだ。本人たちは軽いいたずらだったのかもしれない、、が、その結果としての責任を負うべきは彼女たちだ。だから、質問を変えない。

『レコーダー………ご丁寧に落としていってくれたな。録音するときふざけてお前らの声入ってるぞ?幽霊のしわがれ声だけだったらまだ誰だかわからなかったんだが………NICEうっかり』

「!?」

女子たちがポケットやら何やらを確認しようとするが、その前にその問題のレコーダーを真上に掲げる。見附のお付きの女子たちが息を飲むのがわかる。杜撰すぎるぞマジで…

見附はしばらく沈黙してこちらを睨んでいたものの、俺に変化がないことをみてとたんに無表情に戻る。どこか開き直った顔、何か見透かしたような顔。


「…………で、、何?ちょっとしたイタズラで青海川さんが行方不明になりました。それはあたしたちの所為です〜ってそれを証拠に先生にでも言うの??バカじゃねーの?確かにちょっと脅かしたのはあたしたちだよ、ああそうだよ。ちょっとした出来心?いたずら心でね?私たちぃ〜〜そんなことになるなんて思ってなかったんですぅ〜〜ごめんなさい〜〜って、、それで終わりだろ?流石陰キャだな、ウケるんだけど」

『だから、理由も言い訳の仕方もどうでもいいって言ってるだろ。俺が知りたいのは場所(・・)だよ。青海川の行った場所だよ。お前らは知ってるだろ?俺は全く見当がつかないんだよ』

「あたしたちも知らない……っていうか、忘れちゃったっていうか〜」

見附はとニヤケ顔でそういう。まあそれなら仕方ない。強行手段というか、最後の手段というか、そういう手段に出るだけだ。

『いや、お前らは青海川の方に向かったはずだ。それを見たし、なんなら


ちゃんと動画も撮ってある』


再び彼女たちの表情が強張る。自己申告したようなものじゃん…ポーカーフェイスを忘れるなだぞ?

「!?」

「ね、ねぇ、ゆっちん、」

「は、ハッタリだろ?というかあんたさっき青海川さんの行った方見てないって言ったじゃん」

『あぁ、場所は知らない。青海川が今どこにいるのか全く見当はつかない。だが行った方向は知ってる。そしてみんなが逃げた後でそっちの方向まで行ってみた。だけど全く青海川は見つからない。だから、同じ方向に向かったお前たちに聞いている。アーユオーケー?』


一歩ずつ距離を詰める。彼女たちもじりじりと後退するが、それより速いペースで歩みを進める。

「…………あたしたちが何かしたっていう証拠でもあんの?」

『ないね。だけど、青海川と同じ方向に向かって、最後に青海川を見たかもしれない人物がお前らだ。そう先生に証言するだけで、お前たちは多分先生たちに青海川の場所を聞かれる。まぁ先生たちが青海川を見つけるだろうな。そんで青海川が、お前らのことを証言したら、それで終わりだ』

完全に勘ではあったが、俺はこいつらが青海川がいなくなった瞬間を見たはずだと思っている。それは取り巻きの女子たちの表情からだいたい読み取れる。だが、青海川がすぐ見つかる確率はとても低いはずだ。霧の影響で捜索隊が探しづらいというのもあるし、戻った時に直ぐにこいつらが本当のことを証言する保証がない。つまり、ここで、この場でこいつらから場所を聞き出すことが重要なのだ。

『もしかしたら、命に関わることかもしれない。別に誰が悪いとかそういうのは抜きにしよう。あんたらにある程度良心と常識があるのなら…』

距離を詰め、見附を木の幹まで追い詰める。見附は怯えた表情ながらも、必死にこちらを睨みつける。それでも明らかに怯えが見て取れた。




ザシュッ!!




大樹に、彼女の背後の大樹に果物ナイフを突き付ける。これで折れたら笑えるな……まだ明日使うんだからな??


