付与魔法ー2
「――付与魔法は字のごとく対象に魔法の効果を付与するものです。その効果は本当に様々。さっきの様に鋭い刃を付与したり厚い大気の衣で身を守ったり、無限の可能性を秘めているわ」
ディニエル先生の説明を一言一句聞き漏らさぬよう必死に書き留めていたカレナが手を止め立ち上がった。
「先生! 質問です!」
「何かしら、カレナ」
「付与魔法が凄いのは何となく分かったんですけど、どうして付与魔法を使う人があまりいないんでしょうか?」
確かにそれはボクも思った事だ。
これだけ凄い魔法ならもっと沢山使い手がいて世間に知れ渡っていても不思議じゃない。
でも、魔法が得意なカレナでさえ付与魔法については殆どその存在を知らなかった。
「それはいい質問ですね、カレナ。……そうですね。理由はいろいろあるのだけれど。私から逆に質問します。カレナ、どうして付与魔法は使用者が少ないと思いますか?」
「え!? えーっと、少ない理由、ですか?」
逆に質問されるとは思っていなかったのか、カレナは先ほどの実技を思い出しながらしばらく考えた後こう答えた。
「これは魔法に限った話じゃないと思うけど、考えられる理由としては第一に付与魔法自体扱いが難しいこと、それから第二にこの魔法には何か大きな欠点があることだと思います」
彼女の見解を黙って聞いていたディニエルは感心したように頷いてみせた。
「素晴らしい。百点満点に近い答えと言っていいですね」
「本当ですか! やったね!」
「カレナ、スーリオン、付与魔法は先ほど見てもらったように扱えれば非常に強力な力となります」
「はい」
「ですがカレナが答えてくれたようにこの魔法にはいつくか問題点があります。まず一つ目がこの魔法の効果は一回に付き一度きりという事です」
「一回に付き一度きり?」
「そうです。付与された魔法は一度でもその効果を発揮すれば効力を失います」
「つまりその都度魔法を掛け直さないといけないって事か」
「それは確かにちょっと面倒かも。ディニエル先生、二つ目の問題点って何ですか?」
「二つ目は魔法を付与しておける時間が極端に短いという点です。魔法を使う者の能力にもよりますが精々長くても数十秒、短ければ数秒でその効果は失われてしまうでしょう」
「たった数秒!?」
「ですから使うタイミングが非常に重要な魔法とも言えるでしょう」
「……なるほどね。これだけ不便な魔法じゃわざわざ覚えようって人が少ないのも分かる気がする」
「確かにそうかも」
「カレナ、今の二つもこの魔法を使用する人が少ない理由ですが、一番の大きな原因はまだ別にあるのですよ」
「え!? 嘘ですよね、ディニエル先生」
「残念だけど本当です。付与魔法が敬遠される一番の理由はこの力をコントロールするには繊細かつ高度な魔力制御が要求されることに他なりません」
ディニエルはもう一度足元に転がっていた木の枝を拾い上げると、先程と同じ様に風魔法を付与してみせた。
「この魔法の性質上どうしても対象に大きな負荷がかかってしまいます。それは魔法の威力が大きければ大きい程その負荷も増大していきます。ですから、もし万が一魔力制御を誤るようなことがあれば付与魔法の対象はこうなってしまうのです」
そう言って少しずつ魔力を込めていくディニエル。
それと共に風の刃は徐々に鋭く威力を増していったが、付与魔法の負荷に耐えられなくなったのか彼女の持っていた小枝はミシミシと音を立て手の中で粉々に砕け散ってしまった。
「いまは対象が木の小枝だったから良かったものを仮にこれがスーリオンだったらどうなっていたと思いますか?」
「スー、毎日お墓にお水を上げに行くからちゃんと成仏してよね」
「カレナ! 勝手にボクを殺さないでよ!」
「高い効果を得られる一方で、付与魔法には相応のリスクがあるのです。二人共、ちゃんと理解出来ましたか?」
「「はい、先生!」」
「よろしい。この魔法を二人が扱える様になるかは正直やってみないと分かりません。この村でも付与魔法を使えるのは私くらいなものです。それだけこの魔法は難しい」
「それじゃこの付与魔法を使える様になれば私たち無敵じゃない」
「無敵になれるかどうかは分からないけどそれだけこの付与魔法というのは高い可能性を秘めているわ」
「先生! 私、早くこの付与魔法を使える様になりたい!」
「ボ、ボクも!」
「二人共良い心がけね。それじゃ早速始めましょうか」
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