手!なぜに手を?
「あれ?アニー?」
会いたくないなぁと思った矢先に会っちゃうなんて。
しかも相変わらずキラキラした男女混合のご友人に囲まれていらっしゃる。
ていうか、そんな時に声を掛けないでほしい。
ホラキラキラなご友人たちが珍獣を見るような目でわたしを見てる。
「……どうも」
キラキラなご友人たちを置いてわたしの元へと駆け寄ってきたロンドにわたしはそう挨拶をした。
だって亡くなった母に「どんな相手にも礼を欠くな」と教えられたから。
「このエリアで会うなんて珍しいね」
そう言ったロンドの言葉にわたしは適当に相槌を打つ。
他者の目がある中で嘘コクや賭けコクの事は話し辛い。
「あー……そう、ね」
そう言った瞬間、いきなり腕から重みが消えた。
わたしが運んでいた本を全てロンドが持ったからだ。
「こんな重い本を一人でなんて無茶な事を」
「ツキシマ教授は自分が力持ちだからわたしまでその感覚で言うのよ」
「代わりに運ぶよ、ツキシマ研究室に運べばいい?」
「え、いいわよ別に。お友達を待たせてるじゃない。それにその本、ブライトン研究室の本だし。あ、じゃあ代わりに返しておいて」
ラッキー、ロンドに押し付ければツキシマ教授のお使いを完遂できる。
「でもウチの研究室から反対方向に歩いて行こうとしてなかった?」
「あー、うんちょっと忘れ物して……」
細かいところに気がつく人ねぇ。
まぁそうやって周りをよく見て気遣い出来るところも好きになった要因のひとつなんだけどね。
その時、ロンドのキラキラなご友人の一人が言った。
「おいロンド!もう行こうぜ!」
どうやらみんなでどこかへ移動中だったみたいだ。
あら、じゃあ本を押し付けたら申し訳ないわね。
わたしがそう思った瞬間、ロンドが声を上げて友人達に答えた。
「悪い、俺やっぱりパス。みんなで行ってくれ!」
「えっ?ロンドごめん、本は自分で運ぶからいいわ!あなたはどうぞお友達を優先して」
ロンドが友人達に向けそう言ったのを聞いたわたしは慌てて本を取り戻そう手を伸ばした。
だけどその手は本ではなくロンドの手を握らされてしまう。
「!?」
ロンドはわたしと手を繋ぎながら言った。
わたしが散々苦労した本を軽々と片手に携えて。
手!手を……なぜに手を?
繋がれた手を凝視するわたしにロンドは言った。
「アニーより優先させる事は何もないよ。気にしなくていいから、ほら行こう」
そしてわたしの手を引いてロンドは歩き出す。
なぜ?なぜに?
わたしを優先させる理由がわからない。
そして後ろから刺すような視線を感じる……
主に女子から………
わたし、いずれ後ろから視線ではなくナイフで刺されるんじゃないかしら?
夜道には気をつけよう……。
「ねぇ…ホントにいいの?」
わたしが前を歩くロンドにそう言うと、少しだけわたしの手を握る力が強まったような気がした。
「いいんだ」
いいのかな?
いやでもわたしはよくない。
嘘コクの上に賭けの対象にまでされてると知って、このままでいられるわけがない。
「ねぇロンド、告白の事なんだけど……「おやおや~?ご両人、青春か~い?」
わたしがそう言ったと同時に被さるように声が重なった。
「ブライトン教授……」
ロンドはそう言ってジト目で相手の方へと視線を向けた。
そう。ロンドに嘘コクをするように指示をした張本人、
サミュエル=ブライトン教授その人がそこにいた。
「出た……」
───────────────────────
次の更新は明日の夜です!