20センチも差がある身長。震える見附を見下ろし、精一杯の眼力で睨みつける。こちらはいつでもお前に危害を加える気があるぞ、といったアピール。多分今俺を客観的に見たら、不良高のDQNそのものだ。通報されそう。俺を見る妹の目はさらにゴキブリを見るようなものになるだろう。うわぁ、それ最悪。


『いいからさっさと吐け。てめぇの行動の理由とかマジでどうでもいいから、場所を言え。人命かかってるかもしれねぇんだぞオイ』

「ひっ!!」

俺の左手、俺の手に収まっている鋏が見えただろう。色々問題になりそうだから他の奴らには見えないように見附にちらつかせる。さらに怯えた表情をする見附。だが、最初から俺の目的は見附から聞き出すことではない。リーダー格である彼女を怯えさせることに目的がある。ここまでやれば後は、



「なぁ、あんた、あぁ名前しらねぇ……。あんただよ」

「ひぁっ!!あ、あたし??」

このグループの中でいつもビクビクしてる奴。眼鏡をかけたおとなしそうなおかっぱの少女。派手な見附のグループとは思えないこの少女は、終始ビクビクした表情で見附や俺を見ていた。

「場所、わかるか?直接は見てなくても、見附あたりから聞いてるだろ?多分」

「あ、、う、うん、はい………」

『案内、よろしく』

「わ、わかった……」

怯えたまま木にもたれかかる見附と、その取り巻き2人を置いて、歩き出す。あぁ、最後にもう一度、3人を睨みつけてこう言う。

『先に戻れ。取り敢えず青海川見つけてから、話はそれからだ』

……


…………


…………………


その少女、山葵谷(わさびだに) (すもも)の案内で、青海川が消えた、と思われる場所まで来た。こんなところにこんな深そうな崖があるとか聞いてないんですけど…学校の安全確認の杜撰さ故か、それともこんな場所はそもそもなかったか、のどちらかだと思う。完全なコース外、明らかに山奥で人が立ち寄らない地域。ここだけが、どこか異次元のように思われる。だから、こんな場所はそもそも誰も知らないのではないか?という思いが強くなった。つまり【神隠し】というものを疑っているのだ。この街の神隠しの噂というのはあとを絶えない。だからその手の非科学的な現象について、俺は割と普通に信じていた。その地域特有の雰囲気がそうさせたと言っても過言ではないだろう。


「あの、これ、本当に降りてくの?」

『別にお前は来なくていい。取り敢えず戻っとけ、、なんとかするから』

「な、なんとかって、ここどれだけ深いか分からないのに!?」

………自分の発言に色々気づけよ

『そのどれだけ深いか分からないところに青海川が落ちたのに、それを黙って見捨てた見附の感情が俺には分からんね…。ま、その辺は後で聞くとして、なんとか迂回して降りる道を探す方が得策か……』

既に山葵谷から事の全容を聞き出している。おそらく落ちてから30分はたっただろう。今からで間に合うか?いや、間に合わせる。

「む、無茶だよ!!」

『……かもな。でも探さないと始まらない』

まだ何か言いたげな山葵谷を置いて、迂回路を探して走る。宿泊棟の反対、つまり南側に向かう道は緩やかな勾配になっていて、段々霧が濃くなっていくのがわかった。ある程度降ったところで、せめて深さだけでも見れないだろうか?と思い、そこらへんからバカ長い枝を拾って来て霧に向かって突き刺す。ここから先は沼地であまり足場がないので、ここいらで崖に飛びこまなければならないのだ。が、枝は突き刺さらない。これは詰んだな………




『ねぇねぇ、お兄ちゃん……』

おっと、とうとう妹の幻聴も聞こえて来た。西蘭(せら)が俺のことをお兄ちゃんと呼ぶとか何年ぶりだろ。お兄ちゃんもうダメかもです…

『違うよお兄ちゃん。ここだよ?』


ハッとして振り向くと、そこには赤い着物を着た少女がいた。血のように真っ赤な着物を着た少女の笑顔は、これが予定調和だ、とばかりに無邪気で、そして嬉しそうな笑顔だった。


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