モモちゃんの作文 (ショートショート57)
『ウサギりょうり。
パパがウサギをつかまえてきたよ。ウサギはパパがわなでつかまえてきたの。わなにいちどはいったら出られなくなるんだって』
ここまで読んだところで……。
――モモちゃん、ウサギを食べたんだ。
鈴代先生はびっくり。ウサギはペットで、食べるものだなんて考えたこともなかったのです。
『おにわでりょうりしたよ。ママがあばれるウサギをまないたの上でおさえつけ、パパがウサギのくびに大きなくぎをうったの。でもね、ウサギはなかなかしななくて、ずっとグニヨグニョうごいていたよ』
――わあ、ザンコク!
鈴代先生はおもわず身ぶるいしました。
『パパがほうちょうでウサギのおなかをきったよ。くびからしっぽまできったよ。それから、おなかの中のものを出して水でよくあらったよ。
おにくをかなあみの上においたよ。下にはもえているすみがあるの。モモもおてつだいしたよ。うちわでパタパタしたの。するとね、火がつよくなってウサギがよくやけるの。
パパがときどきウサギをうらがえして、ママがたれをぬるの。ウサギがやけてきて、ジュウジュウ音がして、あぶらがポタポタおちたよ。とてもいいにおいがしてきたよ』
――ウサギって、おいしいのかしら?
いくらおいしく料理をしたからといって、鈴代先生はとても食べる気になれませんでした。
『ごはんにのせて、たれをかけてたべたよ。とてもおいしかったよ。ママも、おいしいおいしいっていいながらたべてたよ。パパはね、またウサギをつかまえにいくってはりきってたよ。
ウサギのことで、モモはふしぎにおもうことがあるの。ウサギはね、やくとカバになっちゃうんだよ』
――カバ?
鈴代先生も不思議に思いました。
『それにね、ウサギはヘビみたいなのに、パパはおナカサだって。でも、とってもおいしかったから、またウサギをたべたいとおもったよ』
作文を読み終わって……。
――モモちゃんたら。
鈴代先生はホッと胸をなでおろしたのでした。