10話 やり直し勇者は決意する
今日も読みに来てくれて、ありがとうございます。
第10話『やり直し勇者は決意する』
第1章も残りわずかです。
ぜひ、お楽しみください。
――セレンディア城 内庭――
前回の『強い奴が絶対作戦』も失敗に終わり、俺は頭を抱えていた。
「アイツら、あんなに強かったっけ!? 俺あんな怪物たちと旅してたの!? なんだったらリーダーやってましたけど!?」
「いやぁ〜、女性に言っていい言葉ではないですけど、アレは『化け物』級の強さでしたねぇ〜、もしかしてクロードさん抜きでも魔王を倒せたんじゃないですかぁ?」
「ホントだよ! チクショウ!!」
俺は本気で3人に勝てるか自信を失いつつあった。
「……そういえば、お前クレスとイリーナのスキルについて詳しかったけど、どうしてだ?」
「どうしてって、女神セレーネさまには『神眼』のスキルがありますからねぇ〜」
「『神眼』てなんだそれ? また『神愛』みたいな迷惑スキルじゃないだろうな?」
「むうぅ! そんなことないですよ! 『神眼』は見た人の名前や生年月日から持っているスキルや身体の状態まで、なんでもお見通しの神スキルなんですよぉ! 神だけに!」
「つまり覗きスキルってことか、覗き見女神が!」
「ひっどぉ〜い!?」
俺はセレーネの規格外なスキルに、普段からの不満も込めて悪態をついた。
「まぁ、そのスキルがあったから、2人のスキルのことがわかったってことか……」
まだ少し、気になることがあったが、俺は話を戻すことにした。
「とりあえず、次の作戦だ!」
「えぇ〜、まだやるんですかぁ?」
「当たり前だ! あきらめないぞ!」
「はぁ〜、とりあえずココからはダイジェストでお送りします! テヘッ!」
――見合いの場 6度目――
「実は俺……政権争いが嫌で山に籠もろうと思うんだ……」
「任せて! 自給自足は得意なの! 私がお世話してあげるからクロードは、なんにも心配しなくて大丈夫だよ!」
「なにもない土地でクロードさまと、1から世界を作れるなんて……あぁ、なんて幸福なのでしょう……」
「ま、まぁ、私もたまたま静かなところで精霊術の研究がしたかったから、仕方ないから付き合ってあげる!」
「……チキン」
(山籠りしたら、ハーレムスローライフが始まりました)
――見合いの場 9回目――
「実は俺……世界征服しようと思ってるんだ……」
「クロードがそんなこと言うなんて……わかった! 私も一緒に戦う! ずっと側にいるからねクロード!」
「クロードさまがそれを願うならわたくしは、付き従うまでです……どこまでもともに堕ちていきましょう、クロードさま……」
「いいんじゃない? なんなら私の禁術で国の1つや2つ、すぐに滅ぼしてあげる!」
「……無謀?」
(ちょっと迷うな! 俺もできそうで怖い……)
――見合いの場 18回目――
「実は俺……特殊な癖があって……踏まれたいんだ!!」
「えっと……恥ずかしいけど、クロードが喜んでくれるなら私……がんばるね!」
「そんな!? クロードさまを踏むなんて……なんて背徳的な行為なのでしょう、でもクロードさまが望まれるなら……問題ありません!」
「踏んだら喜ぶの? ふ、ふぅ〜ん、べ、べつに興味がないなんてことないけど!? ……ちゃんと踏んであげるから喜びなさいよね!」
「……変態」
(……コイツら無敵か!?)
