2話
遅くなりました……(´・ω・`;)
なかなか、時間がなくて……
感想などなど、お待ちしています。
次は、もうちょい、早く更新できればなぁ(´・ω・`)
「で、何なのっ?この子はっ!?」
お世辞にも、広いとは言えないビルの一部屋で、女性の怒声が響く。
「まぁまぁ、落ちつけよ、メグリちゃん」
少し、間の抜けた男の声が、女性をなだめる。
「あんたのことでしょうが!?少しは自覚を持ちなさい!自覚をっ」
先程、なだめた男が、メグリちゃんと呼ばれた女性の怒りの矛先らしい……。
「そんなに、大きな声出すなって、千雪が起きちまうだろ?」
ヘラヘラと笑いながら、男は言う。
「んー……」
「ほらぁ、起きちまった……」
眠たそうに、起きたばかりの少年は眼をこすり、声を上げる。
「ん……?ハルトさん……?」
「おはよう、千雪。この人が、あの、社長のメグリちゃんだ」
ハルトと呼ばれた(先程まで怒鳴られていた)男が千雪と呼ばれた少年に笑いかける。
「ちょっ、この子に私をどうやって説明したのよっ、ハルトっ!」
メグリが、また、ハルトを怒鳴りつけ、腕を振り上げる。
「まてまて、俺の姉さん替わりだって言っただけだぞ!?」
メグリの本気の眼差しで、ハルトは早くも降参する。しかも、諸手を挙げて、だ。
「ね、姉さん!?確かに、小さい頃から一緒にいたけどさ……」
なぜか、メグリは頬を紅く染める。
「おーい、メグリちゃん?何やってんだ?おーいっ」
ハルトは、メグリに声をかける。
「え、えーっと……」
千雪は、どうしたらいいのか判らず、右往左往している。
「おーいっ、メグリちゃん。千雪に色々説明してやってくれぇ」
「ハッ……ゴ、ゴホンッ、えーっと、千雪くんだったわよね?私は、葉桜メグリ。この、〈葉桜対変異種警備会社〉の社長をやってるわ。あなたを雇おうと思うのだけど、あなたの事を教えてくれる?」
頬を赤らめたことを誤魔化そうとし、千雪に問いかける。
「ボクのこと?でも、名前は知ってるんでしょ?」
千雪は、首を傾げる。
「ええ、名前は知ってるわ。私が知りたいのは、能力のことよ」
「能力?でも、ハルトさんに聞いたんじゃないの?」
「ハルトに訊いても、いまいち要領をえなかったのよ」
溜息を吐きながら、ハルトを見るメグリ。
「ちょ、ちゃんと説明したろ?」
心外だ、というようにハルトは叫ぶ。
「あんたの説明が分かりにくかったのよ!あんたはバカだから!」
「バカって言うなぁ!」
まさに、姉弟喧嘩のような言い合いをする。夫婦のじゃれ合いにも見える……。
「えーっと……」
2人についていけない千雪は、またも、右往左往……。
「ああ、ゴメンゴメン。そういうわけで、あんまり、あなたの能力が解ってないのよ……だから、教えてくれる?」
軽くパニック状態になっていた千雪に、メグリは気付き、千雪に訊ねる。
「えーっと、ボクも、感覚で使ってるから、うまくは説明できないんですけど……」
「いいのよ、今は全く解ってないんだから。少しでも、情報欲しいのよ」
「ボク自身の存在を誤魔化すっていうか……ボクだけ、他のモノに見せたり、見えなくしたりするんです。ハルトさんに能力を見せたときは、ハルトさんを驚かせたくて、醜いバケモノのように見せたんです」
「自分の体は変化するの?ハルトみたいに……」
「い、いえ。そう、見せているだけです。間合いは変わりません」
「そうなの……」
「はい。なので、物理的な攻撃力はないんです……」
少し、申し訳なさそうに顔を伏せる。
「何で、申し訳なさそうにするのよ。スゴい能力じゃない……じゃあ、前衛はハルトで……」
ブツブツと、メグリは独り言を言い始めた。
「おーい、メグリちゃーん。また、自分の世界に行ってるぞ?」
そんな、メグリを笑いながらハルトは声をかける。
「へ?」
肩を叩かれて、始めて我に帰るメグリ。
「ボクは……どうしたら……」
不安げな声を出しながら、メグリに訊ねる千雪。
「ああ、ゴメンね。ほら、ウチの会社って私とハルトしかメンバーいないから……千雪が加わった時のシュミレーションをちょっとね……」
気まずそうに、笑うメグリ。それを見ながら、ハルトはケラケラと笑っている。
「うるさいわよ、ハルト!給料減らすわよ!」
そんなハルトに、メグリは頬を赤らめながら、サラッと脅しをかける。
「ちょ、これ以上給料減らされたら、干からびるぞ?」
「どうせ、ウチに住んでんだから、ご飯は食べれるでしょう?干からびないわよ」
ハルトは、すでに給料を減らされているようだ。
「へ?ハルトさんって、社長さんと一緒に住んでるの?」
驚いた千雪が、口を挟む。
「そうよ?言ってなかったの、ハルト?」
「姉弟同然に育てられたって言ったから、判ってるとばかり……」
ハルトは、気まずそうに頭を掻く。
「やっぱりバカね……」
