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24話 自然教室2 悪口と恋バナとそして………

さて次に起きた時、既に朝で雀がちゅんちゅん、、なんてことはありませんでした。え?誤解が生まれるからやめろって?僕純粋な男子高校生なんでちょっと何言ってるのかわかんないですね。

『来夢、具合が悪いのに無理にお風呂に連れ出して……わたくしの責任ですわ…。本当にごめんなさい……』

『いや、あはは、ちょっとのぼせただけって保健の先生も言ってたから大丈夫だよ…。んで、その、服を着たいんだけど……』

林間学校では、夜間のみ生徒の私服の着用が認められている。寝巻きみたいなものなのであまり派手なものを持ってくる人間はまずいないとか。僕の場合、お母さんがゴスロリロリータとか入れようとしてたから全力で止めさせていただいた。

『えぇ、来夢に似合うものを一応持ってきましたわ。苺が………』

『来夢って、やっぱぁ〜こーゆーフリフリのも似合うと思うんだよねぇ〜〜』

そう言って苺が出してきたパジャマは、正直いうと角砂糖たっぷりキャパオーバーに吐き出しそうなほど甘々なロリータ風だった。そのピンクと白のしましまのニーハイはちょっとレベル高すぎませんかね?

『うん、いうまでもなくヤダよ?』ニコッ

『うん!そういうと思ったからこっちが本命!』

で、次に出てきたのはネコミミ付きの黒パーカーとシャツ、デニムのショートパンツ、、黒のニーハイ。因みに今バスタオル姿なので、下着まで持ってきていただきました。まぁ、これならなんとか…


〜少女着替え中〜


『うん、これいい。なんかすごい動きやすいし、スカートじゃないし』

『来夢のそれ寧ろスカートよりエロいッ!あぁもう野良猫女子がそんな格好したら可愛いに決まってるって思って大正解!!!あ、でもそれ一応来夢のカバンから持ってきたやつだよ?』

『おお、お母さんも偶には気がきくな…』

鏡の前でターン。ちょっとぶかぶかなのは狙っててやったのか知らないが、控えめに言って超可愛い。お手軽に着替えられるし、こんなに可愛いなら部屋着にでもしようかなこれ。


『さ、お部屋に戻りますわよ!今頃みんな女子とーくに勤しんでいるはずですわ!』

『え、戻りたくない…』

『よっしいくよ〜』

『無視か…』


休憩部屋から出ると、もうフロアに人はあまり残っていなかった。時間帯的には今は5.6組の風呂だけど。途中すれ違う男子の目線が凄く気になる。じろじろと見られるのにはまだやはり慣れない、というか慣れたくはない。

『おや?来夢、可愛い格好をしているね』

角を曲がるとそこには缶ジュース片手に不思議そうな表情を浮かべる乙女ゲー主人公の分水響也(ぶんすいきょうや)がいた。サラサラの金髪は風呂上がりのためなのか少し湿っているように見える。モデルの風呂上がりのショット。

「お?おお!青海川さん!なかなか出てこないからなんかあったんじゃねぇかって言ってたんだよな」

隣の男子生徒が分水くんに話しかける。ん?なかなか出てこない?

『あの、なんで僕が出てこないことを知って…』

「うわぁぁあ!!なんでもねぇって!!」

『どうせお風呂上がりの女子を鼻のばして見てたんでしょこのどスケべッ!』

『苺、その辺にしてあげて…』

気持ちは痛いほど分かるからさ…


「やばくね?青海川さんのあの格好。ちょっと今から告って沈んでくるわ」

「やめとけって!この林間学校を失意のまま過ごすのはさぞ辛かろうよ」

「あの子二組の女子だよな?やべぇ、この時間に外出てて良かったわ〜」

「つかあの子相川の幼馴染だよな?」

『ん?あぁ!?来夢!?』

『あれ、芳樹じゃん。久しぶり〜』

ギャルゲ主人公と乙女ゲー主人公がまた同じ場所に揃ってしまった。

『お、おま、来夢、、その格好は?』

『ん?いや、私服おっけーじゃん。可愛いでしょ?』

ちょっと芳樹をからかってみる。最近といっても数日かそこらだが、顔を合わせていなかった気がする。そうそうこれだよこれ、この芳樹の真っ赤なお顔を拝むことが楽しくて仕方ない。気に入ったのなら今度この格好で家に上がりこんでやろうかな。

