表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直し勇者は溺愛される  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と鳥かごを抱く少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/25

クレス編 理想を語る少女と夢に駈ける少年

いつも読みに来てくれて、ありがとうございます。


【クレス編 理想を語る少女と夢に駈ける少年】


どうぞ、お楽しみください。

 

――セレンディア城下町 喫茶店"リリテオ"――



 俺とクレスは、落ち着いた雰囲気の喫茶店に入り、店の奥のテーブル席に座ると紅茶を頼んだ。


「私……実は喫茶店とか初めて入るから、ちょっと緊張しちゃう……」


「そうなのか? てっきり、みんなと出かけるときに寄ってるものかと……」


「えっと……イリーナは王都だと有名人だから、気軽に外に出れないみたいで……ルーシェもその道の人からすると有名人みたいで、ジロジロ見られたりして落ち着かないんだって……」


「あー、それはわかる気がする」


 彼女の説明に俺は深く納得した。

 イリーナは聖女である前に、陛下の姪……つまり王族に連なる存在である。

 ルーシェは陛下から『大賢者』の称号を賜った精霊術師の弟子であり、彼女自身も『魔女』の二つ名を持っている。


 そして……そんなクレスも、冒険者の間では『琥珀のピトフーイ』って二つ名で知られているらしい……


 クレス1人なら、今の姿を見ても、それとは気付かれないだろうが、これが3人となると話が変わる。


(でもいいよなぁ〜、俺も欲しかったなぁ二つ名……なんかこう『剣聖』とか『剣神』とかなぁ……もしかしてイリーナも二つ名を持ってるのか!? そしたら俺だけ『名無し』じゃないか!?)


 そんなことを俺は考えていると、注文した紅茶が届き、俺は紅茶で口を湿らせた。

 クレスもそれに続き、紅茶に口をつける。


「美味しい……のかな? なんか緊張しちゃってわかんないや……」


「なんだ? 城でも紅茶は出るだろう?」


「そうなんだけど……私は白湯とかの方があってるみたい……」


 そう言って彼女は、バツが悪そうにカップの縁を指でなぞりながら苦笑いを見せた。

 そんな姿を見て俺は、そろそろ突っ込んだことを聞いてみようと思った。


「クレス……もし俺が、今回の見合いでお前を選んだら、考えてることはあるのか?」


 俺の問いに、彼女の指がピタッと止まった。


「それは……結婚生活をってことかな?」


「ま、まぁ……そうだな」


 少し恥ずかしさを感じつつ、俺はクレスの結婚に対する考えが聞きたかった。

 そして彼女の根底にある物を知りたかった。


「えっと……もしクロードと結婚したら……」


 彼女は一瞬迷ったのち、言葉を紡いだ。


「もしクロードと結婚したら……クロードの屋敷で一緒に暮らすでしょ! そしたらクロードには、冒険者稼業は引退してもらうね! っで屋敷のなかで畑とか、果樹園を作って1日を過ごすの!」


「……引退?」


「そう! 朝は私がクロードを起こして、畑で作った野菜いっぱいの朝食を食べるの! それで出かけるときは私も一緒に行くから、ずっと手を繋いでてね! じゃないと迷子になるでしょ?」


「迷子って……俺は子供じゃないぞ……」


「うぅん……心配だからダメ! トイレとお風呂以外は、私の見えるところにいてね! もちろん、寝るときも一緒だよ! ……あっ!?」


 クレスはなにかを思いついたように、少し恥ずかしそうに訂正した。


「……やっぱり、お風呂も一緒に入ろう……私がクロードの体を、すみずみまで洗ってあげるね……」


 彼女が一通り、結婚生活の計画を話し終わるころには、俺は唖然としてしまった。


(こいつ、本気か!? 本気で言ってるのか!?)


