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『002』

 『002』


 「()()(しば)(みさき)

 彼女は間違いなく、誰の目から見ても美少女であったし、艶やかに伸ばされたロングの黒髪はオトナびた色気を演出していた。彼女は本当に魅力的な少女であったのだ。

 ゆえに俺は、俺というよりもクラスの誰もが、ああ彼女は人気者になるのだろうなと、そう心のどこかで思っていたのだ。彼女がやってきたその日に、俺たちはそう確信していたのだった。

 だが結果から言えば、そうはならなかった。彼女がクラスの人気者になることはなかった。

 東京から来た都会っ子ということで、俺としても若干の僻みを持つ部分こそあったものの、初めての自己紹介を含めて、彼女に特別な悪印象を抱くことはなかった。むしろしっかりしていて良い子じゃないかと、子供心ながらにそう思ったものだ。それに此処、名古屋市は別に田舎ではない。十分な都会である。ゆえにそこまで劣等感を感じることもないのだ。


 して、彼女の問題が明らかになるのは、それから割とすぐのことであった。

 自己紹介を終えて、緊張を解くようにため息をひとつついた彼女は、教室後方の空いている席に座った。俺の右斜め2つ後ろの席であった。この物語がもしラブコメであったとするならば、彼女は間違いなく俺の隣に座らなければならなかっただろう。やはり俺は恋には無縁な寂しい男らしい。

 スズーッと椅子を不器用に引っ張って、ちょこりとそこに腰をおろした彼女の周りには、ものの一瞬で人だかりができていた。一種の見世物というか、パレードというか、校庭に犬が入っていた並みの盛り上がりにはなっていた。今時校庭に犬が入ることなどそうそうないので、そこまでとはいかないかもしれないが、彼女の周りには俺を除いたクラスのほぼ全員が、たかるようにして集まっていたのだ。

 俺はすげえなあと、他人事のようにして、ぼーっと困惑する彼女の顔を遠目に眺めていたことを覚えている。

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