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やり直し勇者は溺愛される  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と鳥かごを抱く少女

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16/20

クレス編 幼馴染との初デート

いつも読みに来てくれて、ありがとうございます。


【クレス編 幼馴染との初デート】


ぜひ、お楽しみください!

 

――クレス攻略 2日目――



 『待ち合わせは貴族街にある公園の噴水前』


 そうクレスに言われていた俺は、昨日よりは少し緩めの、シャツとベストを組み合わせた服装に着替えて、公園の前に来ていた。


「一緒に出かけるなら、城門前で待ち合わせでよくないか?」


 俺はまだ、クレスが来ていないことを確認して、セレーネに話しかけた。


「はぁ〜、クロードさん……本当にわかってない人ですねぇ〜、女の子はお出かけの前も楽しみたい生き物なんですよ!」


「生き物ってお前なぁ〜……」


 彼女の言葉に反論しようとしたそのとき、背後から駆け寄ってくる気配を感じ、俺は振り向いた。

 そこには……また俺の知らないクレスの姿があった。


 フリルの付いた白いブラウスは、襟元や胸元にあしらわれた控えめなフリルが愛らしく、パフスリーブの袖が彼女の華奢な腕を優しく包んでいる。

 故郷の森を思わせる落ち着いたモスグリーンのロングスカートは、普段見慣れた健康的な脚をすっぽりと隠しているが、ふわりと広がるその長い裾から、編み上げのショートブーツが覗いていた。


 そして慣れない手つきで、小さなハンドバッグを持ったクレスは、俺に駆け寄ると息を整えつつ呟いた。


「ごめん! 待たせちゃったかな?」


 そう言って彼女は、上目づかいで俺を見つめてきた。


「あ、ああ、大丈夫だ! あまり待ってないぞ」


「そう? それならよかった! ……ところで、なにか言うことはないのかな~?」


 そう言うと彼女は、俺の言葉を待っていた。


「あーその、なんだ……似合ってるぞ……」


 俺が必死に言葉を絞り出すが、クレスが物足りなそうに応えた。


「ふ~ん、他には?」


「……かわいいです……」


「てへへ、ありがとう!」


 彼女は俺の言葉に満足したようで、満面の笑みを向けてくれた。


(俺の目の前にいるのは本当にクレスなのか? こんなに女の子らしかったか!?)


 俺は心のなかで、記憶のなかのクレスと、目の前にいる少女を照らし合わせていた。

 俺の視線に気付いたのか、クレスはスカートの裾を空いた手でつまんで呟いた。


「この服……2人がね、選んでくれたんだよ!」


「2人ってイリーナとルーシェが?」


「うん! イリーナが服を選んで、それをルーシェが判定して、もう着せ替え人形みたいで大変だったよ~」


 彼女は楽しそうに、服選びの時の事を教えてくれた。

 3人の関係性は、おそらく恋敵のはずなのに、出かける服を一緒に選んだりして、協力し合っている。

 昨日の西の塔で一緒に寝泊まりしている話を聞くあたり、仲が悪いことはないと安心していたが、悪いどころか想像以上に仲がいいみたいだった。


 その事に安堵した俺は、当初の目的を思い出して、それを果たすことにした。


「じゃあ、そろそろ行くか?」


「……うん……」


 クレスの返事を聞くと俺は、公園の出口に向けて歩き出した。

 するとクレスは、俺の横に駆け寄り、同じ歩幅で並んで歩き始めた。




 ――セレンディア王国 城下町――



 俺とクレスは、貴族街を通り過ぎると目的地である城下町の広場までやってきた。

 広場では、すでに出店がいくつか立ち並んでいて、賑わいを見せていた。


「うわぁ! クロード! 早く行こう!」


「お、おい、クレス待てって!」


 クレスは戸惑う俺の手を引いて、目の前の出店に向かって駆け出した。

 それから俺たちは、串焼き屋で肉串を買って食べ歩き、喉の渇きを感じて、果物屋で果実水を買って歩いた。


「クロード! この果実水、すごく美味しいよ!」


「そうだな! この肉串も、なかなか美味いぞ!」


 俺たちは最初の緊張も忘れ、いつもの2人に戻って城下町の散策を楽しんでいた。


「しかし……自分で言うのもなんだが、誰にも気付かれないもんだな……」


「そりゃあ、そうだよ! 勇者を見た人なんて、凱旋のときくらいで、みんな覚えてないよ」


「たしかに……言われてみたらそうだな……」


 俺は、自分の知名度の低さに安心したような、落胆したような、複雑な気持ちになっていた。

 そんななか、クレスがある出店を見つけて声を上げた。


「あっ! 次アレ食べようよ! すっごく美味しいんだよ!」


「あ、ああ……冷やしミルク?」


「うん! 女の子にすごく人気なんだよ! ミルクを冷やして固めて、蜂蜜とか果実と一緒に食べるの!」


 そう言って彼女は、冷やしミルクの屋台に駆けて行った。

 たが、その姿に俺の記憶のなかの彼女と、今の彼女がやっぱり一致しなかった。


「クロードさぁん! 見た感じ普通の男女の逢瀬にしか見えないんですけど、いつもこんな感じなんですかぁ?」


(……いや……いつもは無駄遣いにうるさくて、食べ物も健康とか彩りを考えて、屋台の肉串なんて食べたら『食べた分走らなきゃ』って城の外周を走らされたよ……)


「へぇ〜……そんな感じ全然しませんよねぇ〜……王さまの褒美でクロードさんとは違う意味で、遊ぶようになったんでしょうか?」


(遊ぶってお前……って、俺けなされてなかったか!?)