「クロードさん、コレは相当きてますよぉ〜、おっもぉ〜い感情の一部が見えてきましたよぉ〜」


 セレーネの反応を見て俺は、クレスの根底を探るために、彼女の計画に意見を述べてみた。


「クレス、さすがに冒険者を引退はやり過ぎじゃないか? 野良の魔物とか出たら退治したいし……俺だって1人の時間がほしいときもあると思うんだ、だから……」


 その瞬間――


「それじゃ! ダメなの!!」


 俺が言い終わる前に、クレスが立ち上がって怒鳴り出した。


「クロード! そう言ってまた私のこと置いていくの!? そんなの絶対に嫌! もうどこにも行かないで!」


 彼女は取り乱したように、俺に懇願すると、店内を静寂が支配していた。


「……ごめんなさい……帰るね……」


「……あ、クレス!」


 そう言って彼女は俺の呼び止めも聞かず、店を後にした。

 俺はため息をつきながら、椅子にうなだれると、一部始終を見ていただろう女神に語りかけた。


「セレーネ、どう思う?」


「えぇ、だいぶきてましたねぇ〜、センサーもビンビンでしたよぉ〜」


「そうか……」


 セレーネの言葉を聞き、彼女の根底にある物に近づいた気がするなか、俺はクレスの言葉を思い出していた。


『私を置いていくの!? もうどこにも行かないで!』


 俺はその言葉に、勇者として故郷を旅立った日のことを思い出していた……




 ――10年前 クローレス村(旧モス村)――



 その日の空は、まだ昼ごろだというのに、雨雲のせいで太陽は隠れ、暗い時間をもたらしていた。


 そこに、セレンディア王国からの騎士団が、片田舎に列をなして来たときは、村中大騒ぎだった。

 そして……村に騎士団が到着すると、長と思われる騎士が村長に話しかける。


「急な訪問、失礼する! 私は王宮騎士団、団長のアルバインだ!」


 男がそう名乗ると、村長の困惑を悟り、すぐに要件を伝えてきた。


「この地に来たのは、我が王都に勇者を迎え入れるためだ!」


「……勇者……ですか?」


「そうだ! 王都で、あるお方が聖女として覚醒された……それは勇者も覚醒されたことを意味する……そしてそれは、聖女と同じ日に誕生した男子と決まっている!」


 その騎士は、淡々と村長に、ことの経緯を説明していた。


「そして、我々の持つ情報から、この地にいる『クロード』という少年が、勇者である可能性が高いと判断した! 村長……その少年はどちらかな?」


「……たしかに、クロードという少年はこの村に住んでいますが……勇者なんてそんな……なにかの間違いでは?」


 村長が信じられないという感じで、騎士団長に言葉を返していた。


「村長よ……急な話で混乱しているのは理解するが、我々も冗談や遊びで来ているわけではない……早々にその少年を呼んできてもらえぬか?」


「……失礼いたしました! すぐに呼んでまいります!」


 その騎士は、村長の非礼をとがめず、しかしことの重大さを説き、俺を呼ぶように村長に伝えた。

 その瞬間――野次馬に紛れて様子を見ていた俺の体は、無意識に飛び出し、2人の間に割って入った。


「俺ならここにいるよ!」


 そう言って騎士団長の顔を睨みつける。


「……貴公がクロードか?」


「そうだよ……」


「……聖痕を見せなさい」


「……聖痕……ってなんだ!?」


 その男は俺の返答に、一瞬眉をひそめるが、すぐに俺に質問を返した。


「体のどこかに、模様のような物ができてないか? もしくは最近、体の痛みを感じたか?」


「……そういえば、今朝……背中がヒリヒリしたような……」


 その言葉に男の視線が鋭いものに変わった。


「……少年、こちらに来なさい」


「はぁ? なんでだよ?」


「確認したいことがある、来なさい……」


 俺は不審に思いつつ、その男のところに近づいた。

 するとその男は、俺を後ろ向きにすると服を捲り上げ、背中を確認した。


「おい! なにすんだよ!」


「……たしかに……聖痕があるな……」


 そう……俺の背中には、勇者の証である聖痕が、浮かび上がっていた。

 男は俺を向き直させると、片膝をついて頭を下げた。


「クロードさま……数々の非礼、大変申し訳ありません! 王都セレンディアで、国王陛下がお待ちです……どうかご同行願います」


 そう言って男の態度が急変し、俺が驚いていると、男は続けて言葉を紡いだ。


「国王陛下への謁見の後、アナタさまには勇者としての訓練を積んでいただき、魔王討伐に赴いていただきます!」


「……魔王……」


「はい! ですが、ご安心ください! 訓練はこのアルバインが担当させていただきます!」


「……アルバイン……アンタそんなに強いのか?」


「はっ! 不肖このアルバイン、陛下から『剣聖』の称号を賜っております!」


「『剣聖』!!」


 俺はアルバインの称号に興奮し、気持ちが昂っていた。


「わかった! 行くよ!」


「はっ! ありがとうございます! 馬車の用意がありますので、そちらまでご案内いたします」


 そう言ってアルバインは立ち上がり、馬車の方に向かって歩き出すと、俺は輝かしい未来を信じて、その男の後について行った……




 ――クレス編 理想を語る少女と夢に駈ける少年 完――



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ピトフーイとは、実際に存在する有毒鳥の一種だそうです。

身軽かつ毒無効持ちの、クレスにピッタリだと思いました! 


少しづつですが、クレスの闇に触れていくクロードさんの活躍に、ご期待ください!


本作を気に入った!続きがちょっと気になる!ってなったら

下にある【☆☆☆☆☆】マークから評価と、ブックマーク登録を何卒よろしくお願いいたします!


応援していただけたら、とても励みになります!


▼次回予告

『クレス編 少女の恐れるもの』


明日 20時 投稿予定です!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