『か、可愛いって……いや、確かに可愛いけど』

『おやおや、芳樹の顔面の色素が面白いことに』

『う、うるせぇ、からかうなっ!』

そう声を荒げる芳樹にデコピンされてしまう。ヒリヒリと伝わる痛みが、目の頭でくすぶる。あまり不快感はなかった。

『芳樹〜ジュース買いに行こうよ〜!勿論YOUの奢りで』

『おまっ……まぁいいか。奢ってやるよ』

『さっすが〜。じゃあアリア、苺、すぐ戻るから』






『俺絡みでトラブってる?』

久々に二人きりになったので、思い切って相談してみることにする。今までにも芳樹絡みでのトラブルは数知れずあったのだが、何しろ今は状況が違う。僕の性別が女である以上、芳樹との仲は暫くの間は誤解を生むだろう。僕はここ2週間で女子という生き物のめんどくささの一端を理解し始めていた。芳樹がモテるのが悪いといって仕舞えばそれまでなのだが。

芳樹に買ってもらった桃のジュースに口をつける。酸味の効いた安っぽい桃の味が口の中にひろがり、お風呂上がりの乾いた口の中を潤す。近くのソファに二人して腰掛けると、僕は再び口を開く。

『まぁ今までにもあったけどさ、これから色々注意して欲しいなぁって…』

『何をだ?』

『死ね鈍感。芳樹の色恋絡みは僕の悩みの種の50パーを占めている』

『残りは?』

『マイマザーの女の子レッスン』

『大変だなホント…』

『まぁ、お陰で最近は不自然なことなくなったでしょ?』

『……確かに、ここちょっとだけで凄く女の子らしくなったと思う……。なんか普通に女子と話してても特に違和感なさそうだし、、うちのクラスの奴らも来夢のこと可愛いって言ってる奴多いしな』

『うへぇ、それは困る…』

『俺も、来夢が俺の知ってる来夢じゃなくなっていくみたいで…ちょっとな…』

芳樹は少し笑って、こちらをみる。その表情に寂しさはあまり感じられなかったけど、芳樹は正直な奴だから、それは本心なのだろう。1組の評価とかどうでもいいけど、芳樹の評価は変わらないままであって欲しい。絶えず劣等感を抱きつつ築いてきた関係に、僕は確かな自信がある。芳樹がどんなに凄い奴で、どんなに鈍感で、どんなことを思うか、それは僕の劣等感が全て知っている。


僕はいつか、人間として芳樹と対等な立場に立ちたい。そこに追いつくまでの劣等感がある限り、僕と芳樹は親友であり続ける。そして、その対等な立場に立った時でさえ、親友であることに変化はないと信じている。

『ま、1番の親友は芳樹だから大丈夫だよ』

不意に放った一言を聞いて、芳樹は少し驚いた顔をした。そんな驚くようなことを言ったつもりではないのだが。僕はそれをちらりと横目で確認してクスリと笑う。嗚呼、桃がとても甘ったるい。

『ふぅ、じゃあこれ飲んどいて。僕戻るから』

『は!?いや、お前これ全部飲んでけよ!いや、待て待て待て、だってこれ飲んだら……間接…』

『は?いや、甘くて無理だからお願い。じゃぁまた明日、おやす〜』

『いや、おい!!これ!!』


また真っ赤になってましたなぁ。ピュアピュアなその心を覗いた時は、僕は少しだけ優越感に浸ることができる。いやぁ、完璧超人の芳樹の赤面写真とか1組の女子に高く売れるんじゃないか?

あ、オールウェイズその状態だからレア度低いかな

……


………


……………

『おかえり〜』

『今クラスの女子で集まって女子会しようって話になっててさ〜来夢も来るよね?』

え、普通に行きたくないんだけど……

『え、あ、ええと、う〜ん……』

『よし決まり!じゃあ隣の部屋行こっ!!』

『ええ………』

これもほぼ強制なんだよね〜


「あー苺来た〜〜』

「ヤバっ!来夢ちゃんのそれマジで可愛くない??抱きしめちゃいたい!」

『な!?ちょっ、苦ひい…』

すでに2組の19人の女子は一つの大きな部屋で輪を作って座っていた。それぞれゆるゆるした私服を着て、とても最高な光景ですっ

『んじゃ、全員きたし、女子会しよっか〜』

「オッケー!」

「なんか班つくっちゃうと他の班の子と話し辛くてさ〜〜」

「それな〜♪あたしも話したい子いっぱいいるのにさ〜」

「恋バナとかしたいじゃん?やっぱ定番でしょ〜」

くっ、ついに来てしまったか。さっきから汽笛がガチガチ固まっているのが可愛いので、それを眺めてなんとか凌ごうと思っていたが、この手の話題はクラスの中心の女子からちょっとずつ回って来る。本当に嫌な話である

