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22話 またベッタベタなとは言い難いイベント

『来夢の私服グッジョブですわ!!』

『うんうん!!がちで可愛い〜!なんかクールな感じ前面に押し出してるからクール系で来ると思ってた〜〜』

『……………止むに止まれぬ事情って言っても理解してもらえそうにないなこれ』


本日日曜日、僕たちは最早恒例のお買い物に来ております。女の子と出かけるなんて中学時代は殆ど無かった…いや正式には芳樹が来るという条件で何人かと行ったな。今となっては死にたくなるような思い出だ。具体的には「芳樹がメインなのに何でしゃばってんだよ僕!」と自己嫌悪したくなるくらいには死にたいマイメモリー。それはともかく、女の子と出かけるのことに若干の緊張はあったものの、可愛い服を持って室外で待機しているお母さんと香澄を目撃した時点でその緊張は霧散した。自分もこれからその可愛い女の子の一員となるのだと考えると、緊張何ソレ美味しいの?というレベルでクールダウン。窓から逃げようとした瞬間に凄まじい勢いで2人が突入を開始し、あっという間に僕のドレスアップは完了した。


白のフリル付きトップスと黒のフレアスカートにお洒落なベルトとブーツという、まぁお出かけ用スタイルだ。今日は青海川伊奈流のメイクもパワーアップし、朝から奇怪なものを見る目で見られている。歩く時の内股はある程度気をつけてはいるが、今日はその視線の多さから一段と縮こまって歩く羽目になった。ふえぇ、僕が何をしたと?


そうそう、このお買い物は当初アリア 真知 汽笛と4人で行くつもりだったのだが、汽笛と真知は今日料理部の歓迎会でボーリング大会があるらしく、他の班だったので遠慮していた苺を入れることになった。汽笛は運動神経無いながら頑張ってるかな〜


『なんか……来夢ギャルっぽい!』

『苺に言われたくないよ!!』

苺も見た目なかなか可愛いだけあって私服もかなり女子力高い。高すぎて一周回らずともビッチみたいになってる……。あ、服装的にではなくて雰囲気的にね。滲み出る逆ナン待ちオーラ。芳樹に群がる女子を嫌と言うほど見てきたのでその目は確かである。うわぁ自慢できない。


そしてアリアだが、これまたお嬢様の様な春色のワンピースであった。持ち前の金色の髪によく似合う。


『アリアも可愛いよ。よく似合ってる』

『なっ!あ、へぁ、その、どういたしまして、ですわ…』

そんな顔を真っ赤にしてうつむきながら言われると迷わずアリア百合ルートに突入しそうなんで、、辞めて、可愛い!!


『ほんじゃ、さっさと揃えますか!』

『『おーー!!』』


……


…………


………………

林間学校、またの名を自然教室とは明後日から始まる二泊三日の大イベントだ。これが公立高校なら一泊2日だったのだろうが、私立高校のひまりヶ丘ではイベントごとはその昔から伝統的で変化がない。何時ぞやの校長先生が決めた日程はそう簡単には覆らないぽい。グッジョブ校長!


先輩から話を聞いた越路敦(こしじあつし)くん15歳曰く、ここであぶれると友達作りが困難だとかなんとか。ぼっちの東夜にはキツそうなイベントだねプププッ。


買い物はつつがなく進んだ。主に購入予定だったものはお菓子や飲み物などの食料品と日焼け止めなどの日用生活雑貨であったが、アクセサリーショップを見た途端女子の血が騒いだのか、苺はアリアと僕の手を取ってすごい勢いで突入を開始した。御用改めであるっ!みたいな


『これは来夢で、こっちはアリア!!』

『これは……ヘアピンですの?』

『僕が青でアリアが黄色、苺は桃色…的確なイメージ』

『そうでしょ!!お揃にしようよっ!ねっ!ねっ!』

と、苺の勢いは止まらない。51アイスを美味しく頂いた後、舞台はゲームセンターへ。

『こ、これがプリクラ……』ゴクリ

『ですのね……』

『え、うそ!?2人とも撮ったことないの!?』

『いや、まぁそりゃ……』

男だし…、しかも彼女とかいませんでしたし?

