第1章 勇者の剣 第2 話 タブレット登場
今回は異世界生活を助ける便利アイテム「タブレット」が登場します。
ちょっとコミカルなやり取りもありますが、説明書のように機能紹介も含めてまとめました。
物語の進行とともにタブレットの使い道をお楽しみいただけたら嬉しいです。
私はハンスの両親に育てられ、
すくすくと大きくなっている。
「そういえばタブレットってどこにあるんだろ?」
しゅっ―――ゴッツン‼
「いたっ‼」
ベッドでゴロゴロしてたら、おでこにタブレットが……
「痛いじゃないですか! 死女神さまっ‼」
くすくすくす……
いつか呪いを覚えたら……
そんなこと言って使用方法聞かなくていいのかなあ……
「ぐっ……何とかなりますよーだ! それより、サブスクの延滞とか契約切れてるとか、ないでしょうね?」
……口笛を吹いてる? へたくそか!
「ま、今はいいや」
私は早速タブレットの操作を始める。
「よし、指紋認証オーケー、ん? なんだ? この画面……」
体育すわりの私の膝に広がったのは、ステータス画面。
「ふむ、名前カオルコ。コレはリクエスト通りね」
実は私の前世の名前ではない。ちょっとした思い出の名前だ。
「次は……所属・勇者……
? 所属⁉」
さあ、わからなくなってきたぞ……
ふふふふふん……
くすくすくす……
「はい! ごめんなさい。モルテさま、テルマさま‼」
よしよし、いい子ね。カオルコちゃん。
「中身は老女ですけどね」
で、聞きたいのは所属ね。
「所属ってことは勇者が何人もいると?」
そうよん。いーっぱい、いるわよ。
「ああ、あのオンラインゲームみたいなものかぁ……」
なに? いやな思い出でもあんの?
「ありまくりですよ、女の子ってだけで、すぐにオフ会に誘われるし……見たくもないのに、戦闘に負けるたびにスカートの中が見えるんですもん」
まぁ、オトコってそういう生き物に創られてますからね~
全部じゃないわよ、ちょっとばかり多いってことだよ。
「なんか他にあります?」
う~ん、なにかあるかしら?
今はいいんじゃない、後は好きにさせていいよ。
そうね、ではごきげんよう……
「あ、逃げた? もうっ‼ わかったわよ、トリセツを読まない女を舐めないでよ‼」
しばらくはおとなしく眺めて。
ちゃんとチートモードになってる。ポーションは999プラス。その他も同様。
「よし! 確認はこまで、あとは」
わからないことは解っている人に聞けってことで。
「おばさ~ん!」
村長夫婦は私とハンスを分け隔てなく育ててくれたの。
双子と言ってもよかったんだけど、墓場の村出身だと可哀そうだからって。
ちゃんと、生き返り子と村の人たちに説明してくれてた。
村の人たちもハンスが生まれたのを確認してて双子じゃないのは最初からばれてるし、ね。
それと見た目が全く違う。
ハンスは明るい茶色の眼と髪。
おばさん似だ。
それに比べて。
私は、いわゆる金髪碧眼、とんでもない美少女なのだ。
あ、ハンスもなかなかの見た目よ。
私はうすうす自分は勇者だろうと思ってたけれど、ハンスもハンスで自分は勇者だと思ってる。
ちゃんと訳はあってね。
村長の裏手の小山のてっぺんに、勇者の剣が刺さってるの。
それも砂山に。
この村の誰もが一度は抜こうとしたみたいだけど、いまだに刺さっている。
そのあと、これなら勇者の中の勇者にもなれるかな?と思って。
そう‼
私が目指すのは頂点‼
勇者の中でも特別な勇者‼
魔王を倒せる勇者。
聞いた話をまとめると、勇者はいっぱいいっぱい、いるけれど、魔王を倒す実力者は一握り。
だから私は毎日ハンスと剣の鍛錬をやりあっている。
「剣を振るう前には心を整えろ」
「またハンス、言ってる」
私から見れば、ハンスはかっこいいセリフを言いたがるお年頃だ。
「隙あり‼」
砂ぼこりが舞うほどに、ざっと踏み込む。
ガッツン!しばらくは無言で打ち合った。
かろうじてハンスは剣を出した。
ブンッ‼
剣の風圧が私の頬をかすめる。
「カオルコ! ずるいぞっ!」
すぐにハンスの反撃は始まる。
「ハンスが油断してるからよ!」
カツ、ガッツン‼
ハンスの剣は私のよりも倍くらい重い。
受けるだけで手がしびれる。
ざっ、踏み込んで私は潜りこむ。
ぶんっ、ぶん、カッ!
いつものことだ。勇者候補が二人いるこの村では鍛錬の相手も変わり映えしない。
「よーし、はぁはぁ、今日はここらへんで、はぁ、勘弁してして、ゼー、やるぜ、げほっげほっ」
「………ありがとうございました」
私は彼のプライドのために、素直に頭を下げながら、そっとつぶやく。
『たましずく』
ここまでお読みくださりありがとうございました。
いきなり頭にゴツンと来るタブレット、痛いけれどへけ便利そうです(笑)
更新は第2・第4土曜日の14時頃を予定しています。
これからもどうぞよろしくお願いします。