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23話 自然教室1 今宵は酔いまでよいよいよい

バス。それは決戦の地。各々が好きな人と座り、あぶれた負け組は予備席と呼ばれる真ん中の席に座らさせられるもしくは、先生の隣ポジという地獄ポイント。たいていの場合、クラスカースト上位の人間は後ろの席を陣取る。故に俺は前でも後ろでもない中間地点、そこより1.2席後ろの席、通称:葦原の中つ国。ああ、それなら後ろが高天原で前が黄泉の国か?個人的にはどっちも地獄なんだけどなぁ…

『東夜はボクの隣!いいよね?』

まぁ翠花がいるからどこでも天国だな…。小国翠花(おぐにすいか)は可愛い。女子なんか目じゃないくらいに見た目も中身も女の子らしい男子だ。もったいないにもほどがある。最初に男だと知らされていなければ間違いなく惚れてました危ねぇ!!

「出発しまぁ〜す」

今日は絶好の自然教室日和。さて、だらだらと頑張りますか…





『バス酔いですわ…』

『はやっ!!』

バスが出発して約25分、早速アリアがバス酔いを始めた。なんか虫の息である。

『酔い止め持ってるから飲む?めっちゃ強力だけど』

『い、いただきますわ………うぁ、口に含んでから飲むのが億劫ですわ…』

アリアのタダでさえ白い顔が今では真っ白というか真っ青だ。病弱のお嬢様みたいな属性が付与されてしまった…。

『来夢、、寄りかかっていいですか?その、、うぇっぷ!』

『うわぁぁ!!わかったわかった!オッケーばっちこい!』

女の子のうぇっぷとか聞きたくなかったです…


じゃあ遠慮なく、とアリアは僕に寄りかかる。鼻をくすぐるような甘い香りがアリアのその金色の髪から漂ってくる。自然と自分の顔が赤くなるのがわかる。ていうかこんな美少女に寄りかかられたら誰だって赤面する。目のやり場がなく、窓の外でも見てようかとすると、

『らい、む………手、あったかいです、わ』

い、今にも死にそうなんですが!!やめろやめろ美人薄命とか洒落にならん!死因バス酔いってなんじゃそりゃ!

『あたま、撫で、て……欲しい…な……ですわ』

『!!』

弱々しいアリアから紡がれたそのか細い声に、思わずときめいてしまう。なんでしょう、この、じぶんが何とかしてあげなきゃという気持ちは……

ギャルゲとかなら、撫でてあげるのが正しい選択肢かな?なんて、そうでなくても弱ってるアリアの頼みなら、ね

『…………弱ってるのに「ですわ」はつけなくていいよ』

柔らかい髪。汗で濡れた前髪をハンカチで拭く。どうやらもう眠りについたらしく、可愛らしい寝息を、この騒がしいバスの中でも確かに聞き取ることができた。普段色々無理をしている分こういうところでは休んでほしいと、ささやかな僕の願い。僕がそのあと眠りにつくまで、そう時間はかからなかった。

……


…………


……………………


『あれ?東夜バス酔い?』

『う、悪い……。俺やっぱ本能的に前の席が向いているみたいだ……』

『え!?乗り物に弱いなら言ってくれればよかったのに〜』

『いやまぁ、原因は後ろの連中にもあるんだけど…』

世の常なのか、後ろは二組が誇るパーティー男子たちと女子が支配していた。越路敦(こしじあつし)川西達矢(かわにしたつや)、あと白山とか三島とか坂戸とか、やっと学校に来た分水響也(ぶんすいきょうや)とか、要するにクラス男子の大半はすぐ後ろで大盛り上がりを見せていた。そのちょっと前では妙高桜(みょうこうさくら)が男子たちにお菓子を配っていた。ここ本当に高一の四月のクラスなのか!?

『翠花も、、後ろの奴らに混ざりたいんじゃないか……って思って…』

『う?そんな気遣いをしてたの?あはは、ボクは東夜と話せるならどこでもよかったのに』

なにこの子天使なの?どうしようこのまま召されそうで、、あ、でも翠花が運んでくれるからそれでもいいかも。

『ちょ、なんて顔してるの!?本当に大丈夫!?』

『俺をしっかり天国まで運んでくれよな…』

『うぇ?なに言ってんの?ドユイミ?』

『ああいや、なんでもない』


『取り敢えず薬飲んだし大丈夫だ。でも悪いな、なんか眠くて……』

『あ〜、じゃあボクが添い寝してあげるねっ!』

ファッ!?なに言ってんの!?え、いいの?まじで?

『え、いや、え?ええええ?』

『あはははっ!東夜のその反応面白い〜!こんなにリアクションしてくれる人初めてかも!』

あ、からかってたんですね…。小悪魔ですか。小悪魔男の娘とか万人に得だ。いや、毒だ。迷わずそっちのルートに落ちそうな自分が恐ろしい。

『でもね、前の席の月潟さんや青海川さんも寝ちゃったみたいだし、東夜も寝れるなら寝たほうがいいかも。向こう着いたら起こすからさ』

『悪いな、本当』

と言ってそっと目を瞑る。しかし、その10分後バス内でカラオケ大会が始まり、全く寝付けない俺であった……


……


…………


…………………

『キャハハハッ!!苺!あんたまじで最高!!』

『え〜〜そんなことないよぉ〜!あ、ブルゾソのモノマネしまーす!』

テレビで見た、今流行りの芸人のモノマネをして、さらにバス内は笑いに包まれる。あたしは後ろから2番目の席で、隣は山古志林檎(やまこしりんご)。いつもの携帯弄りギャルとは打って変わり、馬鹿笑いするキャラになってしまってるよ…。ていうかあたしも結構馬鹿なことやってるけど。