『わたくし、あまりこういう所に来ないので』

『か、彼氏とかと行ったりしないのぉ!?』

おっとその口ぶりから察するに苺はあるんですね?クラスの百合豚死亡……

『いや、彼氏とかいたことないし…』

ていうかいたらそれはBLだし…。いや実際男同士でのプリクラはなくもないらしいが、あまりやりたいとは思わない。最近はやはり女子同伴でなければプリは撮らないだろうし、そもそも撮るメリットがない。


『はぁ、まぁいいや!じゃぁ今日が初めの日だね!あたしと、アリアと来夢の初めて!』

『え、あ、うん…』

と、手際よくパシャパシャ撮ってパネルをタッチし、僕やアリアの目はどんどんでかくなっていく……誰だよコレ。


『ほら、これで来夢も撮り方覚えんたんだから!芳樹くんさそってプリ撮れるよ〜?』

『な!?ち、違うし!!そういうんじゃないし!!』

『はいはい♪』

何回説明してもこの誤解は全く解けそうにない。正直テンプレ通りだとこのまま押し切られてヤルコトやってそのままゴールインしそうなんですが……。










なんて考えていたその時であった

『きゃぁぁあ!!』

『どけ!刺すぞクソどもがぁ!』




前方のカフェのあたりが騒がしい。目指し帽を被った男が片手に鞄を持ってこちらに向かってくる。もう片手には…………ナイフ!?

『ちょっ!来夢!前前!!!』








その光るナイフを見た途端、脳が思考を停止した。フラッシュバックするのはあの夜の出来事…

『あ、ああ、ああああ…』

『来夢!?』


スローモーション……その瞬間はただ、時間の進みが遅くなる。右手に小型の刃物を持った男を相手に、ある種の既視感を感じていた。あの夜、僕を殺しかけた通り魔。いや、ククリが居なかったら僕は殺されていただろう。あの時は恐怖なんてものは無かったけれど、一度経験した恐怖はそうは消えない。体が硬直する。スローで動く時間に抗うことなく、僕はこのままだと、、また……


ぎゅっと目を瞑って……そして……













ドタッ!


