デビュタント1
私はめんどくさげに食堂に入った。
当主と第2夫人とその実子・ジュラン兄さま以外の家族が揃っていた。
「遅れてきたのに何もなしで座るなんて。」
「誰よりも一番にきてなければならないのをあの下民は理解しているのかしら。」
「マナー講師をつけたほうがいいのでは?って下民にマナーを覚えるのは酷か。」
「いっそのこと私室で食べてくんねーかな。」
(コソコソ言ってんじゃないわよバーカ、私だって私室で食べたいんだよ!けどそうしたら今以上に悪口言うだろ。)私は無言で席についた。
カツ カツ カツっ その音とともに食堂の扉が開き当主である父様が入ってきた。
「ミサとジュランはどこにいるんだ。」
開口一番に次男と第2夫人について言及した すると隣に待機していた執事長が
「ミサ夫人の提案で御二人はクローバー庭園にて夕食をとるそうです。」
と全員に聞こえるように言った。
「そうか。」
「父上!!晩餐は家族みなで食べるのが一般的です!!」
どうやらヒメムナ家の長男・ローレンはその2人が特別扱いされているのが気に食わないらしい まあ気に食わないのは自分除いた全員か
「ヒメムナ家の有望株であるジュランが唯一心を許している実母・ミサとの食事にケチをつけるわけがないだろう、そうやって噛みつくぐらいなら長男として次男に勝るぐらいになったらどうなんだ。」
ヒメムナ家は良くも悪くも実力主義だ。
ジュラン兄さまのプロフィールは
・四大公爵家の次男
・皇立アカデミー(中学・高校)の次席
・国に8人しか入れないアイルバ魔法大学院に現役合格
・わずか21歳で塔の魔法使い(塔の魔法使いはこの国の花型の職業で皇国の職権乱用が効かない、相当秀でていないとなれない職業)
・魔法騎士としても有名
・幼少期から容姿端麗で社交界のスター
____文字におこすとホントに凄い人だな……こういったスペックの持ち主なのですごく贔屓にされている……ヒメムナ公爵家以外でも。ジュラン兄さまの実母はヒメムナ家の第2夫人でエルフの子孫ということで公爵家に迎えられた旧名ミサ・ハルジアムさん、元々シュタイン皇国出身でこの夫人は基本無干渉で唯一この家私を一度も虐めたことない女性だ。 因みにミサ夫人にはもう一人の子供がいて長女のミカエラ姉さまだ。ミカエラ姉さまは隣国のシュタイン皇国(同盟国)に留学中で一度もあったことが無い
「すみませんでしゃばりました父上。」
いつも威勢のいいローレン兄さまがしおれていて内心ガッツポーズをした。
「では食事を。」 パチンッ
公爵様がそう言って指パッチンすると食事が出された。
ゴギゴギ_ クスクス
(またか…)
私がこの晩餐会が嫌いな理由は陰口を言われるからじゃない、食べ物が目の前にあるのに食べられないからだ。理由は刃こぼれのひどいナイフ さきが丸いせいで全然させないフォーク なぜか全然掬えないスプーン いくら交換を頼んでもメイド達は敵サイドのため同じのが渡されるだけだ。
「早く食べなさい。笑笑」
「下民は食べ方すら知らないんじゃないか?笑笑」
「まさかクス スプーンくらいは使えるでしょう笑笑」
カッチーン
「父さま、私の使っている食器を使ってみていただけませんか?」
「ものが悪いと言い訳するつもり!!」
三女のメイリーン姉さまが遮った。黙れよ余計なこと言うな
「ウナ お前はもう公女なのだから食事のマナーぐらいできるようになれ、いつまでも平民では示しがつかん。」
「そうおっしゃるのならちゃんとしたマナー講師をつけてくださいなちゃんとした講師を。」
この親父に言っても意味なかった……何かに秀でてれば…。そうこうしているうちに晩餐が終わった。食堂を出ようとしたら
「どこに行くつもりだ。」
機嫌の悪いローレン兄さまに腕を掴まれた
「どこって…私室ですが。」
「騎士団の馬にブラッシングしろ全員にだ。」
