14話 寂れた4階の端っこで
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翌日、登校した時にはもうクラスは元どおりになっていた。表面上の話かもしれないけれど。それもそのはず、1週間後のロングホームルームでは林間学校の班決めが行われるので、グループをつくるためにもギスギスしてはいられないのだ。僕だってあんなくだらないことでギスギスしたくはない。
因みに昨日は苺がバスケ部を見に行きたいというので、運動部を中心に回ることとなった。サッカー、野球、バスケ、バレー、剣道とその辺をぐるぐるまわったが、僕としてはそんなに心惹かれる部活はなかった。運動は苦手ではないし、むしろ結構得意な方ではあるのだけれど、正直そんなに疲れたくないから、入るなら文化部にしようと思っていた。ひまりヶ丘高校は文化部がとても多いという特徴があり、いろいろ探して見るのもありかと思ったのだ。
『で、今日も部活見て回るのか?』
『芳樹は何に入るか決めたの?』
『俺は特に入る予定はねぇけど、来夢はどうすんだ?』
『うーん、僕もなんか決まんなくて……文化部がいいんだけど…』
『なるほどな。じゃあ今日一緒に文化部回ろうぜ!』
『ん、待ってて、苺呼んでくる。あと、そうだな…真知も汽笛ももう調理部なのは決定事項だからなぁ』
『いや、別に絵梨と俺とお前とで良くないか?』
『せっかくだし2組の友達紹介しておきたいじゃん!!僕別にコミュ障じゃないんだから』
いつまでも幼馴染で固まってたら友達できないでしょうが!と、そんな芳樹を置いて、教室に苺を呼びに行く。
『あれ、真知?部活は?』
そこには調理部へ行ったと思っていた真知がいた。
『汽笛が今日早退したから今日はちょっと残ってようかな〜って』
『で、アタシのお話相手になっててもらったの!ママやっぱ好き〜〜!!』
知らんとこで2人が仲良くなってた……というか汽笛は確か一限の体育でもう早退していたな。割とけろっとしていたような気がしたんだけど。
『あのさ、今日文化部の方見に行かない?友達も一緒なんだけど……』
『行く行く〜〜〜!友達?』
……
………
…………
『あーー!!噂の芳樹くんだ!!グーモル〜〜!』
『あ、芳樹、これは因みにグーテンモルゲンの略ね………今苺オンリーでブームなの』
『なんだそりゃあ。あぁ2組の吉田苺さんと黒崎真知さんだよな?俺は相川芳樹。宜しく』
『へ?わ、私の名前も知ってるんですか?』
『アタシはもうお知り合いだもんね〜』
真知よ、芳樹のイケメン度を舐めてはいけない。基本的には自分のクラスだけでなく隣のクラスの女子の名前を覚えてしまっているのだ。逆もまた然り。まだ入学3日目だが、実は昨日大事件があって、それで芳樹は有名人になっていた。なんでも、1組のとあるお嬢様が下校中に不良たちに連れ去られ、助けに行った友達も捕まってしまって絶体絶命って状況に、たった1人で不良たちの溜まり場に乗り込んでいったらしい。その際にはおきまりの
『く、くるな!こいつがどうなってもいいのか?』
『く、分かった。そのかわりその子に少しでも乱暴してみろ?俺はお前らを絶対にゆるさねぇ!』
からの、
ボコボコにされる
↓
ヒロイン『もうやめてください!死んじゃいます!』
↓
『何があっても、お前は守ってみせる!』
↓
1組の男友達登場『よ、助けに来たぜ!』
↓
ヒロイン2人救出
↓
『もう、いいよな?2人を怖い目に合わせた罪を身を以て知れ!』
↓
不良全滅。
↓
happy end
↓
その後の恋に落ちるシーンは、正直恥ずかしいくらいなのでカット!