『イテッ!!てめぇ、なにすんだこのクソガ…がぁぁぁ!』

『煩ぇな、うちの妹にそのゴミみてぇに汚ねぇ言葉遣い移ったらどう責任取ってくれんだこのクソゴミ』

『お兄、今はお兄の方が悪影響だよ……』

『ちょっとお兄ちゃん今汚いおじさん掴んでるから、その間に110してくんない?』

『分かった、109っと』

『お兄ちゃんが刺されたみたいな前提やめて…』


目を瞑っていた間の出来事が分からない。ただそこには刃物を手放し壁に叩きつけられている男と、、2人の男女。

『と、東夜!?』

『え、えとなんだっけ、、出雲、、、いずもん!?』

『は?あれ、、なんでお前らここにいるんだ?って、青海川!?お前………』

『え?あ、あれ?なんか………え、嘘…』

涙が………止まらない。止めようと目をこするも、こすったぶんを上回る涙がとめどなく溢れてくる。しかも気づいたらへたりと床に尻をつけていた。

『わわわ、ちょ、ごめん…なんか、、止まんない……』


どうしてだろう。女の子になってから感情に制限が効かなくなって、よく泣いている気がする。前にも…病院でこんなことあったような。

『あの、、立てます?』

東夜と一緒にいた女の子が手を差し伸べてくる。黒髪ショートの可愛らしい女の子。その子の手を借りて、ようやく立ち上がることができた。

『あ、ありがと……』

『わぁぁ!可愛い!なにこの人お兄の知り合い!?』

『は!?お前……………いや、知らないのか…』

『?』

『来夢!大丈夫ですの!?』

『立てる??どっか痛くない?』

あはは、苺もアリアも心配性だなぁっ…




『あ、東夜!!逃げましたわあの男!!』

『え、嘘!?あー、まぁ、警備員来たし、刃物ないし、あとは任せるか……』

『あの、東夜。そちらの女の子は?』

アリアがおずおずと尋ねる。東夜がデート中だったのではないかと疑っているようだ。

『ああ、妹な……。出雲崎(いずもざき) 西蘭(せら)。うちの紅一点…』

『ちょっと、お兄、さりげなくママンを省かないでくれます?』

『あれを紅とは呼ばん…』


『あはは、仲いいんだね。東夜、ありがと…』

まだ心は落ち着かないけど、なんとか呼吸を整えて感謝を伝える。今僕はとても弱々しげな表情をしているだろう。東夜はそれを気まずそうに目を逸らし、頭をかく。

『目の前にヤバい奴がいたから蹴っ飛ばしただけだ。別に………助けた訳じゃない…。それより、ここを離れよう。すごくめんどくさい』

気づけば野次馬がわらわらと僕たちのまわりに集まっていた。写真まで撮ろうとしてたので、ここを離れるのが賢明だろう。


……


………………

『ちょっと災難でしたわね……』

『まさかひったくりとか……僕の不審者エンカウント率高』


近くのレストランで昼食なうです。あんなことがあったばかりで食事とか……とはならず、みんなお腹ペコペコだったことから満場一致でお昼ご飯でした。


あぁ俺です、出雲崎東夜です。作者の技術不足でクソ雑な視点変更を強いられた出雲崎東夜です。正直腹は減ってたけど、クラスの女子とご飯行くとかそんな提案は絶対にしません。ましてや吉田苺に関してはほぼ面識ゼロ。西蘭(せら)が、是非ご一緒にご飯しましょうとか言うから爽やかに「じゃ、お兄ちゃん帰るからっ」とか言って戦略的撤退をしようとしたのに西蘭だけでなく青海川までジト目でこっち睨んで来やがった。俺あの目に弱いんだよなぁ…

『アリア何にする〜?あたし苺パフェ〜、苺だけにっ!!』

『ギャグセンスは兎も角、昼食スイーツってどうなんですの?あ、わたくしはたい焼きで』

『ねぇよ…』

『じゃ僕はハヤシライス〜』

『西蘭はチーズハンバーグ♪』

『じゃ俺は和風ハンバーグな』

しかしこの状況はあれだな。まず青海川と月潟は美少女だ、紛れもなくそうだ。吉田は流石にそこまではいかなくとも流石にクラスカースト上位だけあって、よく目立つ。男子から見たら、軽そうなギャル…みたいな感じだ。人の視線を集めるのも無理はない。そして西蘭は可愛い。只管可愛い。中学生にも関わらず大人びたその雰囲気はミステリアスそのもの。つまり結論、みんな女子レベルが高い。世間一般から見れば可愛いor美人つまり、男子1人がここにいるとただの羨まハーレムである。痛い、周りからの視線が凄く痛い…。いや、気配を消せばいいのだ、木の役に徹するように。超得意分野なんですよね…