「今何時かご存知で?」
「まあ下民は立場すら理解できてないのかしらこれだから婚外子は。」
隣から機嫌の悪いアメア夫人(第一夫人でローレンの実母)が出てきた。アメア夫人は東の侯爵家の人間で私をいじめている筆頭といってもいいくらい性悪な人だ。
「見習い騎士がやる仕事ですよね?騎士団長ならヒメムナ騎士団の人に言ったら必ずやってくれますよ。ローレン騎士団長。」
「公爵家の跡取りがあなたに言っているのよ!!」
(うるせえヒスおばさん……おっと失礼。親子でイジメるのも大概にしろ)
すると後ろから
「公爵家の跡取りってまだ決まってませんわよw それにこの場で一番時期当主に近いのはわたくしの息子・ガートンではなくて?」
[公爵家の跡取り]という単語が引っかかったらしく口を挟んできたのは第三夫人のメーガン夫人だ その後ろにガートン兄さまもいる
「成金親子のお出ましか?品はお金で買えないってご存知?」
「ローレン兄さんこそ母親の地位で公爵になることはできないって知ってるか。」
(義兄弟同士で争うなよ)
そのスキに私室へ戻った。
「はーまっっっじで疲れたけど証拠が増えたからボチボチか。」
そう言って私は包んでいた今日の晩餐の春野菜のテリーヌを薬品瓶に入れた。すると無色だった煙がどんどん紫に変化した。
(やっぱり下剤が入ってたんだ、おそらく今回の犯人は第一夫人辺りだろうなぁ)
私はほぼ毎回食事のたびに下剤かゴミ、消費期限ぎれの食べ物が出てくる。だから夜にこっそり食料庫から仕入れた食べ物を私室で食べていた。
バキッ メリメリメリ
嫌な音を立てて床の板を外した、私の部屋は日当たりの悪いボロめの部屋なので公女なのか疑うレベルの見た目だ。けれど隠し所が作れるため別に構わない。
(食事のサンプルの保存は……ここか)
床の隠し場所には私の食器と食事が保存されており、他にも私の壊されたアクセサリーや脅迫状などを保管している。
ガンッ バリバリバリ
次はクローゼットの後ろの隠し場所を開けた。そこにはファイルとカメラがある。カシャッ
(今日受けた打撲痕の証拠写真オッケー。)
このカメラは誰にも気づかれないようこっそり抜け出して買ったカメラだ。記者時代に愛用していたコンパクトカメラで小回りがきくかつ大容量なのでこういう場にもってこいだ。ホントは本格的なカメラも用意したかったけれどバレたら大変になるためコンパクトカメラを選んだ。
(本物のウナだったらやられっぱなしなのかもしれないけど記者であるシーナ改めウナは証拠集めて皇国中に暴露してやるんだから!!仕事人間舐めんじゃないわよ!!)
ガタッドンドンドン
誰かが扉を叩いている。
(ガタッってノックもなしに開けようとしたな、勝手にドア開けれないように対策してるんだよこっちは)
「は〜い。」 ガチャ バシャッ
「鍵をかけるなんてアンジュお嬢様に言いつけますからね。」
(おいこのメイド水かけやがったよ)
「なんのこと?それよりいちメイドが公女に向かって水をかけるのはどうなの?」
「私はアンジュお嬢様のメイド長なのであなたではクビにできません。」
バタ
うざかったのですぐドアを閉めた。
「ちょっと何してるの!!!早く開けなさい!!」
「もうなんのようなのよ!!アンジュ姉さまのとこ帰れ!!」
「はっアメア夫人!!」
(………は?第一夫人が来たの?何大声出してるんだよクソメイド。)
ガチャッ 後々面倒なのですぐに開けた
「さっきから生意気ね。」
「ノック無しで入ろうとするメイドのほうが生意気ですよ。」
「アッハハハハ元下民が我が娘アンジュのメイド長より上だと思っているのかしらね。」
(どう考えても上だろ)
「なんのようですか?」
「こちらへ。」
アンジュ姉さまのメイド長に手首を捕まれ部屋を出された。
ドンッ
クローバー庭園の小屋に放り出された。
ガチャ
鍵かけられた……え?
