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雪の道化と  作者: 澑〈りゅう〉
1章
5/12

4話

前回まで、ハルトぼこぼこ。←誤解

討伐依頼受注

 荒野を走る、1台のジープ。そこから、賑やかな話し声と、笑い声が、聴こえてくる。

「それで、ボクは、メグリさんの指示通りにやればいいんですか?」

「んー……、まぁ、そうだな。メグリちゃんのいってた通り、注意を引いてくれるか?」

「注意を引く、ですか……うまくできるかな……」

「大丈夫だよ……千雪は能力で近付いて、撃ってくれればいいんだから!」

「ちゃ、ちゃんと当たるかな……」

「当たるかどうか、不安だったら……さっき渡したナイフで、切りつけてもいいぞ?」

「そんな、笑顔でムチャ言わないでください!」

「冗談だよ……半分な」

「半分本気何ですか!?」

 こんな、会話をする2人……千雪とハルトは、討伐目標の変異種が目撃された地点に、向かっている。



「大丈夫そうね……」

そう、呟いたメグリに、

「なんか言ったか?メグリちゃん?」

そう、ハルトが訊ねる。

「何も言ってないわよ」

「そうか?なんか、ブツブツ言ってた気がしたんだが……」

「ああ、もしかしたら、ちょっとした作戦を考えていたから……」

そう言って、メグリは誤魔化す。

「んー……違う気がするが……」

「いいのよ!そんなことより、あんたは何か思い付いた?」

ハルトは、考えるそぶりすら見せずに、

「頭悪いから、考えるのは、ムリ!」

と、胸を張る。

「堂々と言わない!だから、あんたは……ハァ……」

「そんな、可哀想なものを見る目をしないでくれ!」

そんな会話をする2人を見て、千雪は、

「えーっと、結局、どうすればいいんですか?」

苦笑しながら訊ねる。

「ごめんごめん。千雪くんは、ハルトの援護をしてくれる?」

「援護……ですか……」

「そう、後で銃を渡すから、能力で姿を消したりして、変異種を撃ってくれる?」

「銃……ちゃんと撃てるかな……」

「なるべく、軽くて反動が小さい銃にするから、大丈夫よ」

「ナイフも持たせないとダメじゃないか?メグリちゃん」

横から、思い出したかのように口を挟むハルト。

「ナイフ、ね……でも、変異種に対してなら、かなり大振りになるわよ?」

「それは仕方ないだろ。もしもの事を考えたら、必要だと思うぞ?」

そんな風に懸念するハルトを、珍しいものを見るように、

「どうしたの?ハルト?熱でもあるんじゃない?」

メグリは本気で心配する。

「なんでだよ!家族の命がかかってるんだ……真剣に考えるのは、当たり前だろ!」 心外そうに、ハルトは叫ぶ。

「でも、さっき、考えるのは、ムリ!って言ってませんでしたっけ……?」

千雪が思わず、指摘する。

「い、いや……アレは……そう、俺が作戦とか練ったら、逆に危ないからで……」

必死に弁解するハルト。

「ハァ……そういうことにしときましょう。とにかく、千雪くんには、ナイフと銃を渡すわ」

「う……頑張ります……」

「ハルトにだったら、誤射しても大丈夫よ。気楽に撃ちなさい」

にこやかに笑うメグリ。

「いやいやいやいや……大丈夫じゃないからな?能力をフルで使って、口径が小さい銃ならわからないが……痛いもんは痛いし、血だって出るからな?」

冷や汗を大量に流しながら、叫ぶハルト。

「大丈夫よ。前にヤっちゃった銃よりも口径はずいぶん小さいから」

「え?ヤっちゃった?」

メグリの一言に、疑問を覚える千雪。

「昔の話よ……気にしなくてもいいわ」

「は、はい……」

「よし、それなら、地下に行った方がいいな、な?メグリちゃん」

 そう言って、ハルトは屋敷の奥へ歩いて行こうとする。

「ちょっと待ちなさい!」

「なんだよ、射撃練習するんだろ?」

「そんなものしないわよ」

「へ?何でだ?もしかして、撃ち方を教えて終わりなのか?」

 まさか、と思いながらか、ハルトは笑いながら訪ねる。

「ええ、そうよ」

 ニヤリと笑いながら、メグリは答える。

「そんな、千雪は銃を持つのも初めてだろ?」

「は、はい……」

 千雪は申し訳なさそうに答える。

「でも、能力があるじゃない」

「へ?」

「どういうことだ?メグリちゃん」

 訳が分からず、キョトンとしている2人に、メグリは、

「だって、千雪くんの能力なら、変異種に近づいても、バレないでしょ?」

 なんて、笑顔でのたまう。

「いやいやいやいや、ちょっと待て……それは流石に危ないんじゃないか?」

「んー……どう?千雪くん?」

 少し、考えるそぶりをして、メグリは訊ねる。

「えーっと、レーダー?とか、そういうのを使ったりしない限りはバレないと思います……」

 正直に答える千雪。

「ほら見なさい。大丈夫じゃないの」

 勝ち誇ったかのような表情で、ハルトを見るメグリ。

「ハァ、止めても無駄そうかな……」

 そう、呟くハルトにメグリは、

「何言ってるの?基本的に、あんたが狙われるのよ?千雪くんが怪我しないように頑張ってね」

 ウィンク付きで、エールを飛ばす。

「ハァ、とにかく、まとめてくれるか?メグリちゃん」

「わかったわ。まず、ハルトは刀と能力で変異種を斬る。その時に千雪くんは、能力と銃やナイフで、変異種の気を惑わせたり、チクチクとダメージを与える。一言でいうと、ハルトは前衛、千雪くんは、攪乱ね」