『えー、じゃあクラスの男子の順位づけしよ☆』

「うわっ桜えげつな〜」

「てか分水くん一択でしょ〜」

「敦とかバスでまじでしゃばってたもんね〜」

こらやめなさい悪口グループ。明日そのことを密告する奴が出てきたら早速2組が瓦解するぞい。まぁたいていの場合は密告しないけどさ

『分水くんあんま学校来れないし、やっぱ1組の芳樹くんじゃね?』

うわっやばいよこの話題。よくもやったな山古志林檎(やまこしりんご)!お主カラコン取ると誰だっ!ってなるんだけど。メイクって凄いんだね


「芳樹くんマジでかっこいいよねー!この間さぁ〜……」

「え、あたしも助けて貰ったもん!あれはマジでやばかったわ〜」

『生徒会でも、早速活躍してて凄いんだよ〜。この前生徒会長が全校集会の前にね………』

苺はそういえば生徒会に入ったんだったね。芳樹のハーレムに入ってしまったということになるわけだ。

と、お気づきの方もいるかもしれないが、基本的には中心的な女子数人で会話を回していくのがクラスの女子会だ。あとは隣同士でボソボソ喋ったりするくらい。中でもやはり妙高桜や山古志林檎、そして苺がよく会話を回している。よくこんなに話題があるなぁと素直に感心する。あぁぁ、江南先生をdisらないで!

「てゆーかさぁ、青海川さんって、芳樹くんの幼馴染ってガチ?」

「二人仲よさげだよね〜〜付き合ってるの?」

「さっきも仲よさそうに喋ってたもんね〜」

ギャァァァァァァァぁぁ!!キタァぁぁ!!落ち着け、落ち着いて素数を数えるんだ。北条時政、北条義時、北条泰時、北条………いや、何かぞえてんだ僕。

『あはは、そんなことないよ〜?うん、幼馴染だけど、、別にそういう関係じゃないっていうか』

「え〜そんなんだ〜。でもちょっとは好きとかそういう感情あるんじゃない?実際かっこいいしさ〜」

そう、これだ。ここで「そんなことない」と繰り返していれば、「自分が仲良いからって調子乗ってる」って思われる。かといって好きと言ってしまうと後々の誤解を解くのがラサールの問題級に難しくなる。ん、いまいちわからないって?東京ドームで例えると……(無理

『うーん。かっこいいとは…思うけど、、そういう目では見れないかな〜。うん、親友!ベストフレンド!!的な感じ!』

わぁ、君はTSなフレンズなんだね。

「えー、そっかぁ。お似合いだと思うんだけどなぁ」

苺が何か言いたげにしているがそれを目線で黙らせる。余計ナコト喋ッタラコロス…

「つか来夢ちゃんの服超可愛いね!本当に美人だし〜お肌とかも手入れとかどうしてるのぉ?」

『普通にお母さんから勧められた化粧水とか使ってるよ。お化粧とかはあんましないけど…』

「へぇ〜〜やっぱすっぴんでそれかぁ〜〜美人はいいねェ〜〜」

出たなムダ毛女。このクラスで僕に良い感情を抱かない人物の一人で、芳樹に好意を寄せていると思われる人物。ちょっぴりムダ毛が目立つことから、渾名はムダ毛女。センスの無さに思わず脱帽である。

「てかさ〜青海川さん芳樹くんに興味ないなら、誰かが芳樹くん好きになったら応援してくれるん?」


苺やそのほかの女子が凍りつく。完全にKYムダ毛女…、ここにきて新たな属性付与とか。

この質問は女子の中では相当ずるい質問の部類に入る。拒否すればそれは図々しい女だと思われ、応援すると言って仕舞えば今度芳樹と話した時のこの子たちからの非難は凄まじいものとなる。いわゆる「牽制」をグレードアップさせたものだ。




まぁそんな子、今まで山ほど見てきましたけどね…お手のもんですよ

『えっとね〜。実は僕の友達が芳樹のこと好きでね、、僕その子のこと応援してるんだ。だから協力は出来ないけど、、応援ならできるよ♪』

「え、あ、、そっか……あはは、なんでもないよっ!」

「もー、ゆっちん何言ってんの〜」

「抜け駆けとかありえないからね☆」


勿論この友達とは絵梨のことであるが、ここで友達の存在を出す意味は、『牽制に対する牽制』である。絵梨と芳樹、そして僕が幼馴染であることはみんなの芳樹への関心から、周知の事実である。この友達というのが絵梨だというのは大体の人が気付くはず。そして、クラスの女子は僕が2組のコミュニティにいるから牽制をすることができた。だが1組の絵梨は違う。1組にはご存知の通り美人が多い。その1組美人の一人である絵梨が芳樹に好意を寄せていて、それを青海川来夢が協力している、という事実は、芳樹の最有力恋人候補が存在することだけでなく、青海川来夢が芳樹に恋愛感情を抱いていないというある種の証拠にもなり得る。