――見合いの場 ?回目――
「実は俺……特殊な癖があって……ママがいいんだ!」
「……」
「クロードさまのママ……つまり聖母に!? クロードさま! わたくし一生懸命やらせていただきます!」
「べ、べつに、将来的に赤ちゃんができるわけだから、最初から1人大きいのがいたって問題ないわよ!」
「……キモい」
(……あれ? 1人足りない気がする)
そう思い、俺は何も話さないクレスの方を見た。
するとクレスは、とても穏やかな慈愛の表情で俺を見つめ、両手を広げてささやくように呟いた。
「……おいでぇ」
その瞬間――電撃が走り、世界が暖かな光に満ちていた。
「……マッ……ママァ」
ママがボクをよんでる! ママのところにいかないと! ボクはママのところにむかって……
「はっ!? 違う! 戻らないとマズい!!」
俺は間一髪のところで我に返り、ロードを行った。
(スロット1をロード)
【スキルの使用を確認しました。スロット1のセーブポイントをロードします】
その声に安堵しつつ、俺はクレスの声が頭から離れなかった……
『どうしたの? こっちにおいでぇ』
――セレンディア城 内庭――
「なんでうまくいかないんだぁぁぁぁ!!!!」
「いや、アンタさっき堕ちかけてたやん! ――バブみエンド 完――ってなるところでしたやん!」
俺の嘆きにセレーネが謎の語感で突っ込んできた。
俺は気持ちを落ち着かせると、次の作戦を考えることをやめ、彼女に質問を投げかけた。
「……なぁセレーネ、気になってたことがあるから聞いていいか?」
「はい? どうされましたかぁ?」
「クレスはなんで毒無効なんて特殊なスキルを持ってるんだ? それになんでイリーナは自身に加護を付与できたんだ?」
そう、それは俺が提案した勝ち抜き形式のときに見せた2人のスキルのことだった。
「毒無効なんてスキル持ってる人間なんて聞いたことないし、神聖術のことはよくわからんが、普通は自分に加護を付与できないんだろ?」
俺の質問にセレーネが重い口調で話しだした。
「……毒無効はべつに珍しいスキルではありませんよ! ただそのスキルを持つということは、自身が毒を分泌する生物か、もしくは日常的に毒性の物に触れたり食べたりして慣らしているかのどちらかです」
「……毒を食べる?」
「はい……クレスさんが人間である以上、それしか方法はありません……しかも毒無効なんてスキルを得るのですから、普通の毒……体調を崩す程度の物だけでなく、死に至る可能性もある猛毒すら日常的に食べていたんじゃないでしょうか?」
俺は驚きを隠せなかった。
確かに彼女は、冒険の最中に体調を崩すことなどほとんどなかったし、笑い話のように過去の食あたりの話をしてくれていた。
俺は『体が頑丈なんだな』程度のことしか思ってなかったが、おそらくその時点で毒無効のスキルを持っていたのだろう……なぜそこまでして彼女は冒険者となり、俺たちと旅を共にすることを選んだんだ!?
そして続けてセレーネがイリーナの説明をしてくれた。
「神聖術は私たち神々の祝福を受けた者だけが使える奇跡の術です。祝福は神の教えを広めるため……なので自ずと術者以外の人間が対象となる術がほとんどになります。治癒や防御術を施すならできますが、身体強化の術はまずできません」
「なるほど……でもイリーナはそれができた……」
「はい、それは努力とかで得られる力ではありません……もっとべつの特殊な概念を持ってしまったとしか……」
「特殊な概念」
「……例えばですが、彼女は神を信仰していないとか……」
「そんな馬鹿な!? イリーナだぞ? いつも決まった時間に神に祈りを捧げてるんだぞ!」
「クロードさん……その神って誰ですか?」
「……えっ? 誰って、そりゃあ……?」
セレーネの質問に答えようとして俺は言葉が止まった。
確かにイリーナは会話のいたるところで『神』という言葉を使うが、それが『女神セレーネ』とは1度も言っていない気がする。
「クロードさん、私言いましたよね? 私が聞こえる声は私に語りかける声だけだと……」
