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道化上等!  作者: 本間 甲介
第二章
13/47

始動

「――にしても俺って意外と、すごくね? 普通だったら卒倒もんだったいうのに……」


 朝のホームルームが始まるまでの自分の席に、両手を枕にして寝たふりをしながら、俺は自らの順応性について、自画自賛していた。


 昨日、俺が渋々ながらも月草に協力すると誓った後、月草は神社に戻るといって、窓から部屋を出ていった。


 俺的には「居候キャラ」にでもなってほしかったが、よくよく考えると、あんなカワイコちゃん(人じゃないとしても)が、終始俺の部屋にいることを考えれば、そっちの方がよかったのかもしれない。(おちおちギャルゲもできないしな)


 そんで朝になって、再び俺の部屋に無断で侵入してきた。そして開口一番、月草はこう言った。


「昨日はお主に我の存在を早めに気づかせるために、ふぁみれすに行く事にしたが、実際のところ、我は性質上あまり人の多いところへは行けぬ。じゃから基本的には、お主一人に頑張ってもらうことになる。学校が終わり次第、また我の神社へ来い」


 なるほど、だから昨日も急に俺のテーブルの近くに、人が集まってきたから隠れたのか。俺は昨日、月草の見せた珍妙な行動についてを納得した。


 だが、てっきり俺に取り憑くように学校までついてきて、スタンドみたいにサポート役に回ってくれるものかと思っていたので、その言葉は衝撃的だった。


 まあ、だからこそ、俺に協力を求めたんだろうけど。……というか、本当になんで俺なんだろう? 

 けっきょく、あいつはそれについてははっきりと教えてくれなかった。だが思い当たる点はある。それはやはり、俺が巧の親友であるということだ。


 巧に対し干渉不可能であると察した月草は、たまたま干渉可能であった、親友の立ち位置にいる俺を使うことで、ごく自然に巧の恋愛を助けられるんじゃないかと思ったのかもしれない。


 さらにギャルゲによって鍛えられた、「女の子の気持ちに敏感」な力にも着目したのかもしれない! 


 ……いや冗談とかじゃなくて、俺は主に身の回りもとい「木城巧」限定ではあるが、俺は某有名恋愛シミュレーションゲームの親友キャラのごとく、女の子が巧に対して抱いている感情――好感度がどれくらいであるのかが分かる。それは感覚的なものだが、かなりの的中率を有している。


 ――まあ、月草がそれを知っているとはとうてい思えないが、兎にも角にも、俺はこれから何をすればいいのかよくわからなかった。

 たしかにギャルゲは好きだし、得意であるがそれはあくまで「ゲーム」、現実とは違う。


 さらに俺が女の子を「攻略」するわけでもないので、「主人公視点」から進むギャルゲの知識をそのまま使えるわけではない。 


 こんなこと、誰かに相談できるようなものではないし、けっきょくは一人でやらなければいけない。例えるならネトゲにおいてソロプレイで超弩級のモンスターを狩るかのようなものだろうか。まあ、レベル制じゃない分、頭と道具を使うことでなんとかなるって意味なんだが……。


「ねえ佐治」


 朝っぱらから考え事なんてするものじゃない。危うく寝かけそうになった。だが、俺を呼ぶ声によってなんとか目を開いた。


「……YOーカガミン、おはー」


 寝ぼけ半分に、俺は八原に挨拶した。


「カガミン言うな!」


「――いってえーっ!」


 思い切り足を踏まれた。眠気が一気に覚めた。


「お、おま、そこはせめて頭に拳骨とかだろ……!」


「誰があんたの、整髪料をいっぱいつけた汚い頭に触れるもんですか。いい加減髪の色元に戻しなさいよ」


「こりゃ地毛だって何度も言ってんだろ!」


 前にも言ったはずなのに、忘れたのか? 俺のこの茶髪は生まれつきだ。俺は髪の毛を一本抜いて、八原に毛根までちゃんと茶色であることを見せる。だが八原、それを払いのける。て、てめえ貴重な髪の毛を! 

「巧はまだ来てないみたいだけど、どうしたの?」


「けっきょくそれかよ! ……用事があって遅れるってよ」


「朝海さんを家に送っていった」なんて教えたら、無駄にこじれたことになりそうだ。俺はギリギリのところで答えをはぐらかした。


「用事って何よ」


 だがそこはさすが八原! 簡単には引き下がらない。


「し、知らねえよ! ってか自分で聞けばいいだろ、携帯の番号知ってんだからよ!」


 ちなみに巧の携帯番号は、俺が八原に教えた。八原のメアドを聞くという見返りつきでだ。


「なっ――! べ、別にちょっと気になっただけよ! 電話するほどじゃないわ!」


 髪の毛を逆立てるようにして、強く否定する八原。ツンデレのテンプレみたいな反応しやがって。 


「ところであんた、いつもに比べてテンション低いようだけど、何かあったの?」


「……別に~なんでもねえよ~」

 本当のことなんて言えるわけがないので、俺はとぼけるようにして、八原の言葉をかわす。というかこんな言葉を八原にかけられるということ自体に驚いた。


「ふうん、それならいいんだけど。あんたはの持ち前は『馬鹿』ってことなんだから、もっとしゃきっとしなさいよ」


 励ましてんだかけなしてんだか、よくわからない言葉だった。


「へいへい、頑張るよ。ありがとな」


 こんな言い方だが、一応礼は言っておこう。俺は手をひらひらさせながら応えた。


「おらー、席につけー」


 そこで担任が入ってきた。


「じゃあね、頑張りなさいよ」


「ああ、頑張った俺に惚れんなよ?」


「それは絶対にない」


 ピシャっと断言して、八原は自分の席へと戻った。いつものようなやり取りだったが、それは俺に活力をもたらした。


「それじゃ出席を取るぞ、雨見……」


 担任が点呼を取っていく。八原の言うとおりだよな……。


「……佐治」


「ういっすっ今日も元気な佐治謙也です!」


 あれこれ悩んでも仕方ない。俺は気合を入れるように、力強く元気に、それでいて馬鹿っぽく、返事をした。


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