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道化上等!  作者: 本間 甲介
第二章
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昼食を利用して

  色とりどりの花に囲まれた、四方を校舎に囲まれた中庭は、屋根付きの椅子と机や、ベンチが置かれており、昼休みになると生徒が昼食を取りにやって来る。


 かくいう俺もその一人、巧を誘って男同士、色々恋話(主に巧に関して)をするつもりだったのだが……。


「木城くん! お弁当、ちょっと多めに作ってきたから……よかったら少しいらない?」


「いや待ちたまえ波照間くん。彼は今日、私の料理を食べると約束していたんだよ」


「北出さん、コンビニで買ったゼリー飲料は料理とは言わないわ。巧、これ前に頼まれたやつ……」


 四角い木のテーブル、巧を囲むようにして、女子三人はそれぞれ持参した昼食を、巧の前に見せる。


「あ、その……僕さっき学食でパンと牛乳を買ってきたんだけど……」


 巧はしどろもどろになりながら、三人に応える。ちっくしょ、何でこういう時に限って、この三人が揃うんだよ……!


 学食において巧の昼飯の買い物に付き合った後、中庭において二人で食べ始めた。


 ……と思ったら、ほぼ同時といっていいぐらいに八原、北出、波照間がやってきた。


 巧と向かい合うようにして、母お手製の弁当を食べていた俺だったが、三人によっていつの間にか、テーブルの一番端っこの方に追いやられた。俺はやけ食いのように弁当をさらっていき、一気に食べ終え、三人を観察することにした。


「巧くん、どれが一番美味しい? やはり私のかい?」


 と、唐揚げを食べさせた北出。


「木城くん、その……無理してみんなのは食べなくていいから……だからあたしのだけは……」


 遠慮しているような仕草の割に、意外と積極的な波照間。


「巧、『優先順』を考えれば、まずはあたしの作った弁当を食べるべきだと思うのだけれど」


 まるで事前に約束していたかのように言う八原。


「う……うん……」


 それらを巧は、苦しそうな表情を見せないようにしながら、食べていく。

 

「まあまあ御三方、少しは落ち着きなさいな」

 

 あまりに全員、自分勝手な言い分だったので、俺は三人に声をかけ、視線を集める。三人は想像以上に驚いていた。


「……え、いたの佐治くん?」


「なんでそんな隅っこの方で食べているんだい?」


「来たなら来たって言いなさいよね」


「――ツッコまんぞ! 何があろうと、絶対にツッコまんぞ!」


 三者三様、あいも変わらずひどい言い草だった。俺だからまだいいものの、他の奴に同じ態度とったら、いじめだぞこれ。


「ごほん……それでだなその弁当、もし良かったらこの俺が食べてやらんこともないぜ!」


 困っている巧を救うため……といってしまえればいいんだが、実際は「食い足りねえ!」と思ってからの言葉だった。俺はテーブルの真ん中に並べられた、それぞれの食べ物に手を伸ばす。


「本気でやめて」


「まさかのマジレス!?」


 八原の尖った氷のような言葉が、ぐさっと胸に突き刺さる。他の二人も言葉には出さないが、同じような視線を送ってくる。うっわ、なにこのアウェイ感? 俺が先に巧を誘ったっていうのに……!


「まあまあ、みんな落ち着いて。えっと波照間さん、北出さん、加々美。ちゃんとみんなの分食べるから安心してよ」


 この場をなだめたのは巧本人であった。巧は買ってきたパンを、同じく買ってきたパック入り牛乳で流し込む。そして巧は、目の前に並べられた食べ物を、一つ一つ、ゆっくりと丁寧に美味しそうに食べていった。さすがに女子たちも、食べてくれる順番に関しては文句を言わなかった。


「……うん、どれも美味しいよ!」


 巧は食べながら三人に向かって感想を述べる。額から汗が数滴こぼれ落ちている。すると三人の顔はぱあっと明るくなった。


 和気あいあいと食べながら楽しげに会話を繰り広げる巧たち。もう完全に俺の存在は忘れられていた。


 ……さすがにこの流れの中に入っていく勇気はない。本当なら煽って茶化すんだが、これはこれで「チャンス」でもある。俺はそそくさと弁当箱を片付ける。


「じゃあな、巧」


 聞こえないと思いつつも一応声かけ。俺は中庭をあとにする。


「あ、謙也ごめんね!」


 ――まさかの反応だった。俺は振り返らず、手を上げて巧に応える。ったく、ホントお前は、誰にでも「良い奴」だよ。

 

 ぶっちゃけた話、俺は巧が誰と付きあおうともどうでもいい。そりゃ互いの気持ちがちゃんと通じ合っていることは大事だ。当たり前だがそれが「恋人」ということだ。


 だが、なぜか、どういうわけかわからないが、俺は木城巧が誰かと「恋人」同士になるという未来が、全然イメージできなかった。


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