やり直し勇者は学ばない 戦利品エンド
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第9話『やり直し勇者は学ばない 戦利品エンド』
クロードさんの無駄な努力を、どうぞお楽しみください!
――スロット1 ロード後 談話室前――
「着いたぞ! ここが目的の部屋だ」
聞き慣れた声と台詞が聞こえ、俺は目を開ける。
これで4度目の……(以下略)
俺は近くにあった内庭へ足を運び、ベンチに腰掛けると、再びセレーネに話しかけた。
「えーセレーネさん、いらっしゃいますでしょうかー?」
「はぁ〜い、これはこれは! 完璧な作戦が売りのクロードさんではありませんかぁ〜、いったいどうされたのですかぁ?」
俺は彼女の煽りを聞き流し、俺が感じた疑問を投げかけた。
「なぁセレーネ……あいつらヤバくね?」
「ヤバいですね!」
「だよなぁ……」
即答する彼女に、俺の感覚が間違っていないことへの安堵のため息が漏れる。
「なんですかクロードさん、あの人たちは?」
「俺が聞きてぇよ!」
「いや、クロードさん……一緒に旅をしていたのに全然気付かなかったんですかぁ?」
「……あのときは、魔王討伐のことしか考えてなかったし……それに男一人のパーティで恋とか愛とか考えたら絶対ダメだろ!?」
「なんでそこは、しっかりしてるんですか!?」
「そこ責められるところか?」
「だからこうなってるんですよ?」
俺はセレーネの言葉に何も返せなかった。
彼女たちは旅のなかで俺に好意を持ち、今回の見合いに参加することになった、ならそのきっかけには俺が関係しているはずだ。
そう考えると、それに気付かないでいた俺に責任があると言われれば、返す言葉が見つからなかった。
「さてクロードさん……そろそろ考えた方がいいのでは?」
「考えるって、なにをだ?」
「なにって、誰を花嫁にするかを! ですよぉ」
「馬鹿言うなっ! そんなことできるかよ!」
「もぅ、なんでそんなに嫌なんですかぁ? 他に好きな人がいるとかですかぁ?」
「……それは……」
彼女の問いに俺は、すぐに答えられなかった……3人のなかから花嫁を選ぶなんて俺には無理だ! ……なぜ? そんなの決まっている、みんな大切だからだ! だから誰かを選ぶなんてしたらいけないんだ。
しかしその答えは、2回目のやり直しで失敗した……なら別のやり方で……俺たちの関係を変える訳にはいかない。
「セレーネ……俺はあきらめないぞ! なんとしてもこの関係を変えないためにも、俺はこの見合いをやり過ごすぞ」
「おっおぉ、そうですか……」
改めて固めた俺の決意に彼女は、気圧され気味に返事をした。
「……で、次はどんな作戦で行くんですか?」
「それについてだが、今回の見合いの目的を思い出してみろ」
「目的ですかぁ? ……花嫁を決めることですか?」
「違う! 勇者の血を残すことだ!」
「あぁ! そうでしたねぇ!」
「陛下は魔王の再来を危惧して、俺に早く結婚して子孫を残してほしいんだろう……だから俺と交流のある3人に声がかかったんだ……」
「3人に……ですか?」
「そうだ! だから次はそれを利用するんだ!」
俺は今度こそ、見合いをやり過ごすための新しい作戦を考え、陛下の元へ戻った……
「おぉ、クロードよ! もう準備はよいのかな?」
「はい! お心遣い感謝いたします陛下! もう大丈夫です……」
俺は陛下に力強く応えると、その返事に満足した陛下が扉の前で待機している近衛騎士に目線を向け頷いた。
近衛騎士は陛下の合図に反応し扉の引手に手をかける。
そして、運命の扉が開く……
そしてその先には、戦場のなかで見慣れたはずの……(以下略3回目)
俺は部屋にいた3人と軽い挨拶を交わすと、陛下が席につき、俺に今回の見合いの説明に入った。
「良いか? 勇者クロードよ……貴公の前にいる彼女たちこそが、貴公の見合いの参加者たちだ!」
「……えっ?」
俺は陛下の説明をさえぎらないように、驚いた振りをした。
「陛下! いったいどういうことですか!?」
