あほとすっぴん
開いてくださってありがとうございます♪中途半端な方言ですが、うちの地元のなまりなのでご了承ください。
あたしはテレビにむちゅー。
隣でぶすっとしとるやつを、まる無視して。
おけしょーの基本とか、はやりの色とか。
最近おけしょーを始めたあたしは、知らんことばっかやから。
へー、とかふーん、とか小さくつぶやきながら。
あたしはテレビにむちゅー。
「なーなー」
「んー?」
「ヒマ」
「ふーん」
隣でぶすっとしとるやつが、話しかけてきたけど、あたしはかまってやらん。
だって、さっきひっどいコト言ったんやもん。コイツ。
「オマエの顔なんか、けしょーしてもせんでもおんなじ」
さっきとまったく同じセリフをくりかえす。
キズつくことゆわんといて。
あたしが、どんだけがんばってかわいくなろーとしとるんかなんて、
なんもわかってないんやね。
誰のタメやとおもっとるんよ。
むかつくけど、あんたがちょっとかっこいーから。あたしは。
ちょっとでも、
「お似合いやね」ってゆわれるために。
ちっちゃい目ぇとか、頑張っておっきく見えるようにとか、しとるんに。
そんなんも、わからんと。
「やからなぁ、テレビばっか見とらんとさ」
腕をのばしてテレビを消す。
「あっ、ちょっと見とるのに」
「かまって?」
そー言って、あたしの投げ出した足の上にごろんとねっころがる。
「重いわ」
「えーやん」
「どいて」
「やーや」
「どかんと、こーやよ」
「いででででで」
思いっきり鼻をつままれたコイツは、テイコーするけど、ムダなテイコー。
どんどん涙目になる。
でっかい体のワリに、すぐ泣くんよね。コイツ。
「そんなに痛いんやったら、さっさとどいたらいーんに」
「いやじゃ、どいたらん」
「なんで」
「せっかくのヒザマクラや」
ハナのつまった声で、涙目で。
だんだんかわいそーになってきたから、手を放してやった。
「ふー」
「あほやね、あんた」
「どーせあほや」
まだ涙目で、すねたようにあたしを見るコイツが、なんかかわいく見えてきて。
くすっと笑うと、こいつの顔がつられて明るくなった。
あほやな。
「ほら、やっぱオマエの顔なんかけしょーしてもせんでもおんなじやわ」
「は?」
「笑った顔はけしょーしとってもしとらんでもかわいーんや」
「は?」
「好きやわー」
「…あっそ」
ヒザの上でゴロゴロしながら、にぱーっとわらう。
なんよ。
そーゆーイミかい。
あほ。
「さっきまでちょっとキズついとったあたしのココロ、どーしてくれるん」
「え、キズついたん?」
「あたりまえや」
「そっかー、悪かったなぁ」
大して悪びれてもないよーな口調。
ムカツク。
むかつく。
と。
いきなり、ヒザが軽くなった。
「これで、許して?」
ちゅ。
「っ、何すん!」
「ちゅー」
「あほ!」
「しっかし、気持ち悪いなぁ」
「なにがよ」
「その唇のてかてかのべとべと」
「グロスってゆってよ」
「つけんでいーわ、そんなん」
「なんでよ」
「膜みたいでイヤなんやもん」
「…」
せっかく、かわいくなろーとしてがんばっとるんに。
「だから、すっぴんがいちばんかわいーんやってば、オマエは」
「…あっそ」
せっかく、おけしょーがんばろうと思ったんに。
やる気なくなったわ。
あほ。
あほ。
ほんと、あほ。
このあほ。
むかつくから、ちょっと嬉しくてくすぐったいことなんか、絶対教えたらん。