 ハルトの要望に、しっかりと応えるメグリ。

「ありがとう。さて、千雪、わかったよな?」

「はい、なんとか」

 少し、自信なさげに答える千雪。

「まぁ、何かあったら、ハルトが助けてくれるわよ」

 気楽に笑ながら、メグリはハルトの肩を叩く。

「あ、当たり前だ。末っ子の面倒ぐらい看れるに決まってるだろ?」

 なぜか、少しどもりながらハルトは答える。

「ハルト……あんたもしかして不安なの?」

「い、いや、少し……」

「大丈夫よ。もしかしたら、千雪くんの方がしっかりしてるかもしれないのに……怪我だけ気を付ければいいのよ」

 ハルトの不安を消そうと、メグリは笑いながら声をかける。

「メグリちゃん……何気にそれ……傷つくんだけど……」

 涙目のハルト。

「とにかく、2人とも、千雪くんはしっかりしてるし、ハルトは実力あるんだから自信持って、無理しないでね?」

 真面目な顔をして、メグリは2人に言う。

「おう、ありがとう。メグリちゃん」

「は、はい。頑張ってきます」

 ハルトと千雪は、それぞれの反応でメグリに答える。

「それじゃあ、2人とも、頑張ってね。行ってらっしゃい」

 そう言って、メグリが2人を笑顔で見送ったのは、1時間前。



「そろそろかな……」

 ハルトは、新しいタバコに火をつけ、車を停める。

「え?ここですか……」

 千雪は、まさかこの場所だとは思ってもいなかったらしく、驚いている。

 ハルトが、車を止めた場所は廃墟が立ち並ぶ、町の原型がなんとか判るようなゴーストタウン。ただ、住もうと思えば住めるような、そんな場所だ。

「いや、討伐目標がいるのは、もうちょっと先だろうな……ここで、最後の確認だ。俺は、この刀と能力で変異種を斬る、千雪は?」

 普段とは全く違う。真面目な表情で、ハルトは確認する。

「えっと、ボクは能力と銃とナイフで変異種を攪乱させます」

 緊張の滲んだ顔で、千雪ははっきりと答える。

「よし、OKだな。千雪、もう能力を使っとけ……ここから先、なにがあるかわからないからな」

「は、はい!」

 2人は、ジープから降り、自らの装備の確認をする。

「俺は準備完了だ。千雪はどうだ?」

「はい。ボクもいけます」

 ハルトの問いかけに、うなずく千雪。

「よし、いくぞ!」

 刀の柄に手をかけ、ハルトは歩き出す。

「フゥ……」

 深く、息を吐いた千雪。その姿が、ゆっくりと、だが、確実に周囲に溶け込む。

「グルルル……」

 2人がしばらく歩くと、直ぐ近くから唸り声が聞こえてきた。

「早速か……」

 あたりを見回すハルト。

「いました。あのガレキの後ろです」

「おお、ありがとう。もう、撃つ準備はできてるか?」

「いつでも行けます」

 千雪は、能力で姿を隠し、変異種の居場所を突き止めてきたらしい。

 2人は、件のガレキの近くまで行く。

「千雪、少し離れてろ。すぐに戦闘開始だ」

「は、はい」

 ゴクリと、千雪はのどを鳴らしてハルトから離れる。

「さぁーって……やるか……」

 小さく呟いたハルトの右腕に、大きな変化が生じる。

 綺麗な、灰色の体毛がはえ、骨格ごとまったく別のモノに変化する。まるで、獣のような……しかし、粗暴なだけでなく、その丸太のように太くなった手には刀が握られている。

「ハァ……」

 深呼吸をし、集中するハルト。

「いくぞ……ぅらあぁ!!」

 ハルトは、ガレキごと、刀で、斬る。

「っ!?」

 しかし、その刃は一匹の足に傷をつけるだけだった。

「ハルトさん!」

 千雪の声を聴き、横に飛びのいたハルトの背後から、連続した発砲音と、いくつもの銃弾が変異種のもとに殺到する。

 しかし、その銃弾も、嫌がるようなそぶりを見せるだけで、そこまで、ダメージは与えきれていない。

「グルルルル……」

 唸り声をあげる2匹の変異種。犬のような姿をしているが、足は6本あり、大きさは、人の胸あたりまである。

「傷を負ってる方、頼みます!」

 千雪はそう叫び、無傷な変異種に発砲しながらハルトから離れる。

「わかった!」

 ハルトも、そう叫び返すと、脚を変化させ、人ではありえない速度で犬もどきに肉薄する。

「くらえ!」

 叫ぶと同時に突き出した刀は、とっさに反応した犬もどきの爪に阻まれる。 

「クソッ……案外、爪は硬いのか……」

 悪態を吐きながら、刀を上段に構える。

「隙を突くのは苦手なんだよな……」

 苦笑しながら足に力を入れる。不穏な空気を感じたのか、犬もどきは、距離を取ろうと脚に力を入れる。だが、

「反応がちょっとばかし、遅いかな」

 その背後から、ハルトは声を投げる。犬もどきは、とっさに前足の爪で、刃を受け止めようとする。

「ぅらあっ‼」

 凄まじい気迫とともに振るわれた刃は、爪には当たらず、犬もどきの体を引き裂く。

「フゥ……一撃で決めるつもりだったんだが……」

 そう、呟くハルトの横顔は、一つの疲れも滲ませていなかった。

「さて、千雪が気を引いてくれてるやつだな、次は」

 そう言って、ハルトは銃声の聞こえる方へ歩き出した。

GW中になんとか書き上げました。

当初の予定より短くなってしまい……すいません;

今回から、前回までのことを前書きに書かせてもらいます。

いらない、とか、邪魔、とか、何かあったら指摘の程、宜しくお願いします。

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