という絵に描いたようなギャルゲ主人公をやり、1組の美少女2人をさっそく落としてしまった。怖い、ギャルゲの主人公ホント怖い。と、まぁこんな形で、既に1組はギャルゲの舞台と化している。それだけでなく、学年の殆どの女子はすでに芳樹に注目しているとかなんとか。当然朝の登校は時間をずらさせてもらった。
『聞きましたよ!不良たちをやっつけた話!カッコいいんですね!』
『アタシも聞いたよ!いや〜凄いね!』
『まじギャルゲ主人公乙』
『あ、ありがとな………いやおい誰がギャルゲ主人公だ』
『そろそろ行こうよメンドくさい…』
その後はある程度割愛させていただく。先ずは一階の生物部 化学部 天文部 生徒会 日本文化研究部 書道部 占い同好会 パソコン部 漫画同好会から回る。正直に言おう。その殆どが部活とは名ばかりのただゲームしたり、おかし食べてたりしているところばかり。さらにいった先は男ばかりだったので、物凄い勢いで勧誘された。特に理科系の部活やパソコン部は凄かった。まぁ察してくれ…オタサーの姫とか見つけちゃったし……………
そして二階の文芸部 手品同好会 ゲーム同好会 演劇部 園芸部 アニマル研究会 ロボット部 登山部を回った。因みにアニメ声優研究会というのもあったが、ここはなんとなくスルーした。なんとなくだ。
三階では、茶道部 華道部 合唱部 英語研究部 クイズ部をぐるっと回った。そろそろ尽きてきたな…一階に固まりすぎでしょ
『ねぇねぇ来夢っ』
『ん?どしたの苺、そんなこそこそ声で』
『確かに芳樹くん人気あるし、嫉妬とかも凄いと思うけど、アタシ2人の仲を応援してるからねっ♬』
『わ、私もだよ!2人とも見ててお似合いだものね〜』
『ふぇ!?なんでそうなるの!?』
『じゃあさ、実際来夢は芳樹くんのことどう思ってるの?』
ハイ出ましたテンプレ『実際どう思ってるの?』withニマニマ笑い!!実際も真面目にもあるか!!どう思ってるのって言い方がもう色々狡い…。ここで好意的に答えれば
「やっぱ好きなんだよね〜♪うんうん!good luck!!」
ここでそれとなく恋愛感情がないことをつたえようとすれば
「ふーむ。2人はまだまだこれからということですよね?」
じゃないよ!!この先はないんだよ!なんで繋がっちゃうわけ!?
『沈黙は肯定とみなしちゃうよ〜?』
『うわわっ!ちが、違う!!本当のホント!別にあいつのことは全然好きなんかじゃないからっ!』
タイムリミット制の所為で、僕が打ち出した答えは回答としては最低のものだった。完全に照れ隠しに映るだろう……苺の顔に小悪魔的な笑みが作られる。勘違い完了……
『ふーん///まぁ、進展あったら教えてね♪まだまだこれからも聞かせてもらうからっ♬』
『あ、うん。もういいや……』
諦めたらそこで試合終了だけど、長引かせても持久力切れで押し負けそうなんでもういいです…どうせ外堀埋めても内堀が埋まらなければいいわけだし…
……
………
……………
4階では吹奏楽部があるだけだったが、中学のとき吹部だったので正直高校でも入ろうとは思わない。まぁ一応楽器体験だけはさせてもらった。
『何あの可愛い子、サックス上手っ!』
『あれで鈍ってるとかまじかよ…』
『音色柔らかいわね〜』
いや、鈍ってる…。高校の先輩は、新入部員を逃さないために、どんなに不恰好でも誉めそやす。その気になって部活に入ると盛大な手のひら返しを食らう羽目になるので本当に注意、と聞いた。また明日もおいでね!なんて言われたけれど、やっぱり入る気は無い…と思う。
『全部回ったなぁ〜』
『なんかほんとに全部回ったね。いいとこあった?』
『明日運動部の方もみて決めるさ。3人ともありがとな』
と、流れ解散。苺はどうやら気に入った部活があるらしく、急いで階段を下りていった。イケメンがいた生徒会とかかな?僕は入学式の時の生徒会長に会いたく無いのでパスで…
4階は静かなフロアだ。音楽室から楽器の音が微かに漏れるが、それを除けば後は空き教室や資料室があるくらい。閑散としていて、誰も寄ってこない。それは、屋上が立ち入り禁止だということもあるのかもしれない。音楽室の通りは冷たく、無機質な空気が漂っていた。
ふと、資料室に何があるのか、知りたくなってきた。空き教室がつらなるこのエリアには、学校で使われなくなったものが山ほどあるという。ちょっと漁ってみるのも面白いかもしれない。そう思って1番近くの空き教室のドアを開けようとした時、ドアの前に張り紙が貼られていることに気づく。
それは「当軒は注文の多い料理店ですから、どうかそこはご承知ください」という看板。そして、その張り紙の端っこには端正な字で、
「新聞部」
と書かれてあった。
なんで宮沢賢治?とは思ったが、それと同時にとてつもない好奇心が僕の心を支配した。冷たく無機質な廊下が、一気に熱されていくような気持ちになる。少し躊躇いつつも、僕はその古そうなドアをガラリと開けた
風が吹き込んできて、前髪が靡く。木の匂いが仄かに漂う教室。そこに1人、静かに座って本を読む少年と目が合う。その少年は目を見開いて、本を閉じた。パタン、という音が空気を伝わって部屋中に来客を告げた。
そこで驚いたように目を見開く出雲崎東夜の手には『銀河鉄道の夜』が握られていた。