「あぁ、それがどうかしたか?」
「クロードさんは気付いてないかも知れませんが、イリーナさんはアナタが何かしらの決断をする直前に、一瞬だけ祈るような仕草をしてるんですよ」
「そりゃあ、自分にとっていい答えがくるように祈るくらいするだろ?」
「では、その祈る相手は誰ですか?」
「誰ってそれは……おいっ! そうなのか?」
俺はセレーネの言いたいことを理解すると彼女に問いを返した。
「はい、私には彼女の声が一切聞こえていません」
それはつまり、イリーナに女神への信仰心がないことの証明だった。
じゃあ彼女の祈っている『神』とはいったい……
「おそらくその『神』の影響で、私たちが授けた奇跡を決まった対象以外にも使えるようになった……てところでしょう」
俺は彼女の献身的な態度からは想像もつかない説明を受けて思考が停止していたが、その直後にセレーネが俺に問いただしてきた。
「私もクロードさんに質問です! ルーシェさんの使う禁術が本当に存在するなら『神罰』が下る可能性があるレベルの精霊術になります」
「『神罰』てなんだよ?」
「言葉どおりですよ……神から断罪を受ける……ってことです」
「……なんでだよ?」
「それはルーシェさん次第ですよ……国1つ滅ぼせるほどの禁術は、何故生まれたのですか?」
「なぜって……旅の途中でルーシェはどんどん新しい精霊術を編みだして披露するのがいつもの事で……でも冒険が行き詰まったときに、それを見計らったようにヤバいのを作って大惨事になりそうなときもあって……そしたらいつの間にか禁術が4つになってたんだ」
「……そうですか、つまりクロードさんのために、神に喧嘩を売っていると勘違いされてもおかしくないレベルの精霊術を4つも作っちゃった……っていう訳ですね」
「……俺のため……なのか?」
「さぁ? それは本人に聞かないとわかりませんが、今日初めてお会いした私でも、『この人ならやりかねない』て思わされましたよ!」
俺はセレーネの説明を聞くと黙り込んでしまった。
しばらくの沈黙の後、セレーネが口を開く。
「クロードさん、やっぱり彼女たちは異常です……そしてその異常行動には、アナタの存在が確実に関わっています」
「……そうだな」
セレーネの言葉に反論したかったが、なぜか今はそれをすんなりと受け入れていた。
「クロードさん……やっぱり彼女たちがどうしてアナタに執着するのか? それを突き止めた方が私はいいと思います」
セレーネが真剣な眼差しで、俺に彼女たちの『攻略』を打診する。
俺はその意見を真っ向から否定できず、ココまでのループと3人の異常性のことを思い返していた。
なにかと俺の世話を焼こうとする、幼馴染のクレス。
俺に献身的な態度を取り続ける、聖女のイリーナ。
なにかあるとすぐに約束したがる、魔女のルーシェ。
彼女たちのことを考えて……そして俺は、1つの決意をする。
「セレーネ、やってみよう……」
「覚悟……決めたんですね!」
「あぁ、俺はこれから彼女たちを『攻略』して、どうして俺なんかを好きになってくれたのかを確かめるよ」
「……わかりました、クロードさん! 私も陰ながらフォローしますよ!」
「あぁ、頼んだ!」
俺は、クレス・イリーナ・ルーシェの3人のことを知るため、そして本当の結末に至るための『攻略』を始める決意をした。
「しっかし、やっとやる気になりましたねぇ〜、いったいいつまでこの無限ループを続けるつもりなのか心配してましたよぉ〜」
「なっ!? その割には楽しんでなかったかお前?」
「あっ! バレましたかぁ?」
「殺す! いつか絶対に殺す!」
「きゃあ、勇者が神殺しをするなんてぇ、世も末ですねぇ」
俺たちはくだらない言葉の応酬を行い、どちらからともなく話を切り上げ、見合いの場へと向かうのだった。
――見合いの場――
俺は席につき、陛下の口上を待っていた。
「さぁ勇者クロードよ! 貴公はいったいどの娘を妻として選ぶのかな?」
陛下の質問に俺は今まで以上に真剣に答えた。