『いやぁ、苺まじぱねぇわ!俺らも〜ここは人肌脱ぐしかねぇっしょ!よっしゃカラオケやるべ』

『『『うぇーーーい!!』』』

うう、あたし歌うの苦手なんだけどなぁ〜。敦め、余計なことを。

『苺、大丈夫かい?』

『へ!?あ、ああ、うん!全然平気〜』

響也に目の前で手をひらひらされてようやく意識が戻る。ぼーっとしてしまっていたらしい。ああ、楽しいといえば楽しいのだけど、、来夢やアリアも混ざってくれないかな〜。二人とも寝ちゃってるらしいし、、それも超仲よさそうに…


「青海川さんと月潟さん?あぁ寄りかかりあって寝ちゃってるよ。仲良いよね〜〜」

「まじ!?おほぅ!美少女同士の百合!ごちそうさまです!!」

『って〜来夢寝ちゃってんの〜?俺らカラオケすんのにさ〜。まぁしゃーないか〜。んじゃぁ俺の美声を夢の中まで届けてやるさね!』

バスの中には、越路敦のちょっと舌巻いてうざったい美声(笑)が響き渡った。

……


………


『ついた〜〜〜ほら、来夢とアリア!!着いたよ〜〜』

ん、なんか耳元で声がする。眠くて、、は!!しまった寝てしまった!

『う、苺??アリアは、、大丈夫そう?』

『ちょっと寝たら良くなりましたわ。ほら、来夢も行きますわよ!』

『うぅ、だるい……』

通路に出たはいいものの、何故か少しフラフラする。そこへ、

『ちょっと道塞がないでくんない?』

とクラスの女子の声が。あぁあれだ。芳樹が僕のクラスに来たとき、めっちゃ僕のこと睨んでた子。どうやら僕のことが気に入らないらしい。まぁ元男子なので、女子からの悪意とかは別に正直なんとも思わないのだけれど。





1日目の前日程はまずクラスごとのレクリエーション。昼食を終えるとすぐ部屋に荷物を置き、クラスでちょっとしたゲームをする。そのあと班に分かれて地層を見学する。なんでもこの地域はプレートとプレートの間だとかどうのこうの。そして夕食を食べて、お風呂まで待機。さぁここまでは問題ない。そして問題はここから……。

『来夢!!お風呂行きますわよ!!』

『…………あーー、えと、今気分悪くてさ〜後で予備の時間があるから、その時に入るよ!』

そう、このお風呂イベントだけは絶対に回避しなくてはならない。どんなにゴリ押しされてもだ。

その返答に対してアリアは、むぅーという顔でこちらを見つめてくる。うぅその表情には弱いけど我慢我慢。男子が女子風呂入るとかそれは絶対にあかん。たとえ今僕が女の子でも、たとえ香澄と練習したとしてもだ

(せっかくなんじゃし、行ってくればよかろうに)

(!?ククリ!?)

(楽しんでくればよかろう、女子の身体…興味あるんじゃろ?)

(な、ないよ!!)

(ふむ、ではワシは見たいから乗っ取っちゃうぞ?)

(うわぁぁぁぁ!やめろやめろ!!)

(では行くがよい。わしに乗っ取られて風呂に入るか、自主的に風呂に入るかの二択じゃ)

(………………自主的に行かせてもらいます)

(それでよい♪)

まじで何がしたいんだろうククリ先輩。あれなな、御都合主義の化身かな。とは言え乗っ取られるのだけは駄目だ。お風呂で何しでかすかわからない。


『わかったよアリア。お風呂行こ』

途端にアリアの表情が華やぐ。分かり易いなぁ

『そうこなくっちゃ!ですわ!!さぁ行きましょう!真知も汽笛も!!』

………目隠しでもしていくべきなのかな?




ゆ、湯けむりありがとう!!!このモヤモヤがすべての女子の至る所を隠してくれるさ!

風呂について直ぐに僕がやることは速攻で髪と体を洗い、1番端っこのあたりに浸かること。これで大体のことには対応できる。これは紛れもなく香澄との一件があってから考えた対応策だ。あとは動かざること山の如し………

『来夢〜〜はやいですわ!』

む、まずい。ターゲット認定が早すぎるよ。というか1番まずいのは時間帯が一組と合同なことなんだよね。下手したら芳樹ハーレムが近寄ってくるなんてことになりかねない。そう考えれば周りを二組で固めるほうが良いかもしれない。が、しかし、アリアの裸がどうしても目に入る。すらっとした身体はシミ一つなく、湯けむりがあっても思わず魅入ってしまう。本人はひんぬーなことを気にしていましたが、僕的には寧ろ最高です!でも、あまり見てしまうのはやはり申し訳ないので、目を瞑ってゆっくり湯に浸かるとしよう。


………近い。アリアが兎に角近い。僕が少し横にずれるとアリアもそれに続いて距離を詰めてくる。まずい、このままだと本当に理性が消し飛んでしまう。

『な、来夢!!顔が真っ赤であるぞ!?我がかつごうか?』

『うわああ!来夢がのぼせちゃったわ!この温度で!?』

汽笛と真知が何か騒いでいるが耳に入ってこない。あはは、頭ポカポカするぅ〜

『ちょ、上がりますわよ!!来夢!来夢ーー!』

『う、あああ、暑………頭痛い……えへへ、アリアの背中綺麗……』

『な、何行ってるですの来夢!?あ、あの、ああ、わたくし、その……』

あれ、本格的に頭が回らない。なんかおんぶされているやうな……うえぇ、何時ぞやにラムレーズンで酔った時と同じ気分だ。


あ、う、、女子風呂、危険だわ……





取り敢えず次に目が覚めた時には朝であってほしいとそう願うばかりだった。





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