8話 やり直し勇者は学ばない 寄生虫エンド
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第8話『やり直し勇者は学ばない 寄生虫エンド』
こりないクロードさんの活躍をお楽しみください!
――スロット1 ロード後 談話室前――
「着いたぞ! ここが目的の部屋だ」
聞き慣れた声と台詞が聞こえ、俺は目を開ける。
これで3度目の……俺は前回の失敗のショックを引きずったまま立ち尽くしていた。
「どうしたクロードよ? 気分でも悪いのか?」
立ち尽くしている俺に、陛下が不思議に思い、問いかけてきた。
「あっいえ……」
俺はとっさに返事をしようとするが、少し考えたのち陛下に願いでた。
「そうですね、柄にも無く緊張しているかもしれません……大変申し訳ありません。少しだけ、気持ちを落ち着かせる時間をいただけますでしょうか?」
「ふむ……いささかことを急かし過ぎたかな? よかろう、直ぐそこに内庭がある、そこで気持ちを落ち着かせるが良い……ただ部屋のなかに人を待たせているのでな、そんなには待てぬぞ?」
「ありがとうございます……」
俺は談話室の前から離れると近くにあった内庭へ足を運び、ベンチに腰掛けると、俺はセレーネに話しかけた。
「セレーネ……いるんだろう?」
「はい、はぁ〜い! 呼びましたぁ?」
そう言うと彼女は、俺の目の前にふわりと現れた。
「いやぁ〜クロードさん、さっきのルートでは大変おもしろ……残念な結果でしたねぇ〜」
「お前、今おもしろいって言おうとしたよなぁ!?」
「だってぇ〜、あんな自信満々だったのに、結局やってること"保留"と一緒なんですもん!」
「一緒ではなかっただろ! みんなを大切にした素晴らしい作戦だっただろ!」
「いやいや、その結果『誰も選べない』なんて、上げて落とした分、保留よりもタチが悪いですよ!」
「……そうなのか?」
俺の問いかけにセレーネは、呆れたように呟く。
「はぁ……本当にクロードさんは、今までどうやって生活してきたのか心配になるレベルの社会性の低さですよ? いったい今までどんな生活を送ってきたんですか?」
「なんか、お前だけには言われたくない台詞だな……」
そう言いつつ俺は、今までのことを思い出していた……
「城で勇者見習いとして暮らしていたときは、朝起きて訓練をして寝るを繰り返す日々だった……旅をしていたときの町や村での交渉などはイリーナかその侍女が全部手配してくれてた……あと難しい話はルーシェがだいたいしてくれたし、クレスが同行するようになってから値切りとか報酬の上乗せの交渉とかもするようになったな……旅が終わってからはだいたいセバスを通してたから、俺の許可が必要な物だけ聞いていたし……」
俺が言い終わるのを待たずにセレーネが割って入ってきた。
「要は、クロードさんは現場専門で、交渉とかの対人関係は全部人任せだったってことですね?」
「……まぁ、そうなるな」
俺は彼女の言葉に言い返すことができず、ただ肯定するしかできなかった。
「まぁ、さっきのでクロードさんが人の心がわからないサイコパス野郎だと、よくわかりました! ……でこれからどうするんですか?」
「サイコ……パス? よくわからんが、とりあえず褒められていないことはわかった……そのことなんだが、さっきの話のなかで気付いたことがあるんだ」
「うん?……なににですか?」
「さっきお前言ってたよな? 『上げて落とした分タチが悪い』て……」
「はい、言いましたけど……それがなにか?」
俺は今度こそ、この状況を打破する答えを得たと自信満々になりながらセレーネの問いに答えた。
「つまり、上げてダメなら下げて下げまくるんだ!」
「ほうほう、それでどうやって下げるんですかぁ?」
「まぁ、すぐにわかるから見ていろよ!」
そう言うと俺はベンチから立ち上がり、陛下の待つ談話室へと歩いて行った。
「はぁ……あれだけ彼女たちに好意的なことをスラスラとつっかえずに喋っていたのに、なぜ結婚は嫌なのでしょうか、あのヘタレ勇者は? ……てか気付いてないんですかねぇ? 彼女たちにあれだけのことが言えるって普通じゃないってことに……まぁ、おもしろいからいいけどぉ~」