「陛下、私は本気で彼女たちを大切に思っています」
「ほう! では全員と申すのか?」
「そうではありません、陛下」
「そうではない……つまりどういうことだ、クロードよ?」
俺は3人と目を合わせながら陛下の問いに答えた。
「私は今まで、魔王討伐のことばかり考えていて、彼女たちのことを知ろうともせず、あげく彼女たちの気持ちに気付いてすらいませんでした」
俺はクレスと目を合わせた。
クレスはどこか不安そうな瞳で俺を見ていた。
「彼女がどんな思いで冒険者になり、そのためにどんな努力を積み重ねてきたのか……」
視線をイリーナに移し彼女と目を合わせる。
イリーナは潤んだ瞳で俺を見つめていた。
「聖女だから……俺と同じ宿命を背負っているからと思っていた彼女が、なぜ俺に想いを寄せてくれたのか……」
そしてルーシェに視線を移し見つめ合う。
ルーシェは、少し照れくさそうに、でもしっかりと俺を見てくれていた。
「天才だからと仲間に誘った彼女が、魔女としてでなく、1人の女性として俺を見てくれるようになったのか……」
俺は陛下に視線を戻した。
「俺は、それをちゃんと知ってからこそ、彼女たちと初めて向き合えるんです!」
俺の言葉に部屋のみんなが、静かに聞いてくれていた。
「だから申し訳ありません! 今ココで答えを出すことはできません! 彼女たちを知る時間を俺にください!」
俺は陛下に深々と頭を下げた。
……沈黙が流れる。
俺はまた、みんなを怒らせてしまったと不安になってきたとき、陛下が口を開いた。
「クロードよ! 貴公は何か勘違いしてはおらぬか?」
「……勘違いですか?」
俺は陛下の意図がわからず、下げていた頭を上げ、陛下に視線を戻した。
「うむ! 余は見合いの場を設けて主催しただけの、要は見物人だ……貴公の願いを聞き入れるかどうかを決めるのは、余ではない……」
俺は陛下の意図を理解して、向けていた視線を3人に移した。
するとクレスが、微笑みながら応えてくれた。
「仕方ないなぁクロードは……とりあえずどうやって知ってもらおうかな?」
それに続くようにイリーナが、穏やかに応えた。
「そうですね……クロードさまに、わたくしのことを知っていただける方法を考えなければいけませんね!」
そしてルーシェも、いつもの余裕ぶった素振りで応えた。
「まぁ、私はアンタにわからせる方法なんて、もう思いついてるけど、それじゃあ味気ないから付き合ってやるわよ!」
俺はみんなの反応に安堵すると、心のなかでセレーネに語りかけた。
(とりあえずうまくいったよセレーネ!)
「はい! クロードさんおめでとうございますぅ〜! いやぁ、成長しましたねぇホント!」
(なんかムカツクが、まぁ感謝するよ)
「いえいえ……って、これからですよクロードさん! 彼女たちのなかにある闇を暴きに行きましょう! おぉ〜!」
(やっぱりお前楽しんでるよなぁ!?)
俺がセレーネとの何回目かの応酬をしているそのとき、陛下がさらなる難題を問いかけてきた。
「……で、クロードよ! 誰から知るのだ?」
「……えっ?」
「いやなに、これから知っていくと言うなら、とりあえず順番が必要だろう? ……で、誰から始めるのかな?」
「……あぁ〜そうですねぇ」
俺は考えるフリをしながら、頭のなかで初めてのスキルを使用するのだった。
(スロット2にセーブ)
【スキルの使用を確認しました。スロット2のセーブポイントを作成いたします……スロット2のセーブポイントを作成いたしました】
――やり直し勇者は決意する 完――
最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
クレスさんの『おいでぇ』がいつか声付きで聞けないものか……
よければ誰の声で聞きたいか教えてください!
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▼次回予告
11話『スキル説明2、そして可能性は分岐する』




