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道化上等!  作者: 本間 甲介
第二章
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恋話?

「なあ巧、ちょっと聞きてえことがあんだけど」


 一夜明け、朝の学校へ向かうまでの道すがら、俺はまず軽いジャブとして、巧に確認してみることにした。


「謙也、顔色悪いみたいだけど大丈夫?」


「……気にすんな、昨日ギャルゲをやってて遅くなっただけだ」


「相変わらず好きだね」


「お前にはわかんねえだろうな……っと、話が逸れちまった。なあ巧、お前って今、『好きな奴』っていんのか?」


 突然すぎる俺の奇妙な問いに、巧はしばし口を塞いだ。


「……えっと、僕は謙也のこと、ちゃんと友達だと思っているよ?」


「そうじゃねえよ! なんだその解釈は! 聞く人が聞けば誤解すんだろ! ってかありがとう!」


 見当違いな答えへのツッコミと嬉しさからの感謝の言葉を一気に送る。ったく、こいつは変なところで鈍いやつだ。さすがギャルゲ的主人公要素の一つ、「鈍感」を持った奴だ。


「俺が聞いてんのはラブ的な意味でだよ、L・O・V・E!」


 一言一言強めてもう一度尋ねる。これでわからなかったら、耳鼻科に行ったほうがいい。


「ああ、そっちの意味か。ビックリしたよ」


「そんな考えに至ったお前に、俺のほうがビックリしたわ! で、どうなんだ?」


「それはだね……」


 あごに手を当て、巧はしばし考えこむ。お、これは意外といけるんじゃ……。


「――うーん、どうだろうなあ」


 と思ったら、ある意味予想通りの答えだった。ちっ、やっぱりはぐらかしたか。


「なんでまたそんなことを、急に聞くのさ?」


「そ、そりゃあおまっ、あんなに女の子に囲まれていたら、好きな女の子の一人や二人、『いるんじゃね?』って思うだろ!」


 普段はこんなこと聞かないので、違和感に思われるかもしれない。俺は語気を強めて、誤魔化すように叫ぶ。巧は手をひらひらさせ首を振る。


「いやいや、そんなことないって。僕なんか謙也の足元にも及ばないよ!」


「……それはひょっとして、喧嘩を売っているのか?」


 だったら良い値で買ってやろう。俺は巧に対し身構える。……自覚しているのが情けない。


「だって謙也、今まで色んなゲームの中で、色んな女の子と付き合ってきたじゃないか。攻略サイトとか見ずに、自力でやってきたんでしょ?」


「ふっ、あったぼうよ! 女の子を落とすのに他人の力なんぞ借りてられっか。どんなに時間をかけても、その制作者の意図を察することで……ってやっぱ喧嘩売ってんじゃねえか!」


「おっとあぶない!」


 危うくノリに流されるところだった。俺は今度こそ、巧の顔に向かって右拳を振りぬいた。だが、なんなく止められた。


「冗談だよ冗談! そんなに怒んないでよ」


 爽やかスマイルで取り繕うとする巧。くそ、いい笑顔しやがって……。俺は右拳を引き、もう一度同じ事を尋ねる。


「はあ……まあいいや。で、ホントにいないんだな?」


「うん。……あ、だけど女の人に興味がないってわけじゃないからね?」


「何変な勘違いしてんだ! 俺にそのケはねえよ!」


 巧の俺を見る目がよそよそしかったので、俺は巧が変な勘違いをしているとわかった。自然と大声になったせいか、道行く生徒(主に女子)がこちらを見てきていた。


 ……脱線し始めた。俺は次に、巧に本題を尋ねることにした。


「……じゃあよ、お前のことを――」


「あ、たっく~ん! おはよ~!」

 

 だがそれは、甘ったるい、間延びした女性の声によって阻まれた。どこから現われたのか、巧の背後に、スーツ姿の見知らぬ女性が立っていた。


「ちょっ、朝海さん! お酒臭いです!」


「う~ん、今までカラオケでのんれははらへ~。どひゅ? いいニホいする?」


 朝海と呼ばれた女性は、巧の首に手を回し、ハーと巧に向かって息を吐く。俺まで臭ってこないが、巧の苦悶の表情を見ればどんな匂いかわかった。う、うらやま……じゃななかった。俺は周りの同じように学校へ通う生徒たちから注目されていることに気づき、ごほんとわざとらしく咳をはいた。


「ん? たっくん、その子は~?」


「僕の親友の謙也です……というかいい加減離れてください!」


 俺に対する自己紹介の後、巧は強引に朝海さんを引き離す。にしても……こいつは本当に……。


「も~つれないにゃあ~。あ、謙也くんですか~? わたしのなまえは、敷山朝海で~す! たっくんの彼女で~す!」


「あ、どうも……」


 ふらついた足取りで自己紹介をする朝海さん。俺は反射的に会釈する。……というより待て、今「彼女」って聞こえたんだが……。


「住んでいるアパートの隣の部屋ってだけだから! ほら、朝海さん。とりあえず家に帰って酔いを覚まして……」


「う~ん? やだあ、たっくん、家まで送って~」


 ぎゅっと巧の手を掴み、子供のように駄々をこねる朝海さん。だが巧は、今度はそれを拒もうとしなかった。


「……わかりましたよ。ごめん、謙也。そういうわけだから、今日は僕は遅れるよ」


「え?」


「ほら、ちゃんと一人歩いてください、朝海さん」


「お姫様抱っこ~」


「しません!」


「……え? え?」


 俺が戸惑う内に、巧と朝海さんは学校のある方とは逆へと戻っていく。角を曲がり、二人の姿は見えなくなったところで俺はいつもなら思わないことを叫んだ。


「これ以上フラグたてんな!」


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