『へぇ、来夢さんにアリアさんに苺さんかぁ。みんな可愛いなぁ』

『西蘭ちゃんもかんわいいよぉ!!ああもうお持ち帰り〜』

『あはは〜。ったくお兄がいつも迷惑かけてます〜。こんな良いクラスメイトがいるなんて西蘭感激です』

『西蘭ちゃんはしっかり者だね〜☆あ、パフェ来た』

と、女子4人でワイワイやってるから案外気が楽といえば楽だ。俺は木、立派な針葉樹…

「んだよ彼奴あんな可愛い子たち4人も連れてるぜ…」

「うわ、暗そうなのにゲス野郎だな。やばくねあの茶髪の子とか、、スタイル芸能人かよ!」

「あんだけ女の子たちいるのに死んだ目だぜ?」

「ラノベ主人公かよ…」

私、木になります!っておかしいな、俺のステルス能力が機能しない…

『東夜なに黙ってるの?ほら、これマジ美味いよ、えいっ!』

『は?もごっ!!がぁ、熱っ!お、青海川お前!』

俺の口の中にいつの間にか切り分けられていた和風ハンバーグが突っ込まれる。ていうか結構食われてるんだが、、

『へへっ美味いでしょ。ボケーっとしてるからだぞい』

『もともと俺のハンバーグだ。つかなんだよそれ、あざといな…』

『あ、あざと!?へ、あぁ、そういうことになるのか…』

どうやら青海川本人としては男子同士のノリみたいな感じでやったらしい。青海川来夢という人間は普段はクールな女の子という感じだが、時々男子のような面を持つ。俺の人間観察スキルを持ってしても全く測ることができない。

「おい見ろよ……あーんしてもらってたぞ今」

「やばい、、あの茶髪の娘可愛い………そしてあの男はコロス」

「う、羨ましいでござんす!」

聞こえる聞こえる…もっと仕切りのついたレストランに行きたい…


『にしても、いずもん凄いよね〜あんな蹴りいれちゃうんだもん!学校だとマジで暗いからあんまり印象に残ってなかったけどさ〜』

『だれだよいずもん。その理屈だとウチの西蘭もいずもんだ…』

『お兄そういうのマジでキモいからやめて。あと学校で暗いとか西蘭が入学した時に西蘭の評判下がるからもっと辞めて』

『お兄ちゃんへの心配はないのか…』

『なんか格闘技でも習っていたんですの?』

『叔父がちょっとな……。つかあれくらいなら中学の体育でもやるだろ…』

『やらないよ…。叔父さんって?』

『………………まぁ、その…』

『ウチね、叔父さんが警察官のちょっとしたえらい人なんだ〜。お兄ちゃんは昔から叔父さんに警察官目指すように言われて、格闘技もどきを仕込まれてるの。叔父さん鬼教官なんだよ!』

『ま、マジで!?』

青海川の目が輝く。そういうの憧れなのか?

『ほんとに嫌嫌強制参加だからな?言っておくけど叔父が引っ越ししてからずっとやってないから本当にかじった程度で、、今回のは偶々上手くいっただけだ。警察官も目指す気はさらさらない。あんなの虐待だ虐待』

そんな小さい頃から剣振らされたとか格闘技仕込まれたとかラノベの主人公みたいじゃないか、やだよそんなのクソダサい。喧嘩とかやだし、痛いし。論争でも百戦連敗のツワモノだからな。





だけど、それで誰かのためになったのなら、それも悪くなかったということ、、なんだろうか?

……


………


………………

帰りの電車に揺られて、僕たちは帰路につく。あ、青海川来夢です。苺は逆方向ので駅でお別れでした。

『にしても、東夜って結構すごいんですのね』

『なんか格闘技とか合わないよね…』

『まぁ大したことは何もできないから喧嘩はしたことないといっていましたけれど』

『完全な不意打ちだからできたことだよね。それでも結構すごいけど』


『新聞部の活動が楽しみですわ!』

『…だね』


僕は一つ後悔していることがある。それは、まだ東夜や西蘭ちゃんに感謝を伝えていないことだ。僕は、神社での出来事を東夜たちにまだ何も言えてない。向こうはあれを僕とわかっているのだろうか?何も言わなくていいのだろうか?そして、そのことって果たして他言しても良いのだろうか?





まぁ、まずは明後日からの林間学校だ。香澄から学んだことを生かして頑張っていこうと再決意する。そんな僕をアリアはそれを不思議そうに眺めているのであったが、それには全く気づかずに



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