「ちょっと出してよ!!!なんなのよ一体。」ドンドンドン
「今日の昼あなたはアンジュお嬢様の機嫌を損ねました当然の結果では?」
「機嫌損ねたって…急に噴水に指を刺されても何したらいいかわからないししかも噴水を掃除したら後ろからおされて顔からダイブするでしょうが!!この寒い時期に何させる気?!!」
「それではまた。」
(置いてかれた……水をかけたのはここで凍えさすためだったのね……)
まだちゃんとした夕飯を食べてなかった且つ急なことで上着も着れなかったので空腹で寒い……。
(ウゥなんでこんなに元平民ってだけでイジメるのよ。)
私が転生したウナ=アトウ=ヒメムナはまだ正式な婚姻を結ぶ前に生まれてしまい、この家の過酷さを知った母が西部へ行き裕福でないにしろ楽しく過ごしていた。母が亡くなるまで……。
(はぁ〜つくづく不幸な子だけど幸福なこともある子だね。)
ウナの体には魔力があり、ドアが勝手に開けられないように施錠魔法を使ったり、証拠となる食品に保存魔法をかけたりできるくらいには魔法が使えた。魔法は生まれつき使える・使えないがあり、魔力量も生まれつき決まっている。魔力量はわからないがウナは使える側の人間だった。前世のシーナは使えない側の人間だったため嬉しかった ただこのことは知られるとめんどくさいので独学且つバレないようにするので大変だった。
(炎魔法は何回やっても全然できないな……)
何度も火を出そうとしたが煙すら出ていなかった。
寒すぎて手足がかじかんできた、空腹で動くことすら難しい
(流石にこれはあんまりだよ……私が何したっていうの?)
ガチャッ
「誰だ!!この寒さで倉庫にいるとか何するつもりだ。…………私生児?」
「タス……ケ…テ。」
「チッ。」
その瞬間温かい光に包まれ宙に浮いた。
「アイツらはホント…変わらないな。」パチン
助けてくれた人が指パッチンした途端部屋に戻っていったそしてテーブルにはコーンスープがおいてあった。
(こんな大掛かりな魔法を使えるってことは…さっきの人は……ジュラン兄さま?)
ジュランは基本魔法塔におり、家族全員が揃う食事のときも今日みたいに別で取るため一度晩餐会で見たぐらいだ。それぐらい関わりがない。
(変わらないなってどういうことだろう。)
私は眠気に襲われ思考を破棄した。
次の日
「おはようございます。」
私は笑顔で朝食を取りに食堂へ行った。
「は?なんで……」
「どうかしたのか?」
「いいえ何にもありませんわお父様♪」
アンジュが焦っていた。
「ねえどうやって抜けだしたのよ!!」
ヒールで私の足を踏みつけながら耳打ちしてきた。
「なんのこと?それより大丈夫?汗でメイク落ちてるよ、あっもともとこんな顔か。」
私はすぐさま席に座った。
「このっっ!」
コツン_コツン_ガチャリ
「「「「っ!」」」」
「皆様ごきげんよう。」
「……。」
めったに現れないジュランとその母・ミサが笑顔で(ジュランは無表情かつ挨拶なし)あらわれた。
「ミサ夫人……どうしてここに?」
「あら第四夫人、久しぶりです。」
「母上、スロナ夫人ですよ第4夫人の言い方はやめたほうがいい。」
「あら…ごめんなさい名前を忘れていたわけではないの…許して。」
ミサ夫人はにっこり微笑んだ、エルフの子孫だからか肌が雪のように白くてまつげが長く、ほっそりとしているがオーラがあり容姿端麗だ……。
ガチャリ
「おお、ミサにジュラン!!よく来た。」
公爵はおおいに喜んだ
「おはようございます父上。」
「おはようございます公爵様。」
第2夫人親子は軽く会釈した。それに続いて他の家族も第2夫人親子に会釈した。