セレーネが背後でなにかぶつぶつ言っているのが聞こえたが、どうせまた失敗するとか言っているのだろう……気にするだけ無駄だ。
そして陛下の元に戻ると、陛下が俺の姿に気付いた。
「おぉ、クロードよ! もう準備はよいのかな?」
「はい! お心遣い感謝いたします陛下! もう大丈夫です……」
俺は陛下に力強く応えると、その返事に満足した陛下が扉の前で待機している近衛騎士に目線を向け頷いた。
近衛騎士は陛下の合図に反応し扉の引手に手をかける。
そのとき、俺はあえて近衛騎士にも聞こえるように、陛下に謝罪の言葉を口にした。
「陛下……この後の無礼を先にお詫びいたします……しかし必要なことなのです」
「うん? どういうことだ?」
「今にわかります……」
「……そうか」
陛下は不思議に思いつつも、俺の言葉を信じて返事をしてくれた。
そして、運命の扉が開く……
そしてその先には、戦場のなかで見慣れたはずの……(以下略2回目)
「遅い! クロードのことみんな待ってたんだよ!」
部屋に入って早々に俺を叱責するクレス。
「クロードさま、お待ちしておりました……どうぞこちらにおかけください」
そう言って俺を隣に座るように促すイリーナ。
「いつまで惚けてるの? そのっ……テーブルのクッキー……美味しいわよ……」
そう俺に言葉を詰まらせながら話すルーシェ。
彼女たちがおもむろに声をかけてきた……
そして俺は今度こそ、この事態を無事にやり過ごす為の作戦にでた。
「わりぃわりぃ、ちょっと可愛いメイドを見つけて口説いてたんだけど、逃げられちゃってさぁ」
俺はそう言いながら、空いていたイリーナの隣に勢いよく腰掛けた。
「いやぁー、やっぱ王族勤めのメイドって最高だよなぁ! 1人くらいお持ち帰りできねぇもんかねぇ?」
「クッ、クロード……?」
俺の発言に戸惑いを見せたクレスが俺のことを呼んだ。
「あぁん、どうしたクレス? 妬いてんのかぁ?」
「えっと……そうじゃなくて……いったいどうしたの?」
「どうしたって、俺はいつも通りだぜ!」
そう答えるとクレスは、言葉を詰まらせて困惑している。
すると隣にいたイリーナが話しかけてきた。
「クロードさま、使命から解放された反動で色々楽しみたい時期なのでしょうか?」
「そうそう! いやぁ~使命から解放されて、陛下からもらった褒美で遊びまわってるんだけど最高だぜ!」
俺はイリーナの質問に肯定することで自身のだらしなさを誇張した。
そこにルーシェも俺に問いかけてきた。
「アンタそんな生活してて大丈夫なの? なんかトラブルとか引き起こしてないでしょうね?」
「大丈夫だよ! だって俺は勇者だぜ? なにかあってもどうにでもなるって!」
ルーシェの嫌いな物事を楽観視した発言を俺は、あえて口にした。
(どうだセレーネ! これが俺の考えた至高の作戦! 名付けて『勇者はクズだった作戦』だ! 陛下には後で『どんな俺でも愛してほしかった』と言い訳することで、陛下の心象も落とさない完璧な作戦だ!)
俺は彼女に作戦の説明をすると、セレーネは俺にあきれながら呟いた。
「うわぁ、そこまでするって、どんだけ結婚したくないんですかクロードさん……」
(うるさいっ! 俺は平穏な日々を謳歌するためにもココは負けられないんだ!)
「あなたいったい誰と戦ってるんですか?」
俺はセレーネの言葉を無視して、彼女たちの俺への評価を下げるために、追加のクズ発言をする。
「あぁ~でも最近あれだ……博打で大金スッちまったり、酒場の子に手を出したら身ぐるみ剝がされたりして金ないんだよねぇ〜、だから仕方ないから金借りてるんだよ!」
「借金……」
「手を出した……」
「博打……」
3人が各々、俺の話に驚愕の反応を見せ、それを見た俺はここぞとばかりに追い打ちをかける。
「でもさぁ~俺命がけで世界を救った勇者じゃん? だからもう働いて生活するなんてごめんなんだよねぇ~……はあぁ~どこかに俺を養って自由に生活させてくれる、そんな都合のいい女いねぇかなぁ~」
(決まった! これは最強の一手が入ったぞ!)
