↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

隣の席

掲載日:2026/09/10

 仕事を終え、疲れきった体を引きずり会社を出て、なんとか乗り込んだ電車で座席が空いていた時に感じる幸福感といったらもう最高だ。

 ましてや1番端が空いていたら、寄りかかりながら最寄り駅まで過ごすことが出来る。

 あぁ、幸せだ。

 今日も遅くまで残業していたけど、これで少し報われる。

 俺は端の座席に腰を下ろし、鞄を抱えながら目を閉じた。


 しばらく電車に揺られ、何駅目かで隣に座っていた人が下車したようだ。

 実際目を開けて見たわけではないけれど、衣類の擦れ具合で分かった。

 そしてすぐにまた別の人が座る。ふわっと柑橘系のような香りが漂ってくる。

 隣に座ったのは女性なのかもしれない。

 なんだか気まずくて、俺は端に更に身を寄せた。


 またしばらく揺られていると、肩に重みを感じるようになった。

 香りもさっきよりも強く感じる。

 もしかしたら隣に座った女性が眠ってしまい、揺れた拍子に俺の肩に寄りかかっているのかもしれない。

 どうするべきか。

 このままじっとしているべきか、それとも肩を少し動かしてアピールすべきか。

 別に寄りかかられていることが嫌とかではないんだけど、こういう時ってどうすればいいのか悩んでしまう。

 俺も眠って意識を手放していれば悩む必要もないんだろうけど。

 とりあえずもう少し、もう少しだけ動かずにいよう。

 もしかしたら自分で気付いてどいてくれるかもしれない。


 またまたしばらく揺られ、何駅か通り過ぎる。

 けれども肩の重みは一向にどく気配がない。

 アピールするか? お姉さん寄りかかってますよと肩を動かしてアピールするべきか?

 すぐに判断出来ない俺の悪い癖。

 飲食店に行ってもすぐに注文を決められない。

 仕事の判断も遅いから、結局残業する結果になる。

 あぁ、俺はどうしてこんなにも優柔不断なのか。

 流されるまま、自分で選択することが出来ない。

 選択することで発生する不安が俺をいつも縛りつける。

 だから選択せずやり過ごすことで微かな安心を得るのだ。

 でも、いつも後々で思う。

 こうしていれば良かった、ああしていれば良かった。

 後悔ばかりの日々。

 肩を動かすかどうかだけでここまで悩むなんて、俺は本当にどうしようもないやつだ。


 選択出来ずに過ごす日々。

 そんな俺に、何も変わらない日常に不満を抱くことは許されない。


「当電車は区間快速の為、次の○○は通過致します」


 今日も俺はやり過ごす。

 肩に感じる重みをそのままに、この電車のようにやり過ごしていく。

決断力、大事。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。