「クロード? どうしたの?」


 セレーネと話していると、いつの間にか戻ってきていたクレスが、不思議そうに見つめてきた。


「……ああ、すまん! なんでもないよ……」


「そうなの? ……もしかして、冷やしミルク嫌だった……?」


「いやいや! ぜんぜん、嫌じゃないぞ! それに、食べたことないから楽しみだなぁ」


「本当!? ならよかった! そこのベンチで一緒に食べよう!」


 彼女は俺の言葉に表情を輝かせると、そのまま俺の手を引いて、ベンチまで歩いた。

 2人でベンチに腰掛けると、クレスはさっき屋台で買った冷やしミルクを2つ取り出した。


「こっちが普通の冷やしミルクで、こっちが蜂蜜ミルクね! 初めてなら普通の冷やしミルクで食べてみる?」


「あ、ああ、そうだな……いただくよ」


 彼女から小さな入れ物を受け取ると、俺は付属の木のスプーンで、冷やしミルクを口に含んだ。


「……美味いな!」


「でしょお! こっちも美味しいよ!」


 そう言って彼女は、自身のスプーンに乗せたそれを、俺に向けてきた。


「……えっと、あ、あ〜ん……」


「……なっ!?」


(こ、これは!?)


「あ〜ん、キチャァァァ! コレはカプ厨も大喜びのイベントですよ! クロードさん! やるんですね!? 今! ここで!!」


(う、うるさい! そしてなに言ってるんだお前は!?)


 セレーネの騒音を聞き流すと、俺は目の前のスプーンに視線を戻し、そしてクレスに視線を向ける。

 そこにいた彼女は、また顔を真っ赤にして瞳を潤ませていた。


(恥ずかしいのは、俺だけじゃないか……)


 俺は意を決して、差し出されたミルクを口に含んだ。


「……たしかに、美味いな……」


「……で、でしょ〜! あはは、なんか暑いね〜」


「そ、そうだな! 動き回ったからな! 少し戻ったところに喫茶店があったから、そこで休憩するか!」


 クレスも俺も、いたたまれない気持ちになっていたのだろう。

 だから、俺は気分を変えるために、落ち着いた喫茶店での休憩を提案した。


「そ、そうだね! そうしよっか!」


 クレスは俺の提案に賛成すると、冷やしミルクを流し込むように、たいらげて立ち上がった。


「美味しかった! ほら、クロードも早く食べて行こう!」


「あ、ああ、そうだな! ちょっと待ってくれ」


 俺は彼女にならって、冷やしミルクを流し込むと、立ち上がる。


「お待たせ! 行こうか!」


 すると、クレスは俺の顔を見て微笑みながら呟いた。


「クロード、口にミルク付いてるよ! 取ってあげるからじっとしてて……」


 そう言って彼女は、バッグのなかからハンカチを取り出して、俺の口元を拭ってくれた。


「……うん! ちゃんと取れたね! じゃあ行こう! クロード!」


 彼女は、満足したように俺にまた微笑んで、俺の手を引いて歩き出した。


「……ああ、ありがとう……」


 俺はそのとき……俺の口元を拭ってくれた彼女の表情が、俺のなかの記憶にいる彼女と重なるのを感じていた……


「クロードさん! 今のほんのちょっとだけ【記憶回想】のセンサーに引っかかってましたよ!」


(……センサー? なんだそれ?)


「えぇ〜っとですねぇ、つまり彼女の深層心理に根付いている物に近いなにかを感じ取ったってことです」


(……なっ? そんなこともわかるのか?)


「当たり前です! じゃないと、いつスキルを使えばいいかわからないじゃないですか!」


(たしかにそうだが……それって、お前にしかわからないのか?)


「そうですねぇ〜、人の感情の機微を目視するなんてスキルがあればべつですけど、普通の人では無理ですね!」


(つまり【記憶回想】は、お前と組んで初めて使えるってことか……)


「あぁ〜、そうなりますねぇ〜」


 彼女の返事に俺は、自身のスキルの不便さを感じつつ、さっきの彼女の行動を思い返していた……


(クレスは……昔は臆病で甘えん坊で、いつも俺の後をついて回るようなやつだった……でも冒険者として再会した彼女は、魔物の群れに臆さず飛び出して、俺たちに厳しく接してきた……今思うとその時点でおかしかったんだ……)


 俺は今さらながら、彼女の変化に気付くと、少し前を行く彼女の後ろ姿をじっと眺めていた……




 ――クレス編 幼馴染との初デート 完――

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


冷やしミルクは、要はアイスクリームのことですが、ファンタジー感を損なうと思い、独自の名称で呼ばせていただきました。

わかりにくかったら、ごめんなさい……


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応援していただけたら、とっても嬉しいです!


▼次回予告


『クレス編 理想を語る少女と夢に駈ける少年』


明日 20時 投稿予定です!!

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