俺は自身のクズ発言に酔いしれるように、心のなかで歓喜した。
そう感動していると、俺の話を聞いていたクレスが口を開いた。
「借金あるんだ……」
「そうなんだよぉ! ……たく、勇者さまに金を貸すなんて身分を弁えろってのなぁ?」
クレスが倹約家であることを知っていた俺は、金のだらしなさを強調するように話した。
「それって幾らくらいなの?」
「えっ? えっと〜7000ゴールドくらい?」
俺はとっさに陛下からいただいた褒賞金の5000ゴールドよりも高い7000ゴールドと答えた。
(5000ゴールドで十分遊んで暮らせる金額なのに、その以上の借金だ! さすがにあきらめるだろう)
そう思った次の瞬間、クレスから予想外の言葉が飛んできた。
「それなら安心してクロード! 私が返してあげる!」
「……はい?」
「ギルドで稼いでる分で十分足りると思うよ! あとクロードが遊べるように、お小遣いもいっぱいあげるから、仕事もしなくて大丈夫だよ!」
「……足りちゃうの? 稼ぎだけで?」
俺がクレスの言葉に驚きを隠せずにいると、イリーナが会話に加わってきた。
「クレスさん……返済なんていけませんよ!」
「そっそうだよなぁイリーナ! せっかくの稼ぎを他人の借金になんて……」
俺はイリーナがクレスを諭していると思い、それに同調しようとしたが、これまた予想外の言葉が返ってきた。
「勇者さまに負債を負わせるような、不信心な者たちを生かしておく必要はありません……それとクロードさま? その手を出された酒場の女性とはどちらの方でしょうか? クロードさまを誑かす不届者には、わたくし自ら『天鎚』を下さなければいけません……」
そう言うとイリーナは、いつの間にか撲殺用の鋭い棘がついた禍々しい銀のメイスを両手に持っていた。
「あの、イリーナさん? ……そのメイスはいったいどこから出したんですか? ……てかそのメイスをどうするつもりですか!?」
「そんなクロードさま!……それは乙女の秘密ですので、どうしてもと仰るなら、2人っきりのときにじっくりとご確認ください……」
「武器の隠し場所聞いただけだよね!?」
俺がイリーナの言動に戸惑っていると、ルーシェがため息混じりに話に加わった。
「アンタ本当に馬鹿な男ね……博打なんてして何が楽しいのかしら?」
「そ、そりゃあ当たったときの快感がたまんないんだぜ! ルーシェもやればわかるさ!」
(頼むルーシェ! お前が2人を止めて愛想を尽かすように促すんだ!)
俺はもう、作戦の達成をルーシェ頼みにしていたが、その期待も裏切られてしまった。
「仕方ないわね! なら私がしっかり勝てるように鍛えてあげる! それと借金の借用書はあるの? なら見せなさい! 契約書に不備がないか確認するし、なんだったらそんな借金、契約無効にしてチャラにしてやるわ!」
「……ですよねぇ」
(もうね、わかってた……だって流れ変わってたもん! すげぇよお前ら……本当に人間か?)
俺が不思議とこの状況に納得していると、陛下が重い口を開いた。
「はっはっは! クロードよ! ずいぶんとおもしろいものを見せてもらったぞ! これは全員で貴公の面倒を見てもらった方がよさそうだな!」
「なっ……陛下!?」
(陛下冗談ですよね!? 俺コイツらの恐ろしさを痛感していたところなんですけどぉ!?)
俺が陛下の発言に驚きを隠せずにいると、背後でセレーネのゲラゲラと爆笑している声が聞こえてきた。
「クロードさん最高!! 言われたとおりしっかりと見てましたよぉ〜 マジ最高です!!」
セレーネの煽りを聞きながら、3人が俺の借金返済に意気投合している様子を見て、作戦の失敗を実感する。
ふと、イリーナの後方に目をやると、イリーナの侍女と目が合った。
(あっ、俺この子になんか言われる気がする……)
なぜか確信めいたことを思ったとき、誰も気づかないほどの小さな声で――しかし俺の耳にはハッキリと届く呪詛のような響きで、彼女は短く鋭く呟いた……
「……ゴミ」
その言葉を聞いた瞬間、俺は静かにソファにもたれかかり、目を閉じた……
(スロット1をロード)
【スキルの使用を確認しました。スロット1のセーブポイントをロードします】
俺は彼女たちの恐ろしさを再確認しながら、4度目のロードを行った……
――やり直し勇者は学ばない 寄生虫エンド 完――
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▼次回予告
9話『やり直し勇者は学ばない 戦利品エンド』
明日 20時 投稿予定です!




