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やり直し勇者は溺愛される  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と鳥かごを抱く少女

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クレス編 甘い蜜に誘われて

いつも、読んでくれて、ありがとうございます!


【クレス編 甘い蜜に誘われて】


どうぞ、お楽しみください。

 クレスから、故郷が変わり果ててしまった話を聞かされた。

 まぁ、人の功績をだしにして、儲ける商人の町みたいな変わりようだが……

 俺は気を取り直して、クレスの近況を聞くために、彼女に質問をした。


「それで、クレスはどうしてたんだ?」


「私? えっと……最初は村に戻って過ごしてたんだけど、観光地化したら、どこにいても声をかけられちゃって落ち着かないし……それで王都に来て冒険者業を続けてたんだけど、今度は力試しに他の冒険者から絡まれることが多くなっちゃって……今はイリーナのもとでお世話になってるよ」


「イリーナのところに?」


「そうだよ! ルーシェも最初は貴賓扱いで城にいたらしいけど、最近は一緒に東の塔でお世話になってるよ!」


「そうだったのか……」


 俺はてっきり、みんな満喫した毎日を過ごしていると思っていたが、どうやらそうではなかったらしい……

 そう思っていると、俺の背後にいたセレーネが話しかけてきた。


「クロードさぁん、お楽しみ中のところ申し訳ないんですが、クレスさんの体質の件はどうするんですぅ?」


(わかってるさ! でも、なんて聞けばいいんだよ? 『お前毒食ってるの?』って聞く訳にもいかないだろ!)


「それは、そうですけどぉ〜」


(とりあえず目的は忘れてないから安心しろ! どうにか機会を作るから待ってろ!)


「はぁ〜い! 楽しみにしてまぁ〜す!」


「はぁ……」


 完全に面白がっているセレーネの態度に、俺はつい溜め息をついてしまった。

 すると、その様子を見てクレスが、心配した表情で俺に問いかけてきた。


「どうしたのクロード? やっぱり疲れちゃった? ちょっと休憩する?」


「いやっ! その、大丈夫だ! それに休憩って言ってもどうすれば……」


 俺が言い終わる前に、クレスはスカートのシワを伸ばすように座り直すと、顔を赤くしながら呟いた。


「……ど、どうぞ……」


「…………えっ!?」


 彼女の意図に気付いた俺は、クレスの真っ赤になった顔と、差し出された膝を交互に見比べて、思わずごくりと喉を鳴らしてしまった。

 そしてクレスは、俺に言葉を付け足して、膝枕を勧めた。


「その……寝心地は保証できないけど……よろしければ、どうぞ……」


 クレスがここにいるのは、俺との見合いをするためで、それは少なからず俺への好意があるからだ。

 俺は彼女の気持ちに改めて気付かされると、クレスの提案を断ることができなかった。


「……じゃあその、失礼します……」


「はい……どうぞ……」


 俺はクレスと目が合わないよう、横を向きながらゆっくりと頭だけを膝に乗せた。


「……どう、かな?……」


「……まぁ、悪くないかな……」


 クレスの照れ臭そうな問いに、俺も恥ずかしさからか、短く言葉を返してしまう。

 すると彼女の手が、俺の頭の上に置かれ、ゆっくりと頭を撫でだした。


(柔らけぇぇぇ! 女の子の膝ってこんな柔らかいの!? ってか、すげぇいい匂いがするんだけど何これ!? この後、どうすればいいんだ!?)


「クロードさぁん、なぁにイチャラブ展開満喫してるんですかぁ!? おかげで紅茶が甘々ですよぉ〜」


(う、うるさい! こっちは今それどころじゃないんだよ! 心臓が口から出てもいいのか!?)


「えぇ〜、せっかくいいこと教えてあげようと思ったのに〜」


(……いいこと? なんだそれ?)


「もう、仕方ないですねぇ〜……クロードさん、上を見てください! う〜え!」


(……上?)


 セレーネの言葉に従うように、俺は体の向きを変えて、上を見上げた。

 そして、その意味をすぐに理解した。


 そこには、思いっきり目を開けて、さっきよりもさらに顔を真っ赤にしながら、俺を見つめるクレスがいた。

 その姿に、俺まで顔が赤くなってしまい、耐えきれずに目を閉じてしまっていた。

 だが、目を閉じたことで後頭部に感じる柔らかい感触と、彼女から香る女の子特有の甘い香りに鼻が敏感になり、心臓の鼓動がさらに激しくなっていく。


(上って、そういうことかよ! やってくれたな!)


 セレーネへの恨み言を心のなかで呟きながら、鼓動が落ち着くのを、俺はただひたすら、待つしかなかった……


 ……俺は鼓動の高鳴りが落ち着いた頃を見計らい、クレスに声をかける。


「ありがとう……そろそろ起きようかな」


「もういいの? ちゃんと休めたかな?」


「ああ、じゅうぶん休めたよ……ありがとう」


「そっかぁ……ならよかった! またしてほしくなったら、いつでも言ってね!」


「あ、ああ……そのときはまた、お願いするよ……」


「うん!」


 彼女の申し出を受け入れつつ、またあれをしてもらうには俺の心臓がもつのか不安がよぎった。

 

 ふと、空を見上げると、もうすぐ夕暮れ時になるのがわかって、クレスに向き直した。


「そろそろ暗くなるから、今日はこれで帰ろうか?」


「……えっ? もう帰っちゃうの?」


 俺の提案にクレスは不安そうな表情を浮かべた。


「大丈夫だよ! 俺も西の塔に部屋を用意してもらったから、帰ると言っても王城のなかだから、大した距離じゃないさ」


「あっ! そっか! そうだよね! よかったぁ……じゃあ安心だね!」


「あぁ、わざわざ陛下が用意してくれたんだ、泊まらず帰ったら失礼だしな……」


 彼女の大袈裟な反応に、俺は冗談めかして、宿泊する旨を伝えると、クレスが俺に問いかけてきた。


「ねぇ、クロード……また明日も会ってくれる?」


「ああ、もちろん! 明日は城下町まで足を運んでみるか?」


 明日の予定を俺が提案すると、クレスは俯きながら、小さな声で呟いた。


「それって……2人っきりで……いいのかな?」


「ふえっ!? あ、ああ、いいぞ!」


 俺は彼女の質問に戸惑いながらも、しっかりとした声で返事をした。

 すると彼女は俯いた顔を上げ、目を輝かせながら俺を見つめた。


「ほんと!? 明日も一緒にいられるの!?」


 彼女の勢いに押されつつ俺は言葉を返した。


「ああ、そんなに確認しなくても大丈夫だよ! 元々暇を持て余してたから、急いで帰る必要もないし、明日は城下町まで一緒に出かけよう」


「っ!……うんっ!!」


 クレスは俺からの誘いが心底嬉しかったみたいで、満面の笑みで返事をしてくれた。


「とりあえず……東の塔まで送っていくから、今日はもう帰るぞ!」


「……あ、ちょっと待って!」


 歩き出そうとする俺をクレスが呼び止めると、近くまで駆け寄り、腕を絡ませてきた。


「おっおい!?」


「いいじゃん! 昔はもっと引っ付いてたんだから!」


「それはまだ小さいときのことで……」


「いちいち文句言わないの! ほら! 最後までちゃんとエスコートしてね! 勇者さま!」


「……ったく!」


 俺は抱きつかれた腕の位置を整えて、クレスを東の塔まで連れて行くのだった……


 ――クレス編 甘い蜜に誘われて 完――

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


ヒロインの膝枕、って最強ですよね!


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▼次回予告

『クレス編 柱の数と知識の元』

明日 20時 投稿予定

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