メグリは、残念な人を見る目でハルトを見る。
「だから、バカって言うなっ」
「とにかく、千雪くんは、ウチの屋敷に住んでもらうわ。依頼が来るまでは、まぁ、ゆっくりしてましょう」
なんて、言ってメグリは笑う。
「は、はい!」
嬉しそうに千雪は笑う。
「そういえば、千雪に、色々説明しなくていいのか?」
嬉しそうに笑う千雪を、嬉しそうに眺めていたハルトが不意に呟く。
「え?あんた、何も説明してないの!?」
「ムズカシイ事は、俺も、ちんぷんかんぷんだからな!」
何故か、胸を張ってハルトは笑う。それを見て、肩を落とすメグリ……。
「ハァ、判ったわ。千雪くんは、変異種について、どこまで知ってる?」
「えーっと……異転災の時から現れたってことしか……」
考えるように、視線を宙に漂わせた千雪は言う。自信の無さげな千雪に、メグリは笑いかける。
「うん、一般的に知られているのはその程度ね……変異種は、人のように心臓と、脳があるの。人は、その二つが破壊されると即死するわね?変異種には、〈異心〉と呼ばれる臓器を、基本的には心臓付近に持っていて、そこを破壊しても、変異種は死ぬわ。変異種は能力を行使するものもいるわよね?能力は、異心の性能に大きく依存するわ。」
「そんなものがあるんですね……」
真剣に聞いている千雪を尻目に、ハルトは大きなアクビをする。
「ハルト!あんたも聞いときなさい、どうせ覚えてないんでしょ?」
「ランク分けだけ覚えてれば大丈夫だろ?千雪、理論なんか知らなくても、大丈夫だ!」 ハルトは気楽に笑う。そんなハルトに、
「じゃあ、ランク分け、説明しなさい!」
メグリは胡散臭そうにハルトを睨む。
「え!?わ……わかった……。ゴ、ゴホン……ランク分けってのは、変異種の危険度に対しての指標だ。CからA++まであって、C++とB、B++とAが、同じ位の危険度だな。Cは、能力を使えない個体、Bは、能力を使うが一般兵器で対応が可能な個体、Aは、能力を使い、一般兵器で対応不可能な個体につけられる。+は、それぞれで危険度が上位になるとつけられる……どうだ、メグリちゃん?完璧だろ?」
胸を張って笑うハルト、それを意外そうに眺めるメグリ。
「うん、どうしたの?体調が悪いなら、医者にかからなくちゃっ……」
「何でそうなるんだよっ!?」
意外そうに、ではなくて、心配そうに、だった……。その反応に、ハルトは不服そうに、頬を膨らませる。
「ゴメンゴメン……ホントに意外だったから……でも、惜しいわね」
「……惜しい?」
「ええ、〈鬼〉のような例は?」
諭す教師のようにハルトに訊ねるメグリ。
「ああ!そうだった。一部、人語を介す変異種もいて、ランクの前に『特』の一文字が付くんだよ。〈鬼〉って言うのは、その、特A++の変異種の一部で、ここ、〈旧シコク〉に住んでるヤツらで、友好的なヤツらだ」
嬉しそうに話すハルト。
「え?言葉を喋る変異種もいるんですか?あと、〈旧シコク〉って?」
千雪は、疑問に対して素直に訊ねる。
「ええ、かなり稀なケースよ。〈旧シコク〉っていうのは、日本列島の四国の呼び方よ。他の主な都市は、〈旧サッポロ〉〈旧センダイ〉〈旧トウキョウ〉〈旧ナゴヤ〉〈旧オオサカ〉〈旧ヒロシマ〉〈旧ハカタ〉があるわ。都市ごとに、慣習や法が違うから、もし、行くことがあったら説明するわ」
笑顔で説明するメグリ。
「そんなにあるんですね……」
「どうした、千雪?」
熱に浮かされたような、遠くを見るような目で、千雪は呟く。ハルトは、少し、不安げに、千雪に声をかける。
「い、いや……たくさんの都市があるんだなぁって……」
恥ずかしながら、誤魔化すように千雪は笑う。
「とにかく、ウチの会社は変異種の討伐依頼が、主な仕事よ。危険もあるから、ハルトを盾にして、頑張ってね」
「はいっ」
「まてまてまてまて、俺は盾なのか?」
元気よく返事をする千雪と、突っ込むハルト。
「だって、しぶといじゃない?」
「しぶといって、なんか酷くないか……?」
哀愁の漂う眼をするハルト。
「じゃあ、あんたは、千雪くんに前衛をやらせるの?」
「……スイマセンでした。でも、盾は酷いだろ?」
そんなやりとりを見て、千雪は微笑む。
(ここは、居心地が良いなぁ……ボクは、この人達と、家族になれるんだろうか……)
そんなふうに千雪は考える。
「千雪、屋敷に行こうぜ」
ハルトが、難しい顔をする千雪に声を掛ける。
「屋敷って?」
千雪は尋ねる。
「私達の家よ」
メグリが、笑いながら応える。
「それじゃあ、行くか。メグリちゃん、戸締りよろしくなぁ。いこうぜ、千雪」
車の鍵を指で弄びながら部屋を出る。
「はいはい。さぁ、千雪くん、行きましょう」
そう言って、部屋を出る2人、その2人の、新しい家族について、千雪は歩む。
「ボクは、大丈夫だ……」
そう、呟いて、千雪は部屋を出た。