「落ち着け、クロードよ! 貴公は言っていたな? 魔王ベルガドーラは、またいつか戻ってくると?」
「それは……確かに、奴を倒したときに、いつか戻ってくると言い残して消えたとは申しましたが……」
「だからこそだ! 魔王がいつ戻ってくるのか? それは十年後か? それとも百年後か? そんなものは誰にもわからぬ……ならばこそ! 勇者の血を絶やしてはならないのだ!」
(ここまでは、ループ前の会話とほとんど変わってないはずだ! しかし、理屈はわかるがやはり納得がいかないな……)
俺は陛下との会話が記憶どおりになるように誘導しつつ、やりきれない思いを抱えていた。
「さぁ! 勇者クロードよ! ここに貴公を知り、貴公と結ばれることを望む娘たちがいるぞ! 貴公はどの娘を妻とするのだ?」
「なっ……?」
そして、陛下がどんどん話を進めていく。
「長き時をともに過ごした幼馴染か!? それとも信仰深き聖女か!? それとも才溢れる魔術師か!? それとも!?」
陛下は高らかに選択肢を挙げ、彼女たちが俺を見つめると同時に、陛下が満面の笑みで俺に目線を向ける。
「全員……と申すなら、それでも余はかまわぬぞ……」
(とうとう、このときがきた! 陛下の望みは勇者の……なおかつ『強い勇者』の子孫を残すことだ…… それなら!)
俺は覚悟を決めて、口を開いた。
「それならば陛下、一つ提案がございます」
「ほう、申してみよ!」
「はいっ! 勇者の子孫として必要なもの……それは見た目でも聡明さでもありません! それは純粋な強さです!」
「確かに……一理あるな」
「ですので私は、強き者を妻に迎えたいと思います」
「強き者か……で、それは誰なのだ?」
「わかりません! なので証明してもらいましょう! 例えば戦って残った者が私とけ……」
その瞬間――俺の背筋が凍り付いた。
俺の今回考えた作戦は、戦って残った誰かと俺が戦い、倒すことで、結婚自体を見送りにする『強い奴が絶対作戦』だった。
そして、どんなに3人が強いとはいえ、俺が負けるとは思わなかった。
今この瞬間……目の前の3人を見るまでは……
「クロード……戦って勝てばいいんだね?」
そうクレスが俺に確認すると、スカートの下から両手用ダガーを取り出していた。
「ク、クレスさん!? なんで、スカートの下にダガーなんて隠し持ってたのかなぁ? 城の警備はザルなのかなぁ?」
俺がクレスに質問すると、彼女は笑顔で答えてくれた。
「だって! 武器を持ってないとソワソワしちゃって! でも、こうなるなら持っててよかったぁ!」
そう嬉しそうに答えると彼女の持つダガーからは、謎の液体が滴っていた。
「えーっと確認だけど……その刃先から垂れている液体はなんだ?」
「これ? ただの毒だよ! 試したけど、ちょっと痺れる程度だから安心して!」
「ちょっとってお前……」
そのとき、背後のセレーネが俺にささやいてきた。
「クロードさぁん、あの子のスキルに『毒無効』が、ありますよ! それなのに痺れるって、大型魔獣に使うような『猛毒』ですよ!」
(なっ!?)
俺がセレーネの言葉に驚いていると今度は、イリーナがまた、いつの間にか撲殺用の棘がついた禍々しいメイスを持って立ち上がっていた。
「クロードさまの花嫁になるには皆さまを叩き潰さなければいけないのですね……あぁ、なんて過酷な試練をお与えになるのでしょう……でも、ご安心くださいクロードさま……聖女イリーナがクロードさまのために、みなさまを叩き潰してみせます!」
「イリーナさん!? だから、そのメイスはどこにしまってあったの!?」
「まぁ、クロードさまったら恥ずかしいですわ! それは二人っきりのときに、じっくりとご確認くださいませ……」
「だから、武器の隠し場所を聞いてるだけなんですけどぉ!?」
俺はループ前の記憶なんておかまいなしに、イリーナの言葉に反論した。
そこへセレーネがさらに慌てた様子で、俺にイリーナのことを教えてくれた。
「クロードさぁん、あの子もおかしいですよ! 普通、神聖術のバフって自身には使えないのに、普通に自分へ術を使ってますよぉ!」
(……どういうことだ?)
