付与魔法ー4
正直言ってボクはエレナほど魔法が得意じゃない。
魔力の総量はエレナの方が圧倒的に多いし、知識においても日頃から勉強している彼女には到底かなわない。
それにボクは一心不乱に剣を振り続けているほうが性に合っていた。
拾い上げた木の葉を人差し指の上にせると見よう見まねで風魔法を操っていく。
体内を血液のように循環する魔力を感じ取りゆっくり魔力を流し込んでいく。
魔力が少なすぎても木の葉は踊らないし、ほんの僅かでも多ければどこかへ飛んでいってしまう。
徐々に徐々に魔力の質力を上げ、微細な感覚を掴んでいく。
気の遠くなるような地道な作業だが、案外苦にはならない。
きっと日頃から精神統一の修行をしているおかげで集中力が高まっているのだろう.。
浮いては沈みを繰り返すこと数分。
ようやくコツを掴んだボクは木の葉を浮かせたまま静止させることに成功した。
「凄いわ、スーリオン! 一度も失敗せず木の葉を浮かせられるなんて!」
「せ、先生、次はどうしたらいいんですか?」
「そのまま風を操ってゆっくり木の葉を回転させてみて」
「は、はい」
今は木の葉の下から風を当て浮き上がらせているが、木の葉全体を風で纏わせゆっくり、ゆっくり回転させていく。
いくら加減しているとは言え徐々に出力を上げれば木の葉はあっという間に粉々になってしまう。
しかし、ディニエル先生のお手本ではあれだけ高速回転していたにも関わらず木の葉は元の姿のままだった。
ならどうすればいいか。
直接風を当てなれないならまずは木の葉を風で覆った後、その防御壁ごと木の葉を回転させればいい。
まずは優しく風で包み込むようなイメージ。
それから徐々に回転の力を加えていく。
更に回転の力が強まれば上昇する力も発生する為、浮き上がる力と押さえつける力のバランスを調整していく。
一見するとただ風を操っているだけのように思えたが、複雑で繊細なコントロールが求められる。
ボクは二人が見つめる中、息を凝らし慎重に風を操っていく。
浮いている木の葉を回転させるだけなのに、少し力を加えただけで安定感を失ってします。
すこし動いては止め、動いては止めを繰り返し、木の葉を一回転させるだけであれ程高かった陽が僅かに傾いてしまった。
だが一度でも箸の握り方を覚えたら二度と忘れないのと同じように、その感覚を見つければあとは加速度的に上達していく。
一回転、二回転、三回転、徐々にスピードを上げ回転していく木の葉はやがて葉脈さえ目では見えなくなっていた。
「う、嘘!? た、たった一度で!?」
驚きを隠せず呆然とするエレナとディニエル先生を他所にボクは更に回転スピードを上げていく。
「し、信じられないわ。あなた本当にスーリオン?」
「それどういう意味ですか!? ディニエル先生」
「いえ、ごめんなさい。少し驚いちゃって。あなたにこんな才能があったなんてね」
「それってつまり――」
「合格よ、スーリオン。あなたには間違いなく付与魔法の素質があるわ」
「本当ですか!?」
「えぇ、この私が保証する。毎日努力を惜しまず訓練し続ければ、きっと世界一の付与魔術師にだってなれるわ」
このボクが世界一の付与魔術師にだって?
本当に?
ボクにそんな才能があったなんて信じられない。
でも、もしもディニエル先生の言葉が本当だったとしたら、ボクの夢もいつか叶うかもしれない。
「スーリオンに魔法の素質があるだなんて、私、絶対信じないんだから!」
「そこまで言わなくてもいいだろ、エレナ」
「ふんっ、だ。私、絶対スーを追い抜いて見せるんだから」
「それじゃこれから勝負だね、エレナ。ところでディニエル先生。これってどうやって止めたらいいんですか?」
「……へ?」
調子に乗ってどんどん回転速度を上げていったはいいものの、どうコントロールしていいのか分からなくなっていた。
更に速度を増した木の葉は超高速で回転し高く空へ舞い上がると周囲にあった大木伐り倒し、ようやく地面につき刺さり停止した。
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