プロローグ
〈異転災〉そう、後に呼ばれる日、人々は平和な休日を過ごしていた。
ある人は、友人とファーストフード店でダベり、ある人は、家族サービスに努め、また、ある人は、日頃の疲れを癒すため、と自分に言い訳してベッドで寝ていた。
それは、何時始まったのかも気付かれぬまま、一部の人以外は、何時終わったのかも理解されないまま、確かに世界は転じた。
念じるだけで、手から炎を出す者が現れ、獣のように地を駆ける者が現れたとき、人々は始めて気が付いた。転じてしまったこと、変わってしまったことに……。
「私達は、神に選ばれたのだ……」
と、ある人達はそう言った。ある人達は疑問を抱いた、
「人類は進化したのか?なぜ?どうして……」
そして、解き明かそうとした。
しかし、すべての人が能力を開花させたのではなく、むしろ、全人口の5分の1程度の限られた程度しか、能力は開花しなかった。ある地域では、能力者は排除されそうになり、また、ある地域では、能力者と非能力者との殺し合いが始まりそうになった。
ただ、実際には争いは起きなかった。いや、争う余裕など、全く無かった……。能力者も非能力者も生き残るのに、精一杯だった。
能力者の存在が確認されていたのと同時期、まるで、異世界ファンタジー小説から抜け出してきたかのような、異形のモノが世界各地で出現したのだ。能力者の出現が、公式に認められてから、わずかに2日後だった。これらのバケモノは、異転災以前から存在していた動植物を混ぜ合わせたかのような姿のため、〈変異種〉と名付けられた。
変異種は何故か人を襲い、生息地を拡大させた。それによって、既存の社会は国の枠組みが意味のないものになった。それは、日本も例外ではなく、一部都市、地域ごとに独立した自治区が形成され、独特な社会を構成した。