カレナ
「――ねぇ、ルィンヘン。スーリオンの奴、死んでる?」
暖かい日差しの元、聞き馴染みのある声が意識の向こうから聞こえてきた。
「あぁ、もうダメかもな」
「そ、そんな! 午後に提出する魔学の宿題、スーに見せてもらおうと思ってたのに」
「そりゃ、残念だったな」
「うーん、どうしよう。困ったな」
困っていそうでまるで困っていない彼女の声。
「魔学か。ディニエルの奴、結構厳しいからな」
「ルィンヘンに教えてもらうって、……それは無理そうだし」
「ふん! 頼りにならなくて悪かったな。……そうだ! カレナ、スーリオンがやった宿題、お前が貰っちまえば良いんじゃないか?」
「あっ! その手があった! 流石、ルィンヘン! 頭良い!」
「へへっ、まぁな。こういう悪知恵はよく働くんだ」
「それって自慢する事なのかな? まぁ、いいや。それよりルィンヘン、今回はあまり手加減しなかったんだね」
「そりゃな。本気で挑んでくる相手に対して手を抜くのは失礼だからな」
「そうかもしれないけど、あーぁ、すっごいたんこぶ。おーい! スー! そろそろ起きないと風邪ひくよ!」
カレナの呼び声に沈んでいたボクの意識は徐々に徐々に回復していく。
瞼の上から感じる暖かな陽の光にゆっくり目を開けると少女は少し心配した様子でボクの頬っぺたを突っついていた。
「あっ! やっと気が付いた。ねぇ、スー。頭、大丈夫? 」
「だ、大丈夫じゃ、痛っっ!」
後頭部に手を当てると全身に電流が走る。
腫れあがったたんこぶが熱を持ち、今にも頭が爆発しそうだ
「今日はまた一段とこっぴどくやられたね。これでもう何敗目だっけ?」
「そんなのもう忘れたよ。痛ててっ。あーあ、今日こそはいけると思たんだけどな」
「その自信が一体どこから来るのか私は知りたいよ」
俺を見て呆れるカレナの横で木刀を片の上に乗せたルィンヘンが僕を見てニヤリとしていた。
「だから俺から一本取ろうなんて百年早いって言っただろ? けど、そうだな。お前には剣の才能がある。それだけはこの俺が保証してやるよ」
「良かったね、スー。才能あるって」
「それボクを慰めてるつもり? ルィンヘン」
「違う、違う。俺は本当のことを言っただけさ。今と同じ様に毎日毎日剣の訓練を怠らなければ間違いなくお前は俺より強くなれる」
「ほ、本当!?」
「あぁ、本当だ。残念な事だがな」
「なんで残念なのさ!」
「さぁ、なんでかね。ほらいつまでも寝っ転がってないで起きたんなら続きやるぞ」
ボクは木刀を片手にルィンヘンの手を取り立ち上がる。
「今だ!」
ルィンヘンの手が塞がってる一瞬の隙を狙って木刀で切り払う。
「甘い、甘い!」
殺気を感じルィンヘンが咄嗟に手を放すとそのまま思いっきりボクの身体を突き飛ばす。
体勢を崩し受け身のとれなかったボクはそのまま地面へと倒れ込み、ぼっこり突き出た岩が頭を勝ち割ろうと容赦なく待ち構えていた。
「あーぁ」
鐘の音よりも大きな音が辺りに響き渡り、ため息を付いたカレナの顔を最後にボクの意識はまた深い闇へと沈んでいった。
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