「だからぁ〜、身体強化とかもろもろの強化を自分に使ってるって事ですよぉ!」
「……それって強くね!?」
「かなり!!」
イリーナの異常性の説明を聞いていると、ルーシェも臨戦態勢を取るために次元収納していた杖を取り出した。
「アナタたち、死にたくなかったらあきらめて負けを認めなさい……最悪アレも使うわよ!」
「アレって? ……ルーシェ!? 絶対禁術は使うなよ!?」
「それは、この子たち次第よ!」
俺はルーシェに禁術の使用を止めたが、彼女はそれを受け入れることはなかった。
すると今度はセレーネが俺に問いかけてきた。
「クロードさん、禁術ってなんですかぁ?」
(ルーシェが作ったオリジナルの術で、危険過ぎたから禁術指定した4つの精霊術だよ! 使ったら国1つ簡単に滅ぶ、災害レベルの術だよ!)
「……なんですかそれぇ!? てか、みんな強すぎでは!?」
(あぁ強いさ! けどまさかコイツら、ここでやり合う気じゃないだろうな!?)
しかし、そのまさかは起こった。
ルーシェが軽く指を鳴らす、それは俺たちならよく知っている、ルーシェお得意の『精霊術の即撃ち』だった。
パチンッと指を鳴らす音がした瞬間、部屋のなかで爆発が起きた。
俺は陛下に駆け寄り、すぐに陛下と共に倒れ込む。
ルーシェの『即撃ち』は予備動作がない分、威力は下がる。
だが目眩しには最適でルーシェは爆発でできた壁の穴から外に出ると、風の精霊術を使って空に浮き、部屋のなかの様子をうかがった。
煙が晴れてくると、イリーナがその場から動かずに立っているのが見えた。
そして煙のなかから、別の素早く動く影、クレスが飛び出してきた。
クレスはイリーナを先に標的にし、彼女の死角から忍び寄ってきた。
しかし、イリーナは体の向きを変えることなくメイスをクレスに向かって振るった。
挙動もなく振るわれたメイスをクレスがギリギリのところでバックステップで躱す。
するとイリーナはメイスを振るった反動でクレスのいる方に、まるで舞踏会で踊るダンスのステップのように回りながら近づきメイスを振り回す。
クレスはそれを避け、イリーナの懐に潜り込みダガーを突き刺した……はずだったが、イリーナの防御強化の加護にはじかれる。
その反動でよろけたクレスにイリーナがメイスを振り下ろすが、クレスは素早く体勢を立て直し難を逃れる。
そこへメイスを振り下ろしたイリーナに、ルーシェの雷撃が襲う。
イリーナは魔法障壁を張り、雷撃を防ぐが、ルーシェは雷撃を続けながら、氷の塊を作り出している。
だが、そこへクレスが飛びかかり邪魔をする。
ルーシェは仕方なく氷の塊でクレスの攻撃をしのいだが、風魔法でふわりと氷を飛び越え襲いかかるクレスに、ルーシェも防御に徹した。
三つ巴の攻防が起きるなか、立ち尽くして見守るしかない俺と……
「はっはっは! 見ろクロードよ! どの娘たちも貴公の言う、強き者にふさわしい戦いっぷりだぞ!」
なぜかこの状況を嬉しそうに観戦している陛下の姿があった。
「あのぉクロードさん……これってやっぱりぃ?」
「あぁ、失敗だ……」
そう言ってため息を吐くと、俺は部屋の片隅にいたイリーナの侍女の姿を見つけた。
彼女は爆風でついた服の埃を、無表情で払い落としていた。
(あの子は……知ってる気がする)
俺は彼女に既視感を感じた。
そして俺の視線に気付き、彼女と目が合うと、誰も気づかないほどの小さな声で――しかし俺の耳にはハッキリと届く呪詛のような響きで、彼女は短く鋭く呟いた……
「……迷惑」
俺はゆっくりと床に座り込み、いつものフレーズを唱えていた。
(スロット1をロード)
【スキルの使用を確認しました。スロット1のセーブポイントをロードします】
俺は彼女たちの恐ろしさを、違う意味で再確認しながら、5度目のロードを行った……
――やり直し勇者は学ばない 戦利品エンド 完――
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▼次回予告
10話『やり直し勇者は決意する』