パチンッ 朝ごはんが並んだ
「今日は皇室主催のパーティーについて話したい。連れて行くのは私含め6人、4大公爵家が揃う…言いたいことがわかるな?」
(4大公爵家が揃うなら精鋭で行くのがベスト…そうなるとジュラン兄さまは確実か。)
「それなら時期当主であるローレンとその実家族であるわたくしとアンジュは出席ですね。」
「4大公爵家が揃うなら元西の公爵家の人間が出席するべきでは?そう考えるとわたくしとスロナお母様が行くべきよ、お母様は西の公爵家の妹ですからね。」
「ヒメムナ公爵家のうりは軍事力と財力です!!資産家出身の第三夫人である我が母を差置くのはどうかと思いますよ。」
ごちゃごちゃ言い合ってる義家族をほっといて中央においてある全員が追加で食べるパンとジャム、オレンジジュースをとった。これらは安全だ
「黙れ。」 シーン
「連れて行く人はもう決まっている。」
「誰ですか?」
いままで会話に入ってこなかったジュランが口を開いた。
「一番優秀なジュランと西部関連でスロナとメイリーン、騎士団長であるローレンと実妹のアンジュの予定だ。」
(まあそうなるわな。)
けど私はどうしてもそのパーティーに行きたかった…どうしても…
「父さま私まだデビュタント迎えてないんです…義弟であるガウルですらデビュタント迎えたのに…私もう16歳です。それに皇室主催のパーティーでデビュタントをすれば泊が付きますし人脈も広げやすいですよ?」
ギロリ 一部覗いた家族が睨みつけた。
「このパーティではデビュタントも兼ねている、だからウナにはちょうどいいか、アンジュとウナを変更しよう。」
「なんですって!!お父様!!なぜ私とチェンジなのですか、せめてもう1枠増やしたりしないんですか!!」
「アンジュ、これはヒメムナ家の威厳を見せつけるものでお前には実力不足だ。それに今回のパーティでは6人までしか認められていない。ウナはデビュタントだから他のデビュタントの子と交流ができる、人脈を広げるにはもってこいだ。」
ザマァ!!!アンジュ!!昨日のお返しだ!!
「では一週間後に備えろ。」
そう言って公爵様は席を立った。
「このっっ卑しい女め!!」
長い爪で引っかかれる。そう思ったとき
「一週間後にデビュタントを控えてる子の顔に傷を作ったら公爵様なんと言うでしょうねぇ?」
ミサ夫人がつぶやいた、
「きっと傷つけた本人を叱るでしょうね。」
ミサ夫人はにっこりと微笑んだ。そして夫人は食堂を出た。
「ごちそう様でした。」
ミサ夫人に続きジュランも食堂を出ていった。
「では私も失礼します!!」
私は急いで食堂を出た てか爆走した。無我夢中で走っているとクローバー庭園についた。ここはミサ夫人が気に入っている庭園でウナはめったに来ることは無い。
(昨日からなんかクローバー庭園には縁があるな〜。)
私は少し散歩しようと思った。すると後ろから
「珍しい客人ね。」
びっくりして後ろを振り返った。
「そんなに驚かなくても。」
「ミサ夫人……。」
「お話するのは初めてね…ウーナちゃん?」
「ウナですよ。」
「あらごめんなさい。」
さっきのといいミサ夫人は人の名前を覚えるのが苦手みたいだ…
「さっきは助けてくださりありがとうございました。」
「え?ああどういたしまして。」
そう言うとミサ夫人は微笑んだ
「それはそうとデビュタントのドレスは決まったかしら?ウナちゃんそういうの大変そうだけれど。」
あっ、、、今の今まで忘れていた、、、ちゃんとしたドレス持ってないことと買おうとしても目をつけられている私じゃ手に入れてもその日のうちに何かしらの被害にあうことを………まじでどうしよう!!!!!!