因みにこのことをバラしていいのか、という問題だが、絵梨の好意はほぼ見え見えなので大体の奴は知っている。気づかないのは芳樹くらいか。そして絵梨への嫉妬と嫌がらせへの心配だが、これもないだろう。1組のコミュニティはすでに完成しており、学年の中心とも言えるメンバーのなかの一人を攻撃すれば、後が怖いことくらい判断は出来るはずだ。幸いにも絵梨は学年で人気者らしい。


苺が急に話題を転換し、話は逸れた。その後はクラスの男子の順位づけとアリアの話、生活指導の先生がうざいだのどうの。そして、、

『こんな噂があることを知ってる?』

「なになに〜怪談?」

「えー、桜、怖いの嫌ーー」

苺の切り出し方に、始まる前からきゃっきゃ盛り上がる女子と、怖がる女子の二種類に分かれる。しかし男子がいない今、大体の場合はちょっと興味を持つ子が多いらしい。男子の手前では怖いアピをするんだが、女子は意外とこういう話が好きだったりしなかったり

『昔々、林間学校のこの地域では白場(しろば)っていう武士団があって、村人たちと仲良く暮らしていたそうな〜』

ゴクリ……。緊張感が漂う。しかし、話し方がなんか上手いね……

『ところが情勢が変わり、東国の将軍がとうとうその牙を北国の太守に向けるっ!その時、白場のお家も北国太守にお味方したんだそうな。かくして、白場家も東国将軍と敵対することと相成った』

…………なんか役になりきってる…。苺のあまりの熱演に、ちょっぴり引いちゃってる子もいるけど、僕含めアリアや真知、汽笛もなんなら山古志林檎もちょっとノリノリである。

『白場は少数なれど武士団は強かった。しかしその戦は悲惨なものじゃった〜』

地域の老人風の話し方になるシフトチェンジしてきただと!?

『ちょうど明日のオリエンテーションで散策する山の方かのぅ。徐々に追い詰められた白場の拠点に続く最後の砦がそこにはあった〜。そこを守る白場軍1500と東国軍8000が激突。多勢に無勢で、白場の兵は次々と死んでいく……。そうして白場の兵で真っ赤に染まった山々のあまりの悲惨さに、そこを通る旅人たちはこう称した。「赤木の森」とな〜〜』

歴女って奴なのかな……。なんか超ノリノリ…

『しかし、そこでは未だに、、首のない死体が山野に埋まっており、夜な夜な東国武士を求めて彷徨っているんだとかぁ。ひょっとしたら〜〜〜貴方の後ろにもぉ!!!』

「きゃっぁぁぁぁぁ!!!」

「苺ちゃんコワーーーイ!」

『ご静聴ありがとうございました☆』

「もう、どこで調べてきたのさ〜」

「来る前にここのこと調べたんだー♪まじでヤバたんなんだよね〜ここ」

『怖かったというよりちょっと興味を深いよね…。今度新聞部で調べてみる?』

『ナイスアイデアですわっ!この地の歴史を知り、この地の謎を暴くっ!かっこいいですわぁ〜』

(ククリに聞けば何か教えてくれるかな……)





ピカッ!!


ドシャーーーン!!


「きゃぁ!」

『あれ?雷?』

『びっくりしましたわ!』

この大部屋は森の方に面していて、障子戸なので光が漏れやすい。なかなかびっくりしてしまった。

『あー、あしたオリエンテーションとかカレー作りとかあるのに、、雨か〜』

『すぐ止むよ〜♪』


ピカッ!!

ドシャーーーン!!!




「きゃぁっ!!」

「いやぁぁぁ!!」

『ちょっとちょっとー、驚き過ぎだよ〜』

女子たちが口を開いたまま固まっている。恐怖で物も言えないような表情だ。おかしい…普通ならそこまではならないが……

『苺ちゃん見えなかったの!?』

『え、なにが?』

「障子の向こう!!!窓の外ぉ!!」

いや、真っ暗でなにも見えませ……









次に稲妻が走るとき、僕も、アリアも、多分見てしまった。そう、、白い光に煌々と照らされ、モノトーンで大きく障子の向こうに浮かび上がるシルエット。


一瞬だったけど、見逃しはしなかった。ほんの少し見ただけで、見間違いかもしれないけど、、







そのシルエットは、、、



人型のように見えるナニカであった……


ホラー、、だと?

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